春ドラマが始まった。ラインナップを見渡すと、見る側の充足度が高い。恋愛モノ、サスペンス、ミステリーなどジャンルも偏っていないし、何よりも主演陣が豪華。杉咲花、木村拓哉、山下智久、石原さとみと芸名を読むだけで視聴欲をそそられる面々が並んでいる。

加えて春ドラマにはさまざまな背景を持って、主演としてカメラの前に立つ"異色"の4人がいることを発見。彼らが演じる主役にはどんな理由が潜んでいるのかをピックアップした。

長年の下積みを経ての主演と、緊急主演

  • 野間口徹

努力家のおじさんに本当の春がやってきた。『VRおじさんの初恋』(NHK総合)に主演するのは、野間口徹さん。メガネがよく似合う、物腰が穏やかそうな俳優は約25年以上、バイプレイヤーとしてひた走り続けた。

登場早々に殺される、連続ドラマなのに出番は終盤……など、とにかく小まめにいくつもの役を演じていた野間口さん。時にはワンクールで3作品に姿を見かけることもあった。おそらく彼は日本中の俳優陣で、ケータリングを熟知している人だろう。そんな野間口さんが50歳、満を持して主演とは視聴者側のおじさん、おばさんたちも歓喜にわく。彼は立派な中高年の星となったのだから素晴らしい。

肝心の内容は、何の生きがいもなかった中年の独身男性・直樹(野間口)がVRの世界で女性として輝くようになる。そこで出会った美少女アバターに心惹かれる直樹。この恋はいかに……? というのがあらすじ。この際、内容なんてどうでも良く、野間口さんが主演というだけで強烈に推したい。

そんな野間口さんとは対するように、急遽『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)の主演を務めることになったのは、森本慎太郎さん(SixTONES)。プライム帯のドラマに初の単独主演だそう。急に決まった作品のためなのか、あらすじなど事前情報は一切聞こえてこない。(4月12日時点)我々は大人しく、4月27日の放送開始を待てということだろう。

森本さんといえば昨年『だが、情熱はある』(日本テレビ系)で演じた、山里亮太役が記憶に新しい。当時も魅せ方や山ちゃんの寄せ方が完璧だったので、本作でも間違いのない演技を見せてくれるはずだ。

珍しい"緊急主演"と聞くと、本当は旅行の予定でもあったのではないか? と、おばさんは余計な心配をしてしまう。今回は買われた対応力の強さを遺憾無く発揮してほしい。森本さん、クランクアップしたら思う存分、遊んでください。

努力で掴んだキー局、プライム帯放送枠の主演

  • めるること生見愛瑠

それぞれに以前、主演作の経験はあるものの、かなりのスピード感でプライム放送帯に出世した2人の女優がいる。

まずは『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)に主演するのは、めるること生見愛瑠。2021年に深夜ドラマでの主演を経て、3年足らずのうちに火10の放送枠の主演とは、お見事だ。昨年『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系)や『セクシー田中さん』(日本テレビ系)での活躍が功を奏したのだろうか。いずれにしても見かけた作品では、バラエティ番組では見せない、安定した演技で女優の風格を見せていた生見さん。今回は記憶喪失から始まって、自分らしさを取り戻していくヒロイン(途中に恋愛すったもんだがありそう)。ここからの展開が楽しみだ。

  • 伊原六花
    撮影:泉山美代子

そして『肝臓を奪われた妻』(日本テレビ系)で主演を務めるのは、伊原六花さん。地方局、BSなどで主演経験はあるものの、今回はキー局での主演となった。内容はタイトルが示す通り、ドロドロ系。仕組まれた結婚によって、肝臓を奪われた北山優香(伊原)が、シングルマザーとなって元家族たちに復讐していく。

伊原さんといえば高校生の頃、バブリーダンスで一躍話題になった人。ダンス部のキャプテンだった女性が、自分の夢をさらに高めて女優となり、巡ってきた主演の座には大きな夢を感じられる。現代の高校生たちに語り継ぎたい、サクセスストーリーを自らの手で作ったのだ。やはり女は強かったと思わせてくれる、二人の主演作はバックボーンを想像しながら観たい。