公益財団法人 日本漢字能力検定協会は12月12日、今年一年の世相を表す漢字一字が「税」に決まったことを発表した。2014年以来2度目。11月1日〜12月6日、2023年の世相を表す漢字一字とその理由を全国から募集し、応募14万7,878票の中から5,976票(4.04%)を集めて1位に選ばれたもの。京都・清水寺の森清範貫主の揮毫により発表され、奉納の儀式が行われた。

  • 2023年「今年の漢字」第1位「税」(【公式】2023年「今年の漢字」公式X (@Kotoshinokanji)より

増税議論、インボイス制度やふるさと納税など

2023年は、防衛力強化に必要な財源をまかなうため、法人「税」、所得「税」、たばこ「税」の3つの「税」目での増「税」に関する議論が行われた。賛否両論がある中、増「税」されるのではないかと多くの国民が不安に感じた。

過去2年間の「税」収増の還元として、岸田首相から、所得「税」と住民「税」の定額減「税」が実施されることが示された。あわせて行われる低所得者世帯への支援や所得制限の有無など、国民が関心を寄せる検討・議論が多くなされた。

インボイス制度や、ふるさと納「税」のルール厳格化、酒「税」改正、新NISAなど、今年は様々な「税」にまつわる改正や検討がなされ、一年を通じて「税」に関する様々な話題が続いた。

過去に「税」が「今年の漢字」のトップ20にランクインしたのは、1997年(18位)、2013年(16位)、2014年(1位)、2019年(10 位)の4回だった。いずれも消費税が話題の中心だったが、今年は、様々な種類の税について触れられていた。

2位以降にランクインした漢字は?

2位以降では、「戦」「争」が昨年に引き続きランクイン。一方で、夏の平均気温が統計開始以来最高であったことによる「暑」「熱」や、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)や阪神タイガースの優勝、大谷翔平選手の活躍など、野球関連の「虎」「球」「翔」「侍」が並んだ。また、物価高を背景とする「高」「増」などの生活の厳しさを表す漢字や、新型コロナウイルス感染症5類移行で、日常が戻ってきたことを喜ぶ「楽」「明」もトップ20に入った。

応募の多かった上位10位までの漢字は以下の通り。

1位「税」(ゼイ・セイ/みつぎ) 5,976 票(4.04%)
2位「暑」(ショ/あつい) 5,571 票(3.77%)
3位「戦」(セン/いくさ・たたかう・おののく・そよぐ) 5,011 票(3.39%)
4位「虎」(コ/とら) 4,674 票(3.16%)
5位「勝」(ショウ/かつ・まさる・すぐれる・たえる) 4,653 票(3.15%)
6位「球」(キュウ/たま) 3,485 票(2.36%)
7位「高」 (コウ/たかい・たか・たかまる・たかめる) 3,468 票(2.35%)
8位「変」(ヘン/かわる・かえる) 2,955 票(2.00%)
9位「増」(ゾウ・ソウ/ます・ふえる・ふやす) 2,711 票(1.83%)
10位「楽」(ガク・ラク・ゴウ・ギョウ/たのしい・たのしむ・かなでる・このむ)2,472 票(1.67%)

1995年〜2022年「今年の漢字」と選定理由

また、過去の「今年の漢字」と選定理由は以下の通り。

1995年「震」 阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関の崩壊などに「震えた」年。
1996年 「食」 O157食中毒事件や狂牛病の発生、税金と福祉を「食いもの」にした汚職事件の多発。
1997年 「倒」 金融機関など経営破たんの続出。サッカー日本代表が並み居る強豪を倒してFIFAワールドカップ初出場決定。
1998年 「毒」 和歌山のカレー毒物混入事件や猛毒ダイオキシン、環境ホルモンなどが社会問題に。
1999年 「末」 世紀末。東海村の臨界事故や警察の不祥事など信じられない事件が続発して、「世も末」と実感。
2000年 「金」 シドニーオリンピックでの日本人選手の金メダル獲得や、南北朝鮮統一の実現に向けた"金・金"首脳会談など。
2001年 「戦」 米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変し、対テロ戦争、炭疽(たんそ)菌との戦い、世界的な不況との戦いなど。
2002年 「帰」 日本経済がバブル前の水準に「帰り」、昔の歌がリバイバルされ大ヒット。北朝鮮に拉致された5人が24年ぶりに帰国。
2003年 「虎」 阪神タイガース18年ぶりのリーグ優勝、「虎の尾を踏む」ようなイラク派遣問題など。
2004年 「災」 台風や地震などの記録的な天災や、イラクでの人質殺害や子どもの殺人事件など、人災が多発。
2005年 「愛」 紀宮様のご成婚、「愛・地球博」の開催、各界で「アイちゃん」の愛称の女性が大活躍。
2006年 「命」 悠仁様のご誕生に日本中が祝福ムードに包まれた一方、いじめによる子どもの自殺など、痛ましい事件が多発。
2007年 「偽」 身近な食品から政界、スポーツ選手にまで次々と「偽」が発覚して、何を信じたら良いのか、わからなくなった。
2008年 「変」 日米の政界に起こった変化や世界的な金融情勢の変動、食の安全性に対する意識の変化など様々な変化を感じた年。
2009年 「新」 政権が交代し新内閣が発足、アメリカでも新大統領が就任、裁判員制度やエコポイント制度などの新しい制度も始まった。
2010年 「暑」 猛暑日の連続で熱中症にかかる人が続出、地球温暖化の警鐘を感じた年。
2011年 「絆」 東日本大震災など大規模災害の体験から、身近な人との絆の大切さを再確認した年。
2012年 「金」 金環日食など天文現象の当たり年、ロンドンオリンピックで日本史上最多メダル獲得など数多くの金字塔が打ち立てられた年。
2013年 「輪」 2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催、富士山の世界文化遺産登録など、日本中が輪になって歓喜に沸いた年。
2014年 「税」 消費税率が17年ぶりに引き上げられ、「税」について考えさせられた年。
2015年 「安」 戦後70年の節目の年に安全保障関連法案の採決を巡り、国論が二分した年。
2016年 「金」 リオオリンピックの日本人選手の「金メダルラッシュ」と4年後の東京オリンピックへの期待が高まった年。
2017年 「北」 「北」朝鮮ミサイルの「北」海道沖落下や九州「北」部豪雨などの災害から、平和と安全の尊さを実感した年。
2018年 「災」 北海道・大阪・島根での地震、西日本豪雨など、日本各地で起きた大規模自然「災」害により、多くの人が被「災」した年。
2019年 「令」 新元号「令」和に新たな時代の希望を感じた一年 。法「令」改正、法「令」順守、警報発「令」としても使われた年。
2020年 「密」新型コロナウイルス感染症が日本を含め世界的に流行。日々の活動が制約され、「密」という漢字一字を意識し続けた年。
2021年 「金」コロナ禍で開催された東京オリンピックでの日本人選手最多「金」メダル獲得により、世の中が明るく照らされた年。
2022年 「戦」ロシアのウクライナ侵攻により、「戦」争の恐ろしさを目の当たりに。円安・物価高など生活上での「戦」いもあった年。