日産自動車、タミヤ、新渡戸文化学園の3者は、電気自動車(EV)の可能性と未来の街づくりを学ぶ小学生向けの特別授業「なかの電動化スクール」を実施した。EVの普及に注力する日産は、電気で動くクルマ(?)の先駆者「ミニ四駆」を使って子供たちに何を伝えようとしているのか。
手回し発電で走る特別なミニ四駆が登場!
日産は教育への貢献の一環として、2008年から子供向けの環境技術体験教室「日産わくわくエコスクール」を実施してきた。この取り組みには、これまでの15年間で累計1,200校以上、13万人以上の小学生が参加。同社としては、“未来のEVオーナー”となる子供たちに対し、もっと面白く、もっとタメになり、参加者を夢中にさせるような授業を実施できないかとアイデアを練ってきたそうだ。
今回の「なかの電動化スクール」は「EVが活躍する未来のまちづくり」がテーマ。子供たちにEVの特徴や可能性を知ってもらいたいというのが日産の思いだ。
用意したのは、日産が開発した蓄電池と手回し発電ユニットを搭載する「手回し発電型特製ミニ四駆キット」。ミニ四駆を走らせる電気を自ら手回しで発電することにより、エネルギーのありがたみを体験しながら理解してもらうとともに、その電気でどんなまちづくりができるかを考えてもらおうという趣向だ。
もうひとつのツールは、中野駅から子供たちが通う新渡戸文化小学校付近までのエリアを再現した7.5メートル四方のジオラマ「ミニチュア中野」だ。日産担当者によれば、こちらは「子供たちに自分ごととして、また地域に対する責任感を持って、EVを活躍させるにはどうすればいいのかを真剣に考えてもらうための仕掛けです」とのこと。
授業の内容は?
2日目の授業は、新渡戸文化小学校の栢之間倫太郎先生による「EVで、人々やまちの幸せをつくろう」という問いかけでスタート。子供たちが取り組んだのはふたつの課題だ。
ひとつ目の課題は「安心なまち」がテーマ。街が停電したという設定のもと、子供たちがグループごとにミニチュア中野を探索し、電気が必要だと思う場所にミニ四駆を置いていった。
ミニ四駆の設置後には「なぜそこに置いたのか」について子供たちが発表を行った。スーパーマーケットにミニ四駆を設置したある生徒は「懐中電灯などが買えたら明るいなかで過ごせるから、いろんなものが売っているスーパーにしました」と理由を答えていた。
ふたつ目の課題は「楽しいまち」がテーマ。子供たちはEVを活用し、未来の中野のまちに遊び場を作ることに挑戦した。狭いエリアに建物が密集する中野区には、子供の遊び場が少ないという課題があるとのこと。子供目線でどんなアイデアが飛び出すのか、見守る大人たちも興味津々だ。
遊び場を作ったり、ビルに見立てたダンボールを飾り付けたりして、未来の中野に遊び場を作り出していく子供たち。最後はベストショットを撮影し、何を作ったかの発表を行った
ふたつの課題を終えたところで「なかの電動化スクール」は終了。授業開始時は真っ白だったミニチュア中野が子供たちのアイデアで全く違う姿に生まれ変わっていたのが印象的だった。
今後は全国展開も? 日産担当者に聞く
「なかの電動化スクール」を見守った日産自動車 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーの寺西章さんは、今回の取り組みについて「子供たちにとって、忘れられない授業になってくれれば嬉しいです。大人になった時に『あの時の授業があったからクルマが好きになった』『EVが面白いと考えるきっかけになった』と思ってくれれば、さらにありがたいですね」と話した。
今後の展開については「今回の『なかの電動化スクール』は4時限分を使っていますが、これは結構な授業量なので、例えば全国各地で展開していくには、先生1人でコントロールできるように授業自体をメンテナンスしていかなければいけません。ただ、手応えは間違いなく感じたので、なんとか全国での開催を実現できればと考えています」とのことだった。