東日本大震災から間もなく13年。被害の大きかった宮城県仙台市の荒浜・深沼地区では今、地元ゆかりの不動産企業がNTT東日本などの協力を得ながら、人々のにぎわいを取り戻す復興事業に取り組んでいる。関係者に話を聞いた。

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    被災地で進む"住まい環境整備モデル事業"の取り組みとは?

震災、その後

2011年3月11日に発生した東日本大震災により、仙台市沿岸地域は未曾有の災禍に見舞われた。地震発生当時、若林区の荒浜小学校には児童、教職員、地域住民など320人あまりが避難。その後、巨大な津波が校舎を襲い、2階床上まで浸水した。小学校で難を逃れた人々は幸いにも翌12日に全員が救助されたが、周辺エリアでは多くの尊い命が奪われ、歴史ある深沼の集落も一瞬にしてその姿を消した。

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    現在は"震災遺構"として一般公開されている、仙台市立荒浜小学校

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    校内では、津波の恐ろしさを後世に伝える展示が行われている

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    こちらは体育館にあった時計。津波の到達した15時55分を指したまま止まっている

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    校舎の窓から。学校は海まで700mという近距離にあった

震災後、災害危険区域に指定された地域では住民の集団移住が促進された。その跡地を買い取った仙台市では、利活用に関わる基本理念や土地利用の方針を取りまとめた。いくつかの企業が復興事業に立候補したが、そのうちの1社が、古くから深沼の地域の人々と交流を温めてきた今野不動産だった。同社は国土交通省から「令和2年度(2021年4月)住まい環境整備モデル事業 事業育成型」に採択される。

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    荒浜地区に残された住居跡。こちらも震災遺構となっている

今野不動産 執行役員 経営戦略室長の本田勝祥氏は「協議会やイベントを通じて、元住民の方がた、そして近隣の事業者など多様な人々と情報交換をしてきました」と話す。その結果、まずは深沼において子育て世帯、障がい者、高齢者など多様な人が憩うことのできる施設「インクルーシブパーク」を開園するに至った。

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    今野不動産 執行役員 経営戦略室長の本田勝祥氏

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    こちらはインクルーシブパークのクラブハウス。2023年10月に開園した

インクルーシブパークには文字通り公園を整備するほか、シェアキッチン、カフェ&コワーキングスペース、コミュニティファームなども設置。障がいのある子もない子も、親子でも高齢者1人でも、それぞれが自分らしく楽しく過ごせる居場所を目指す。

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    カフェ&コワーキングスペースを完備

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    カルチャースクールなども開催できる広さがある。窓の向こうに見えている白い建物が旧荒浜小学校

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    2階にもコワーキングスペースがある

翌年、今野不動産は「令和3年度(2022年4月)住まい環境整備モデル事業 事業者提案型」に採択される。このエリアにかつての賑わいを取り戻すことを目指す「深沼うみのひろばプロジェクト」が本格的に始動すると、乃村工藝社、東北福祉大学などが参画。その中でNTT東日本も重要な役割を果たしている。

本田氏が「インクルーシブパーク発展のため、NTT東日本さんには様々なアイデアを出してもらっています。震災の記憶の継承に向けた取り組み、子どもたちの安心安全な遊び場の提供、というテーマについてはすでに形になりました」と紹介すれば、NTT東日本 宮城支店の亀谷到氏も「震災の記憶の継承については、VRゴーグルで視聴できる映像環境を用意しました。いま子どもも大人も、夢中になってコンテンツを見てくれています。この施設を通して、多くの人に防災の大切さを身近に感じてもらえたら嬉しいですね」と応じる。

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    NTT東日本 宮城支店 ビジネスイノベーション部の亀谷到氏

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    VRゴーグルで視聴する映像を通して、震災の恐ろしさなどを語り継いでいく。なお東北福祉大学が映像の監修を行った

子どもの見守りに関しては、ウェアラブルトラッカーの仕組みを応用。いま子どもの皮膚温度はどのくらいか(熱中症の心配はないか)、危険なエリアで遊んでいないか、何かの拍子に転倒していないか、といった詳細なデータを家族の手元にあるスマートフォンで確認できる仕組みを導入した。

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    インクルーシブパークを訪れた親子が安心して過ごせるよう、子どもの見守り機能を用意した

NTT東日本 宮城支店の長屋洋平氏は「深沼うみのひろばプロジェクトは、関わるすべての人が議論に参加して作り上げていく取り組みです。そこで私たちとしてもICTソリューションの後方支援にとどまらず、積極的に輪のなかに入り、自分たちの持っている技術やサービスを組み合わせたらどんなことができるか、協議会の皆さんと協力すればこんなこともできるんじゃないか、とアイデアを出し続けてきました」と振り返る。

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    NTT東日本 宮城支店 ビジネスイノベーション部の長屋洋平氏

今野不動産 業務本部 資産運用課の橋本麻弥氏が「NTT東日本さんに様々な意見をもらえたので、私たちが思い描いていた案をどんどんとブラッシュアップしていけました。不動産会社の視点だけでは、ここまでのものはできなかった。NTT東日本さんが培ってきた経験が助けになって、相乗効果で良いコンテンツができたと感じています」と話すと、これに同社の本田氏も「NTTグループとしての知見がいろんなところに転がっていて。この先の未来を見据えて、一緒に伴走してくれているのが大きな安心感につながっていますね」とうなずいた。

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    今野不動産 業務本部 資産運用課の橋本麻弥氏

気になる今後の展開について「いくつか計画しています」と本田氏。長屋氏も「実は、いま夢の膨らむようなお話がたくさん上がってきています。NTT東日本としても、このプロジェクトに継続して注力する考えです。これからの取り組みにも、是非、注目いただければ」と話していた。

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    地域にかつてのにぎわいを取り戻すまで、復興事業は続いていく