アサヒビールは1月10日、「アサヒビール 2024年 事業方針説明会」を開催した。2024年の事業方針として「もっともっと、面白くなる。アサヒビール」を掲げ、既存事業の価値向上と新市場の創造に取り組んでいくという。同説明会の様子をレポートする。

  • アサヒビール 代表取締役社長 松山一雄氏、同社マーケティング本部長 梶浦瑞穂氏

「既存事業の価値向上と新市場・新価値の創造」

説明会の冒頭では、アサヒビール 代表取締役社長 松山一雄氏より2024年の事業方針について説明が行われた。2024年、アサヒビールは「もっともっと、面白くなる。アサヒビール~『お客様のワクワク』を生む独自価値・新価値の追求~」を事業方針に掲げ、「既存事業の価値向上」と「新市場・新価値の創造」の2本柱で取り組んでいくという。

  • アサヒビール2024年の事業方針

「"面白さ"というのはお客様や社会に向けたものでもありますが、社員が自分たちがやっていることを面白いと思わないと、面白いものは生まれません。このメッセージの半分は社員にも向けたものです。アサヒビールがイノベーションを生み出していくためにも、自分たちがやっていることに対して誇りと面白さを感じる、そのような会社になっていきたい」とメッセージに込めた意図も語った。

  • 既存事業の価値向上

柱のひとつ「既存事業の価値向上」では、"辛口""コク"といった機能価値だけでなく、「開放的な楽しさ」「まったり・癒し」といったシーンごとの気持ちに寄り添うような情緒価値でカテゴライズしたブランドの提案を行っていく。また酒類カテゴリーを横断して「High-Valueカテゴリー」を創出、アサヒビール独自の価値を持ち、価格に左右されず選択され続ける高付加価値商品を作っていくという。

「新市場・新価値の創造」においては、「生ジョッキ缶」をはじめとした日本初・世界初のイノベーション商品の展開、創業90周年を迎える「ニッカウヰスキー」100周年に向けた投資の強化、ワイン分野では中高級ワインに軸足を置き「エノテカ」に集約していく。

また「新市場・新価値の想像」では、飲み方の多様性を尊重する「スマドリ(スマートドリンキング)」の推進も引き続き行う。吉本興業とのコラボレーションや「THE MANZAI」との大型タイアップ、渋谷での「THE 5th by SUMADORI-BAR」のオープンなどを通し、認知率は向上している。しかし飲む方への『スマドリ』認知は追いついているが、飲めない方・飲まれない方への認知はまだまだの状況だと松山氏。「そういった方々にも『スマドリ』の文化に触れ、実際に体験してほしい。そのためには商品が必要だと思っています。実際のターゲットの方々に対しての正しい商品と正しいコミュニケーションを学びながら、正しい届け方を開発しています」。

2024年は「ワクワクするような提案を」

また同社マーケティング本部長 梶浦瑞穂氏より、2023年のマーケティングの振り返りと、2024年の取り組みに関して説明も行われた。

「今年はお客様がワクワクするような提案をしていきたい。ひとつめはビールの強化、ふたつめは価格に左右されない『HIgh-Value』商品、スマートカテゴリー拡大による新市場の創出、今年90周年を迎えるニッカウヰスキーのブランド強化、そして業務用市場を楽しくワクワクするブランド体験の場とすること。この5本柱でマーケティングを行っていきます」と梶浦氏は語る。

「アサヒ スーパードライ」

ビール類の2023年総括としては、酒税改正によりビール回帰が加速し、「スーパードライ」ブランド合計では前年比105%となった。また生ジョッキ缶第二弾商品「アサヒ食彩」の発売や「復活ビール総選挙」による復刻商品の発売、ラグビーワールドカップのスポンサードでは世界中のユーザーに『スーパードライ』を認知してもらう機会になった。もうひとつの柱である「アサヒ生ビール」は、西日本中心に盛り上がっているという。

2023年の「アサヒ スーパードライ」ブランドは、アルコール分3.5%の「ドライクリスタル」の発売など様々なチャレンジを行った。また「生ジョッキ缶」は韓国では大ヒットが起きた。2024年も、2月には新容器「スマート缶」の発売、4月からはブランド体験のできる期間限定のコンセプトショップを銀座に開店、コミュニケーションでは八村塁選手を起用したCMをオンエアする予定だ。

「アサヒ 食彩」日韓同時発売

HIgh-Value商品として、プレミアムな生ジョッキ缶「アサヒ 食彩」を、3月5日、日本全国・韓国で同時発売する。同商品は「生ジョッキ缶」第2弾としてコンビニエンスストア限定で展開していたが、3月からは国内の全業態で発売する。また韓国での発売は、同国でヒットしている生ジョッキ缶をさらに勢いづけ、アジアを代表するプレミアムビールとして販売していく狙いがある。

東北先行販売「GINON」、全国発売へ

RTDではジンベースの無糖柑橘サワー「アサヒGINON(ジノン)」を4月2日より全国で発売する。同商品は新創造価値に向けた新たな取り組み「Asahi RTD INNOVATION 2025」として4つの新ブランドを4エリアで発売した際、東北エリアで販売された商品だ。ユーザー数、リピート数、味の評価も抜けており、ジンをベースにしたジンサワーという新しいカテゴリー創出にもつながる。

本物のレモンスライスが!「未来のレモンサワー」

RTDカテゴリーにおけるHIgh-Value商品としては、ふたを開栓するとレモンスライスが浮き上がってくる世界初のRTD『未来のレモンサワー』を、首都圏・関信越エリア限定で6月11日に数量限定で発売する。フレーバーはレモン由来の果実味と適度な酸味・苦みが楽しめる「オリジナルレモンサワー」と、サワー液に糖・香料不使用の「プレーンレモンサワー」の2品種。

同社独自のフルオープン缶を使用することで、レモンスライスが浮き上がる様子とレモン由来の豊かな香りが楽しめる。またレモンスライスはそのまま食べられるので、香り、見た目、音など五感で楽しめる。

ノンアルビール「アサヒ ゼロ」

「スマドリ」を推進し、新市場・新価値を創造する新商品として、2023年10月より近畿エリアで先行販売していたノンアルコールビールテイスト飲料「アサヒ ゼロ」が4月9日より全国発売を開始する。同社のアルコール分0.5%のビール「アサヒ ビアリー」で培った脱アルコール製法の技術を進化させ、0.00%を実現。消費者からは「本物のビールのような味わい」「ノンアルコールは苦手だったがこれは美味しい」といった声も寄せられているという。

またニッカウイスキーは2024年が創業90周年の年となる。今年は100周年に向けて、既存ブランドの価値向上、また90周年限定商品や新ブランドの発売を計画する。業務用市場では、これまでビール中心だったところからHIgh-Value商品を通じて外食ならではの飲用体験を提供していくという。