旭酒造は1月12日、「最高を超える山田錦プロジェクト2023」を開催。グランプリを獲得した福岡県の農家、ウィング甘木 北嶋将治氏の山田錦60俵が総額3,000万円(市場価格の約25倍)で買い取られた。
■農業の未来を一緒につくっていく
原則、山田錦の生産者を対象とした山田錦プロジェクト。『山田錦農家に夢を持ってもらいたい』という思いから2019年に始まり、今年で5回目の開催を迎えた。
重視される審査項目は「心白が大きすぎない(高精白に耐えうる)」、そして「心白が玄米の中心に発現している(精米途中に割れにくい)」。ちなみに心白とは玄米の中心部分にある白色の不透明な部分、高精白とは精米するときにより小さくすること。
冒頭、旭酒造の桜井一宏社長が挨拶。まず同氏は、米農家の高齢化が進んでいる現状を憂いた。ある調査によれば農家の約8割が60歳以上になったとも言われている。なぜ、なり手がいないのか。その原因のひとつとして、価値に見合った対価が支払われていないのではないか、という見方を示す。そこで旭酒造では、市場よりも高い値段で米を買い取ることをしてきた、と説明。「私たちは生産者の皆さんとともに、農業の未来を一緒につくっていきたい」と話す。
続いて旭酒造会長の桜井博志氏が登壇。同氏が1984年に旭酒造を引き継いだ頃、まだ山田錦の収穫量は多くなかったとし、酒造業界でも「山田錦は価格が高い」として持て余していたと指摘する。しかし獺祭を生産するようになり、旭酒造が大量に山田錦を買い取るようになると、今度は他社から「旭酒造が山田錦を買い占めている」との声が聞かれるようになった。一方で農家に話を聞けば、「自分たちには米の価格を決定する権利がなく、また生産量も農協から決められている」という。
そうしたひと昔まえのエピソードをフックにしながら、現在では広範囲で山田錦が作られていることを説明。そして農業の将来についても期待感を口にした。
ここから識者を招いたパネルディスカッションに移る。桜井博志会長のほか、特別審査員長を務めた漫画家の弘兼憲史氏、参議院議員の中田宏氏、山田錦栽培研究所の海老原秀正氏が参加して、まだ日本の農政改革は道半ばであること、あるいは農協の弊害と農家の農協離れについて、といったテーマで議論。果ては、いよいよ米国ニューヨークで発売となった『DASSAI BLUE』の販売状況についても報告があった。
最後の受賞式では、はじめに準グランプリが発表され、岡山県の国定農産が賞金1,000万円を獲得した。
グランプリに輝いたのは、福岡県のウィング甘木。代表者の北嶋将治氏は「先祖から受け継いだ田んぼで米を育てています。先祖代々、大事に作ってきた大地の恵みを得て、こうして2度目の最高賞グランプリをいただくことができました。これからも山田錦プロジェクトを盛り上げていければと思います。私たちも、今後とも切磋琢磨していきます」と喜びを語った。