最近は投資をしている人が増えましたが、今年は新NISA制度が始まったこともあり、特に「投資信託」が注目を集めています。ただし、「投資である以上、リスクが気になる」という人は多いでしょう。

そこでこの記事では、できるだけリスクを抑えながら投資信託を運用するコツをまとめました。そもそも、投資におけるリスクとは何なのか、リスクにはどのようなものがあるのか、そして、投資初心者が必ずおさえておきたい「長期・積立・分散投資」について詳しく解説しています。リスクが怖くて投資が始められない…という方は、ぜひ本稿をご覧ください。

  • 【FP解説】初心者こそ実践したい「長期・積立・分散投資」- リスクを抑えて投資信託を運用するには? / 画像はイメージ(PIXTA)

■投資における「リスク」とは

リスクというと「危険」「避けるべきもの」というイメージがありますが、そもそも投資におけるリスクとは値動きの大きさ(振れ幅)を指しています。投資信託でいうリスクなら、「基準価額の値動きの大きさ」のことですので、リスクが大きいと言えば価格の振れ幅が大きい、リスクが小さいと言えば価格の振れ幅が小さいということになります。

また、リスクとセットで使われる言葉として「リターン」があります。リターンとは、投資で得られる収益のことです。一般的に、大きなリターンが期待できる商品はその分リスクも大きくなるため、損失も大きくなる可能性があります。一方、リスクを抑えようとすると、得られるリターンの上限も小さくなります。

また、投資のリスクにもいくつかの種類があります。たとえば、「価格変動リスク」や「信用リスク」、「為替変動リスク」などです。「価格変動リスク」とは、経済動向などで価格が変動し、金融商品を売る時の価格が買った時の価格を下回るリスクです。「信用リスク」とは、投資した会社の信用力の変化によって価格が変動し、受け取る金額が投資元本を下回るリスクです。

そして、「為替変動リスク」とは、外貨建ての商品に投資して為替相場の影響で価格が変動し、換金時に受け取る金額が投資元本を下回るリスクです。

このように、投資にはさまざまなリスクがあります。では、これらのリスクを少しでも抑えて投資信託を安定的に運用するには、どうすればいいのでしょうか。

■資産運用の王道! 「長期・積立・分散投資」

投資にリスク(価格の振れ幅)はつきものですが、そのリスクを少しでも抑え安定的に運用する方法があります。それが、資産運用の王道と言われる「長期・積立・分散投資」です。これは、世界の経済活動に対して分散しながらコツコツと投資することで、中長期的には世界経済の成長率を上回るリターンを目指す方法です。その詳しい内容を一つずつ見ていきましょう。

1.長期投資

1つめは、「長期投資」です。長期投資とは、10年以上を目安に、長い期間をかけて投資を行うことです。なぜ長期投資がリスクを抑えるのに効果的かというと、市場は短期的には大きく変動することがありますが、長い目で見るとこの変動リスクが小さくなる傾向にあるからです。つまり、長い期間をかけて投資すると、短期投資に比べて値動きの振れ幅が小さくなり、安定的なリターンが期待できます。

「長い目で見れば、価格の振れ幅は小さくなる」と知っていれば、値下がった時に焦って商品を売却してしまうことも避けられるでしょう。これまでも、リーマンショックやギリシャ通貨危機、コロナショックなどいくつもの金融危機があり、一時的には資産が大きく目減りしましたが、時間をかけてマイナスを取り戻し、結果的にはむしろ成長しています。

長く運用していれば値下がりの局面は何度か訪れますが、あまり気にしすぎず長期運用を心がけましょう。

それに、長く運用を続けるほど「複利」の恩恵が受けられます。複利とは、元本から生まれた利益を次の投資にも組み入れて運用し、元本をどんどん大きくする運用方法です。たとえば、100万円を年率5%で複利運用できた場合、何も運用しなかった場合と比べて、10年間では約63万円もの差が生まれます。

特に、投資信託は長期保有することを前提とした商品ですので、運用を始めるなら長く持つことを意識しましょう。

2.積立投資

積立投資とは、投資信託などの商品を毎月定額で購入し、積み立てていく投資方法です。積立投資の主なメリットとしては、「自動的に積み立てられる」「少額でも投資が始められる」「買うタイミングを分散できる」などが挙げられます。

・自動的に積み立てられる

積立投資なら、毎月決まったタイミングで一定額を自動的に積み立ててくれます。通常、投資で利益を得ようとすると、安い時に買って高い時に売る必要があるため、常に市場動向を見張りながら価格変動を確認しなければなりません。

しかし、積立投資であれば自動的に積み立てられるため、自分で価格や売買タイミングを気にする必要がなく、ストレスなく運用を続けられます。手間がかからないことも、長く投資を続けるには大切な要素です。

