女優の福原遥と俳優の水上恒司がW主演を務め、大ヒット中の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。興行収入40億円を超えた同作はなぜここまで愛されるのか、同作の西麻美プロデューサーに話を聞いた。

  • 映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』 (C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

汐見夏衛氏による同名小説を実写化した同作は、親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの女子高生・百合(福原)が主人公。ある日、母親と喧嘩をして家出し、目が覚めると1945年、戦時中の日本にいた百合。偶然通りかかった彰(水上)に助けられ、彼の誠実さや優しさにどんどん惹かれていくが、彰は特攻隊員で程なく命がけで戦地に飛ぶ運命だった。

■映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』女子中高生を中心に大ヒット

2023年12月8日に公開されると、初週の8日から10日までの3日間で観客動員24万6,502人、興行収入3億2,226万6,500円を記録した同作。週末興行収入ランキングでは邦画作品1位を獲得し、その時点で興収20億円突破を狙える大ヒットスタートを切っていた。その後も勢いは止まらず、2024年1月12日には興行収入30億円を突破。2月11日にはついに40億円を突破した(興行通信社調べ)。

10億円でヒットと言われる邦画業界において、ここまでのヒットを予感していたのか。西プロデューサーは「公開が近づくにつれ、各地の試写での反応やSNSを見ていて、これはヒットはするのではないか、と思っていましたが、ここまでたくさんのお客様に観ていただけるとは……という驚きと感謝の気持ちです」と予想以上だった様子。

配給会社の松竹の中でも、邦画作品では2008年の『おくりびと』(64.8億円)、2006年の『武士の一分』(41.1億円)に次ぐヒット(※ライブフィルムとしては2021年『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』が45.5億円)となり、今後記録を塗り替える可能性も。西プロデューサーは社内の反応について「とても明るいムードになっています(笑)。企画、調整、宣伝と現場の若いスタッフの力を結集した結果でもあり、私も含めてこの経験が今後の自信になると思います」と明かした。

大ヒットの要因については「企画段階から、今この時勢だからこそ観る人に刺さる題材なのではないかとは考えていましたし、それは大きかったと思います」と、世界情勢に対する反応もあったのではないかと分析。「それに加えて原作と同様に様々な愛を描いたことで、観てくださった方々が自分事と捉えてくださり、口コミをしていただけたからではないでしょうか」と、口コミの効果も実感しているという。

一方でSNSを中心に、公開前には「特攻行為を美化しているのではないか」という懸念も上がっていた。西プロデューサーも把握していたそうで「公開して観てくださった方には、映画に込めたのは特攻美化とは逆のメッセージであることがきちんと伝わると信じていましたので、あとは観てくださる方々に委ねるしかないという、祈るような気持ちでした」と語る。

鑑賞者の層については「原作の読者層でもある女子中高生を中心に、10代20代の方々に多くご来場いただいています。年明けからは、年齢層の幅が広くなったとも聞いております。『今まで観た映画で一番泣いた』『今がある幸せを大事にしようと思った』など素敵な感想を沢山いただきました」とコメント。「戦争について考えるきっかけになったり、実際に勉強したというコメントも拝見し、原作の汐見先生や俳優たち、そして主題歌の福山雅治さんがこの作品に込めた思いが伝わったことがとても嬉しいです」と、喜びを表している。

(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会