現代の女子高生・百合(福原遥)が目覚めたら戦時中の日本に……偶然通りかかった特攻隊員の彰(水上恒司)に何度も助けられ次第に惹かれていくという物語を描いた、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が現在公開されている。
今回は、彰と同じ特攻隊員の石丸役の伊藤健太郎、板倉役の嶋崎斗亜(※崎はたつさき)にインタビュー。陽気な石丸は、弟キャラの板倉をかわいがる関係でもあったが、実際に撮影ではどのように過ごしていたのか。また、注目シーンについても話を聞いた。
■映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で初共演
――出演が決まった時に、周囲からの反応はありましたか?
嶋崎:Lil かんさいのメンバーがすごく喜んでくれました。外部の映画に出演することも初めてやったので、お母さんもめっちゃ喜んでくれて。皆さんがひたすら喜んでくれたので、嬉しかったです。5人グループなんですが、試写もみんなで一緒に観させてもらって、終わったら横にいた西村(拓哉)くんが泣いていて、鼻がぐずぐずでした。一応、観る前にティッシュはもらっていたんですけど、それがペーパータオルで……(笑)
伊藤:鼻が痛くなるやつだ(笑)
嶋崎:痛がってました(笑)
伊藤:自分は、実際に特攻に行った親戚がいて、小さい頃から「特攻のおじちゃん」の写真を見ていたんです。いざ自分が特攻隊員を演じるとなると、いろいろ感じる部分はありましたけど、親戚のみんなも「いつかやってもらいたい」と思っていたようで、自分も演じたいという気持ちがありました。当時の状況に詳しい人はもう残っていないんですけど、実際に血の繋がっている中にそういう人がいることが、この映画に出させてもらう意義にもなったと思います。
――お互いの印象としてはいかがでしたか?
伊藤:もう、かわいいです。
嶋崎:いやいや!(笑)
伊藤:みんなの弟みたいな感じで、現場でもすごく盛り上げてくれましたし、助けてもらいました。
嶋崎:撮影の時は19歳で……。
伊藤:あ、もう20歳?
嶋崎:なりました。
伊藤:いいね!
――伊藤さんが嶋崎さんの坊主頭を撫でてかわいがっている印象がありました。
伊藤:いっぱいなでなでしました(笑) 「ごめんね」なんて言いながら。でも、元から台本に書いてあったんです!(笑)
嶋崎:伊藤さんは、一言ですごくパッと雰囲気を変える感じが「テレビや映画で見てた人や」「すごっ!」となりました。皆さんそうなんですけど、すごいなって思いました。
伊藤:ありがたいですね。斗亜くんはめちゃくちゃ頑張っていて、先ほども「外部の作品に出演するのは初めて」とおっしゃってましたけど、全然そんな感じもなく、堂々と素敵でした。
――裏側で、2人でコミュニケーションをとる場面はあったんですか?
伊藤:2人でというより、撮影現場全体でコミュニケーションをとっていました。空き時間にはUNOとかしてました。
嶋崎:誰が勝ちましたっけ? 僕はけっこう最後の方まで残ってた気がします。
伊藤:そうだったね。それで戦ってるうちに、出番がきちゃって(笑)
嶋崎:撮影中の伊藤さんはひたすらに優しかったです。僕の坊主頭をもみくちゃにするシーンも、カットがかかる度に「痛くなかった?」と言ってくださって。本当に優しく触ってくださるから、痛いわけないんですよ!(笑) でも毎回声をかけてくださったし、演技のことでも本当にのびのびとさせていただいて、僕としてはその姿を見て学ばせてもらっていました。
――逆に伊藤さんは嶋崎さんから刺激を受けたことはありましたか?
伊藤:カメラの前に立った時の肝の据わり方がすごい。普段は割と弟キャラというか、かわいらしい感じなんですけど、カメラの前だとガラッと変わるので、スイッチの切り替えが素晴らしいなと、見習う部分でした。
――撮影現場では誰がムードメーカーだったのでしょうか?
