辻やもり氏によるコミックを実写化した読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『めぐる未来』(毎週木曜23:59~)は、“過去に戻る病”を抱える主人公、襷未来(萩原利久)の妻・めぐる(早見あかり)が、結婚記念日に謎の死を遂げたことから、未来が過去へと戻り、めぐるの死の真相に迫っていく考察型タイムリープサスペンス。14日には9話が放送され(現在TVerで配信中)、ついに真犯人が明らかに。21日には、最終回が放送される。

今回は、めぐるの同僚で職場の新人・阿頼耶清美を演じた中井友望、捜査一課の刑事・暦亘を演じた田中偉登にネタバレを含むインタビュー。前編では、“難役”を演じきった思い、役作りについてたっぷりと話を聞いた。

※編集部注:本記事はネタバレを含んでいます。知らない状態でドラマをご覧になりたい方はご注意下さい。

  • 中井友望、田中偉登

    左から『めぐる未来』阿頼耶清美役の中井友望、暦亘役の田中偉登=読売テレビ提供

真犯人役を演じると知ったときの心境

――14日に9話が放送され、お二人が、この物語の真犯人で共犯関係にある兄妹だったことが明らかになりました。まずは『めぐる未来』の出演が決まったとき、犯人役を演じることを聞いたときの心境を教えてください。

田中:利久とは付き合いが長くて、昔から一緒に頑張ってきた仲なので、「一緒にドラマができるんだ」という喜びがまずあって。そのあと犯人役で、さらに中井さんのお兄ちゃん役だと聞いて、いろんな衝撃を受けました。犯人だとバレないように、ワクワクさせられるようにどう演じていけばいいのか、うれしさもありましたが、責任重大だなというプレッシャーが7割ぐらいでした。

中井:私はドラマ出演がまだそれほど多くないので、まず『めぐる未来』に出演できることがうれしいという気持ちでした。原作を読んで、清美役をなぜ私にいただけたんだろうと考えましたが、私にできると思って役をいただけたんだと解釈して、とにかく必死に頑張ろうと思いました。

――読売テレビさんに聞いたところ、偶然同じ事務所のお二人が兄妹役になったということですが、元々交流はあったのでしょうか。

田中:僕は昨年の7月頃から今の事務所にお世話になり始めたのですが、ドラマ『君には届かない。』(TBS、23年)での共演や、お芝居のワークショップで何度も一緒になり、二人とも大阪出身の同い年ということから仲良くなりました。……と思っていたんですけど、現場で会ったときにはすごくよそよそしくて、お兄ちゃんは傷ついたよ!(笑)

中井:私は切り替えがうまくないので、逆にあまり話さないようにしていたんです。

視聴者の犯人探しにハラハラ「バレていないかな」

――兄妹役とはいえ、お母さんを亡くしたあと、別々に暮らしていたというストーリーですもんね。9話の、二人がこれまでの思いをぶつけ合うシーンは、どのように臨みましたか。

田中:よそよそしい振る舞いに理由があって良かったです(笑)。9話の撮影前に、中井さんが「二人で意見をすり合わせたほうがいいんじゃないか」と提案してくれたのですが、やっぱり別々に生きてきた兄妹なので、一方的な思いがすれ違ってるほうがいいという結論になりました。あえてお互いの考えていることを交換せず、それぞれが自分の役に対して向き合って、撮影を迎えました。

――暦が犯人だという設定はドラマオリジナルですが、その点での苦労があれば教えてください。

田中:ドラマが放送されるたびに、視聴者の皆さんが必死になって犯人を探すじゃないですか。「バレていないかな」と、怖くて仕方がなかったです。僕が演じる暦は原作とドラマオリジナルを合体させたようなキャラクターなので、怪しまれないように、でも少しずつ違和感を残していくというバランスを、常に監督と話し合っていました。

――中井さんも、その辺りのバランスは監督と相談しましたか。

中井:私は、「最初は全く怪しまれないように、ただただ明るいフレッシュな新人の女の子を演じてね。犯人っていうのは忘れていいぐらいだよ」と言われました。……忘れられなかったですけど(笑)。

9話の佳境シーン「しんどかったです」

――(笑)。そのほか、演じるうえでこだわった部分を教えてください。

田中:8話は暦の単独犯のように描かれ、9話は清美という共犯者の存在が明らかになるというストーリーだったので、暦として、8話では母親への思いをたかぶらせて未来と対峙し、9話では清美への思いを爆発させる、とそれぞれ違ったところに重きを置いて演じました。母親を失ったことで清美との絆が深まり、清美を失いたくないからここまでやってきた、という過程がちゃんと伝わるように、少年時代の暦に戻ったような気持ちで訴えかけたりと、台詞の言い方にもこだわったつもりです。8話では清美の存在を隠すために復讐マシーンを装っていた暦が、9話では涙したり怒ったりと感情をあらわにしたことで、兄としての人間味が出ていればいいなと。

――中井さんのこだわりも教えてください。

中井:9話はとんでもなく台詞量が多く、感情の起伏も激しいので、監督と連絡先を交換してたくさん話し合いました。「この台詞、少し違和感があるんですけど」と相談して、付け足した部分もあります。最初に台本に書かれていた台詞には“復讐”や“目的”という単語がすごく多くて、母親について訴える分量が少なく感じたんです。それだと清美の本当の心のうちが見えにくくなるんじゃないかなと思って。未来くんやめぐるさんに説得されたとき、「じゃあお母さん返してよ」ってすごく言いたくなったので、監督と相談のうえ追加させていただきました。

――清美役として、復讐に至ったお母さんへの思いをしっかり伝えたかったんですね。今お話に出ましたが、9話には、かなりの長台詞で感情をあらわにするシーンがあり、大変だったのでは。

中井:しんどかったです……(笑)。

田中:しんどかったよね!(笑) ドラマなので当たり前なんですけど、何度も何度もいろんなアングルや照明で繰り返し撮って、そのたびに中井さんは全力で清美を演じて。泣きすぎて顔がパンパンになって、声もガラガラで、キャスト陣が「もうやめてあげてほしい」と思うほどの熱演を見せていました。改めて、これが役者という仕事なんだなと。