新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」(RYORININ’s EMERGING DREAM U-35) 実行委員会は、11月27日に飲食業界を対象としたセミナー「今から始められる! フードロス対策をRethink」を開催。
『フードロス対策』をテーマに、バルニバービの会長・佐藤裕久氏やフードロスバンクの社長・山田早輝子氏らが登壇するパネルトークが実施され、動画のLIVE配信と収録が行われた。また、登壇者と「Rethink PROJECT」で協賛しているJTにフードロス対策にかける想いなど伺った。
■食品ロスの半分は一般家庭から
企業・組織や飲食店、また料理人として、トップランナーたちがフードロス対策の実例や身近な取り組みなど、さまざまな視点によるパネルトークを展開された本セミナー。飲食業界に携わる関係者を対象にオンライン配信などが実施された。
JTが日本国内のパートナーシップを基盤に取り組む地域社会への貢献活動「Rethink PROJECT(リシンク・プロジェクト)」が協賛に名を連ねている。
「『Rethink PROJECT』の重点領域である環境保全の取り組みのひとつとして、今回はフードロスをテーマにしています。環境保全の取り組みでは他に、『ひろえば街が好きになる運動』という市民参加型の清掃活動や、『JTの森』という森林保全の取り組みなども、20年ほどやっています。セミナーのテーマである食品ロスも世界的な問題と考えています」と、JT の藤木氏。
「JTのパーパスは『心の豊かさを、もっと。』ですが、人とつながれる食というものを通じて、“心の豊かさ”を育んでいけたらなと。今後もフードロスという課題はもちろん、飲食店さんや食に関わる団体さんたちと一緒に地域を盛り上げる取り組みを進めていきたいと思っています」
フードロスバンク 代表取締役社長の山田早輝子氏は、セミナー内で消費者・一般家庭で発生する食品ロスが47%と半分近い割合を占めている実態などを紹介した。
「昨年から『RED U-35』のアドバイザーを務めさせていただいている縁もあり、今回のイベントに参加しました。家庭から出てくる食品ロスが47%で、スーパーマーケットなどの小売店やレストランで発生する食品ロスとちょうど半々ぐらい。自分ごと化して小さな積み重ねをしていくことが大事な問題なので、セミナーに視聴してくださった一人でも多くの方が当事者意識を持ってくださればいいなと思っています」
国際ガストロノミー学会日本代表などを務める山田氏だが、フードロスバンクでは飲食店事業者や生産者などが経済的に持続可能なかたちでの食品ロス対策を目指しているという。
「日本の食品ロスが発生する理由として、見た目が悪いだけで捨てられてしまう野菜などの食品が非常に多いという点が海外と少し違うところ。私は海外に18年間住んでいたのですが、オーガニックの野菜はどうしても見た目が悪くなることは仕方のないことですし、それが当たり前という感覚でした。今後もフードロスバンクの事業では、食品ロスを入り口に地球環境やサステナビリティにつながる取り組みへ活動の幅を少しずつ広げていきたいと思っています」
■フードロス対策は飲食店の死活問題に
食分野の第一線で活躍するキーマンが登壇した本セミナー。ライブ配信された東京セミナーには、1991年に「バルニバービ」を設立した佐藤裕久会長がパネリストとして登壇した。「バルニバービ」は東京・大阪をはじめ全国に92店舗(2021年7月末時点)のレストラン、カフェ、スイーツショップを現在展開する。
「食材も環境問題も全く同じだと思うのですが、大義としては理解していてもなかなか自分ごと化することが難しい問題なのかなと思っています。一方で食品ロスに対する取り組みは、社会的には逼迫してきていることもさまざまな環境問題と合わせて認識が進んできています」
佐藤氏は一般社団法人日本飲食団体連合会(食団連)で副会長を務めるほか、兵庫県淡路市や島根県出雲市などに複合施設を開業。近年は食を切り口に「地方創再生プロジェクト」などにも注力している。
「僕たちは学者ではないのでリアルに実践していく側の人間ですが、1回こういう話を聞いたからといって実践しようと人は思わない。諦めずに伝えていかないといけない。いまの若い世代はとくに環境問題を熱心に学んでいると思うので、僕たち上の世代の人間も彼らから逆に学びながら、一緒に社会を変えていきたいと思っています」
また、食団連と同様に本セミナーの後援である全国飲食業生活衛生同業組合連合会の齊藤育雄副会長は、「飲食業はもともと食品ロスを出ないようにするのが仕事。ロスをどこまで抑えられるかによって、店の利益が大きな差が生まれてしまう」と語った。
コロナ禍などを経てさまざまなコスト高に見舞われているだけに、フードロス対策は店舗経営の死活問題。同団体では組合同士でフードロスに対する取り組みに関する情報を共有し、飲食店事業者のより効率的な店舗経営などにつなげているそうだ。
齋藤氏はフードロス対策について、最後は一般消費者に向けて次のようなメッセージも送っていた。
「なるべく残さず食べ切れる分だけ注文する、あるいはどうしても残してしまうときなどはお持ち帰りなども活用する。消費者の方々が少し意識を変えるだけで、食品の問題はかなり変わると思います。お持ち帰りは昔から広くやられていましたが、とくにコロナ禍などでフードロスが全国で大々的な問題になり、行政も製造者責任の見直しなども進んでいます。事業者の皆さんは行政の適切な指導のもとでお持ち帰りも活用していってもらいたいと思っています」