俳優の吉沢亮が、映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(2024年公開)の主演を務めることが9日、明らかになった。

吉沢亮

同作は、作家・エッセイストとして活躍する五十嵐大氏の実録ノンフィクション『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』(幻冬舎刊)の実写化作。耳のきこえない母と、きこえる息子・五十嵐大(吉沢亮)の物語を点描のように繊細に紡いでいく。

第38回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、キネマ旬報ベスト・テン1位に輝いた『そこのみにて光輝く』(14)、『きみはいい子』(15)等で国内外にて高く評価される呉美保監督が、吉沢亮を主演に迎え、『正欲』 『アナログ』(23)の脚本も手掛ける港岳彦による脚本で作り上げた。

呉監督にとっては、9年ぶりの長編作品。コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐氏による実録ノンフィクションをもとに、主演の吉沢が難役に挑戦し、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現する。

■呉美保監督 コメント

原作を読み、きこえない両親に育てられた五十嵐大さんの人生に触れ、コーダならではの情緒と葛藤に、まだまだ知らない世界はあるのだなと無知を学びました。
と同時に、親と子の極めて普遍的な感情にも触れ、自分自身の家族へのいつかの懺悔が一気に蘇り、これはマイノリティには留まらない、大いなるアイデンティティの物語だと、強く思いました。 久しく映画作りからは遠ざかっていましたが、いつか復帰できるなら絶対にこの方と、と勝手に心に決めていたのは吉沢亮さんです。彼の、繊細かつ制御された芝居の奥底にある魂の叫びを覗き見たくて、さらにはまだ見ぬ新しい吉沢亮に出会いたくて、9年ぶりの長編映画に臨むに至りました。

■吉沢亮 コメント

感情の内側までも表現してくれる手話は口以上に多くを語り、言葉とはただ吐き出すものではなく、伝えるものであると言う、当たり前であるはずのことを改めて教えてくれました。
コーダとして生まれた葛藤を抱えながらも、両親から沢山の愛を受けて育った五十嵐大さんの人生を、昔からご一緒したいと夢見ていた呉美保監督と共に丁寧に生きさせてもらいました。お楽しみに。

【編集部MEMO】
『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』 を原作にした映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。宮城県の小さな港町で暮らす五十嵐家に、男の子が生まれた。両親、祖父母は“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、父・陽介と母・明子の耳がきこえないこと。幼い大にとって、時には母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし成長とともに、周囲から特別な目で見られていることに戸惑い、苛立ち、母の明るさすら疎ましく思いはじめて、冷たい態度をとることが増えていく。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大。そして数年後。“きこえない世界”と“きこえる世界”のふたつの世界を行き来するなかで、帰郷したある日、記憶の底に隠れていた母への思いもかけない気持ちがあふれ出す。

(C)五十嵐大/幻冬舎 (C)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会