伊藤:それこそ斗亜くんだと思います。みんなと話してくれてましたし、話題を作ってくれていました。
嶋崎:そんな……! 上川(周作)さんもすごかったですよね。いろいろ興味を持ってくださって、質問してくださるんです。
伊藤:面白い人だった。自分でおっしゃってたんですけど、しゃべり始めると止まらないらしいんですよ。オチが見つからないって(笑)
――男性陣が盛り上がっている中に、福原さんが入ってくることもあるんですか?
伊藤:待ち時間が一緒ということが少なかったんですけど、会うときはみんなで一緒にしゃべったりしてました。おやつをくれたりして。
嶋崎:お菓子パーティーしました。
■「絶対に戦争をしたらダメだ」と作品を送り出す意義を感じた
――ぜひ作中で好きなシーンも教えてください。
嶋崎:僕は、特攻隊のメンバーでご飯を食べているシーンが楽しかったです。特に台本で動きが決められてたわけでもなく、「みんなアドリブで」というようなシーンで。
伊藤:あのシーンって、基本的に、僕らが喋らなきゃいけないんです! ほかの方々はそんなにガッと喋るタイプのキャラクターじゃないので、明るいキャラの僕らが話題を作っていかなければいけなくて、けっこう大変だったよね(笑)。僕らがわーっとやってないと、食堂がシーンとなっちゃうんで。
嶋崎:だから、急に僕が「板倉特製どんぶり」を作り出したり(笑)。周りのおかずを全部使った「全部乗せ丼」です。
伊藤:あれ、まっ茶色だったね(笑)。そういうアドリブの面でも助けてもらいました。色々きっかけを作ってくださったので、乗っかりやすかったです。
嶋崎:ああいう明るいシーンがあるからこそ、他のシーンが心に響いて来るから、アクセントになるのかな。
伊藤:僕のお気に入りシーンはいっぱいありますけど、印象に残ったという意味ではやっぱり終盤の橋のシーンです。実は、石丸はセリフが一切ないんですよ。台本では5ページぐらいあるシーンなんですけど、読んでも読んでも「あれ、俺、今日セリフないな」と(笑)。でも本当に苦しくなるシーンでもあって、ずっと見ていた思い出があります。セリフのない芝居を全力でやっていました。完成した作品を観ても、本当に素敵なシーンだった。斗亜くんは泣きながら走っていて1番大変だったと思うし、僕はずっと「頑張れ、斗亜!」と思ってました。
嶋崎:ありがとうございます。
――それは逆に注目したくなりますね。
伊藤:石丸も2回くらい(カメラに)抜かれるので!
――世界中でいろいろある中で、この作品を世に出す意義についてはどのように思われましたか?
嶋崎:成田洋一監督も「世界で戦争が起こっているのを見て、絶対に戦争をしたらダメだと思った」とおっしゃってたんです。僕も原作を読んで、完成した映画も観て、本当に繰り返したくないと思いました。
伊藤:日本は今戦争をしていないですけど、過去にこういう時代があったということは、知っておくべきだなと改めて感じました。考えていただけるきっかけになる作品になっているとも思うので、いろいろ残るものがあればいいなと思います。
■伊藤健太郎
1997年6月30日生まれ、東京都出身。主な出演作はドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(14)、『今日から俺は!!』(18)、朝ドラ『スカーレット』(19〜20)、映画『デメキン』(17)、『コーヒーが冷めないうちに』(18)、『弱虫ペダル』(20)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、『十二単衣を着た悪魔』(20)、『冬薔薇』(22)、『静かなるドン』(23)など。
■嶋崎斗亜
2003年8月3日生まれ、大阪府出身。アイドルグループ Lil かんさいのメンバー。主な出演作は『映画 少年たち』(19)、ドラマ『年下彼氏』(20)、『僕らは恋がヘタすぎる』(20)、『ジモトに帰れないワケあり男子の14の事情』(21)など。