マツダがロータリーエンジン開発の専門部署を復活させる。おむすび型のローターでおなじみのロータリーエンジンはマツダの「飽くなき挑戦」を象徴する技術だが、開発部署は2018年に解散となっていた。なぜ今、復活なのか。狙いは何か。社長の話を聞いてきた。
アイコニックSPの人気が後押し?
マツダ代表取締役社長兼CEOの毛籠勝弘さんが、「東京オートサロン2024」のプレスカンファレンスで「ロータリーエンジン開発チーム」を2月1日に立ち上げると発表した。
この決断を後押ししたのは、マツダが「ジャパンモビリティショー2023」に出展したコンセプトカー「アイコニックSP」を見た多くの人から届いた「賛同」と「激励」の声だったという。
アイコニックSPは2ローターのロータリーエンジンを発電機として使う「ロータリーEV」というタイプのスポーツカーだ。このクルマを公開するとマツダには賛同と激励の声が届き、毛籠社長は「大変うれしく、背中を押された」気持ちになったそう。「夢に近づくべく」(つまりは、市販に向けて動き出すべく?)、2月1日にロータリーエンジンの開発グループを立ち上げることにしたそうだ。
ロータリーエンジンに時代が追い付いた?
マツダは先頃、ロータリーEVの「MX-30」を発売した。ただ、このクルマのパワートレインについては専門の部署があったわけではなく、ロータリーエンジンを知るエンジニアがいろいろな部署から集結して開発を進めたという。
ロータリーエンジンの専門部署は2018年にいったん解散となった。その後、エンジニアたちは新たな所属先で「他流試合」(以下、カッコ内は毛籠社長のコメント)をしながら、エンジンの燃焼効率やマツダお得意のモデルベース開発などに関する「鍛錬を積んできた」そう。彼らが再び開発チームとして集まり、新時代のロータリーエンジン開発に向けて燃焼技術やエミッションの改善などについて研究を深めていくらしい。ロータリーエンジンの基幹部分の開発には30人くらいのエンジニアが当たるそうだ。
カーボンニュートラルの実現に向け、マツダが重要と考えるのは「マルチソリューション」「多様な技術」「選択の自由」であり、そのために使えるひとつの大きな資産は「内燃機関」だと毛籠社長は話す。ロータリーエンジンは「コンパクト」で「電動化との相性」も良く、「雑食性」なので水素などいろいろな燃料で回せるところも強みとなる。ロータリーエンジンが「環境エンジン」として活躍できる時代が到来しつつあることを受け、今回の専門部署の立ち上げを決めたというのが毛籠社長の説明だ。
「解決すべき技術的ハードルはまだまだ高い」と毛籠社長は気を引き締めていたが、アイコニックSPの発売を期待する人たちにとって今回の発表はかなりの朗報といえるだろう。