・少額でも投資が始められる

一般的に、積立投資は少額からの投資が可能です。金融機関にもよりますが、1,000円程度から積み立てられるところも多く、中には100円から積立可能なところもあります。これだけの少額から投資できるなら、投資初心者でもリスクを過度に恐れることなく、一歩踏み出そうと思えるのではないでしょうか。

・買うタイミングを分散できる

積立投資の最大のメリットは、買うタイミングを分散できることです。安定的な資産運用には、後述する「分散投資」も重要なポイントですが、毎月一定額を購入することは買うタイミングを分散することにつながり、これも1つの「分散投資」になります。

このように、定期的に一定の金額を購入していく方法を、「ドルコスト平均法」と呼びます。ドルコスト平均法は、一度に投資するのではなく、毎月一定額を買うことで、価格が安い時には多くの量を、価格が高い時には少ない量を購入し、平均購入価格を下げる効果が期待できます。

この方法であれば、市場の一時的な動きに惑わされることなく、淡々と資金を積み立てられるでしょう。

3.分散投資

分散投資には、「時間の分散」や「資産の分散」、「地域の分散」があります。時間の分散とは、「積立投資」であったように、一度に買うのではなく購入する時期を分散させることです。

「資産の分散」とは、1つの商品だけで運用するのではなく、複数の異なる金融商品を組み合わせて投資することを指します。

投資の格言に、「卵は1つのカゴに盛るな」というものがあります。もし、1つのカゴに卵を全て入れて運び、途中で落としてしまえば、全ての卵が割れてしまう可能性は高くなります。しかし、いくつかのカゴに卵を分けていれば、カゴを1つ落としてしまっても、全ての卵を割ってしまうことは避けられる、という教えです。

一般的に、保有する金融商品の種類を増やすほど、一度に値下がりしてしまう危険性は低くなると言われています。1つの商品が値下がりしても、その他の商品が順調なら、値下がり分がカバーできるからです。たとえば、株式と債券は異なる値動きになる傾向があります。これらを組み合わせて持ち、資産が偏らないよう分散させて投資することが大切です。

「地域の分散」とは、アメリカやヨーロッパ、アジア・オセアニアといった地域別の株式や債券などに分けて投資することです。すでに経済が成熟した国だけでなく、これから経済発展が期待できる新興国も投資先の対象になります。

各国の経済状況は好不況を繰り返していますので、それぞれ事情の異なる国々に分けて投資すれば、リスクを分散することができます。

■分散投資では「ポートフォリオ」も欠かせない

ここまで「長期・積立・分散投資」について解説しましたが、特に分散投資を実践するうえで大切になるのが「ポートフォリオ」を考えることです。ポートフォリオとは、金融資産における「分散投資の組み合わせ」です。

投資のポートフォリオは、投資信託を例にするとわかりやすいでしょう。投資信託は、投資家から集めたお金を1つにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用します。投資信託は、株式や債券などを中心にしたものや、いくつかを組み合わせたものなどさまざまな種類がありますが、どれもいわゆる「パッケージ」の状態になっています。

このように、どの金融商品をどのくらい配分するか決めることを、投資では「ポートフォリオを組む」と言います。

ポートフォリオを組む際は、金融商品ごとの「リスク」と「リターン」を理解したうえで、配分を決め組み合わせることが重要です。たとえば、一般的に株式はリスクとリターンが高く、投資信託は中間よりやや高いとされています。また、債券は中間よりやや低く、預貯金はリスクやリターンが低いと位置づけられています。

これらを踏まえると、より安定的な運用を目指したい場合は、国内外の債券の比率を7割など多めに配分し、株式の比率を少なめに配分するといいでしょう。それよりも多少積極的に利益を狙いたい場合、もしくは初心者の方でポートフォリオの組み方に悩む場合は、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券を均等に配分してみましょう。はじめから複数の資産にバランスよく投資されている、「バランス型」の投資信託を選択するのもおすすめです。

さらに積極的に利益を狙いたいなら、先ほどとは逆に、国内外の株式の比率を7割など多めに配分し、残りを債券で構成する配分にしてみましょう。

ただし、性格や年齢、家族構成、保有資産などさまざまな要素によって、その人が取れるリスクの大きさは異なります。投資の目的や期間、どの程度のマイナスまで受け入れられるかという「リスク許容度」を見極めたうえで、自分なりのポートフォリオを組んでみましょう。

■投資初心者こそ基本姿勢をしっかり身に付けよう

投資におけるリスクとは、危険という意味ではなく、「値動きの大きさ」を指します。そのブレ幅を少しでも小さくしながら安定的に運用するには、「長期・積立・分散投資」という資産運用の王道を守ることが非常に重要です。投資初心者こそ、この基本姿勢をしっかりと身に付け、リスクという言葉に惑わされずコツコツと運用を続けていきましょう。