年金受給者が「年金が支払われる、2カ月に1度のサイクルに慣れるのに苦労した」というお悩みをよく聞きます。年金生活での家計管理のコツについて解説します。

◆給料は毎月支払われるが、年金は2カ月に1回しか支払われない

年金だけで生活することになったら、違いを理解しておかなければならないのは、支給月です。給料は毎月支払われていましたが、年金が支払われるのは2カ月に1回です。

年金は、年6回、2月、4月、6月、8月、10月、12月の偶数月の15日に支払われます。もし、15日が土曜日、日曜日、祝日だったときは、その直前の平日になります。たとえば、4月に支払われる年金は、その前月の2月・3月分です。

◇年金振込通知書で年金額を確認

支給される年金額については、毎年6月に「年金振込通知書」にて案内があります。ここに記載されるのは、2カ月分の年金額です。

また、年金からは、国民健康保険料・介護保険料・住民税なども2カ月分が天引きされます。

年金振込通知書(日本年金機構より)

このように、支給月にはルールがあり、また事前に「年金振込通知書」が届いているにもかかわらず、

「初めて年金が振り込まれたときに、2カ月分だとは知らずに、意外と多くもらえるじゃないかと喜んで全部使ってしまった。そうしたら、翌月になっても振り込まれず、そこで初めてあれは2カ月分だったんだと気が付いた」

「●●円ぐらいは受け取れるはず、と思っていたら、天引きされて思ったより少なかった……」

という人もいるようです。また、年金をもらい始めて「年金が支払われる、2カ月に1度のサイクルに慣れるのに苦労した」という話もよく聞きます。

今まで1カ月ごとに管理していた家計でも、2カ月ごとの管理となると、お金の使い方もこれまでとは違ってくるものです。「年金振込通知書」を確認するなど、事前準備をして、早く2カ月ごとの家計管理に慣れるようにしましょう。今回は、年金生活での家計管理のコツについてお話します。

◆家計管理のコツ:1カ月ごとに予算管理、基本は必要なものしか買わない

2カ月やりくりすることを見通して、1カ月ごとの予算を決め、支出を管理するようにしましょう。費目ごとの管理のポイントを以下にまとめます。

◇(1)通信費、光熱費、保険料、家賃などの固定費

毎月、引き落としとなる固定費を書き出し、いつ何が引き落としになるのかを一覧表にしましょう。

年金が振り込まれるのが偶数月の15日です。一方、通信費、光熱費、保険料、家賃などの固定費は、25日~月末にかけて引き落とされるものもあります。きっちり管理しておかないと、2カ月目の月初~15日までの資金繰りが苦しくなり、「年金の振込日まであと何日と数えながら暮らした」ということになってしまいます。

◇(2)食費

2カ月分の予算を考慮して、まずは1カ月の食費を決め、さらに週ごとに食費を管理しましょう。また、お惣菜を買ったり、外食したりすることは、たまには良いですが、習慣的になると食費が膨らむ原因になるため、「自炊」を前提にするようにしましょう。

味付けも濃いものが多く健康を害する原因と可能性もあります。すこし面倒かもしれませんが、自炊の方が経済的です。

◇(3)消耗品

食費と同様に、2カ月やりくりすることを考慮して、1カ月ごと、消耗品代を決めましょう。消耗品は、基本的に「必要なものだけ買う」ようにしましょう。

安くなっているし、どうせ使うものだからといって、まとめ買いをするのはおススメしません。

理由は、ものを多めに買うと、収納に困り、あっちとこっちに保存しておいて忘れてしまうことがあります。また、今は必要なくても、もしかしたら必要と思って購入したけど、結局使わなかったというものもあるものです。細かなムダが、予算オーバーの原因となります。

◇(4)被服費

季節が変われば、なんとなく買い足したくなる洋服ですが、年金収入は現役時代の5~7割。欲しいものを欲しいだけ買っていては、たちまち赤字となってしまいます。今、持っているものを活用し、「買い足しは最小限度」に抑えましょう。欲しいからではなく、必要だからというのが基準になります。

◇(5)娯楽費

地域の自治体が企画しているイベント、スポーツクラブなど地域の体育館・施設では、安く参加できる講座などがあります。また、図書館などは、書籍の貸し出し以外に、DVDやCDなどの視聴もできます。お金のかからないこと、安く参加できることなどを見つけましょう。

◆毎月の生活費以外に必要になりそうなお金は予備費で準備

65歳以上になると、突然の体調不良、ケガなどで病院にかかることもあります。また、冠婚葬祭や壊れた家電、家具の買い替えなどの思いがけない出費、車の税金や固定資産税の払い込み、車検代など数年に1回~年に1回程度などの支払いで忘れがちな経費があるものです。

突発的に必要になるお金は、リスト化しておきましょう。これらのお金は、場合によっては、貯蓄を崩すことになってしまうかもしれません。ただ、最小限度に抑えたいもの。そのためにも、「毎月5000~1万円を予備費として別枠の貯蓄」をしておきましょう。

◆まとめ

現役時代は、1カ月に1回の定期収入でした。しかし、年金生活は2カ月に1回になります。今までと同じお金の使い方をしていると、お金が足りなくて、どんどん貯蓄を崩すことになってしまいます。今まで以上に支出を締め、お金を使わない生活に慣れるようにしましょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。

文=舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)