まずはグラスをくるくると回し、香りをしっかり味わってから舌の上へ。ワインって、五感を研ぎ澄ませて楽しむお酒というイメージがありますよね。さまざまな知識や感覚を持っていればいるほどおいしくいただける気がします。日本のワイナリーの先駆者であるメルシャンが10月に、“ワインの世界とつながるさまざまな体験”を提供することをコンセプトにしたサイト「WINE & DOORS」をオープン。ワインと五感の関係にさらなる刺激を与える、そんなサイトの世界観を体験できるイベントが、11月29日に東京・丸の内で行われました。

会場では、ワインをテーマに武蔵野美術大学生がライブアートを繰り広げていたり、ピアノ&バイオリンの音色に耳を傾けながらワインを楽しむスペースがあったりと、さまざまなサムシングとワインのマリアージュを楽しめる“DOORS=ワインの世界につながるさまざまな扉”が用意されていました。

「文喫」×ワイン-色や香りの要素を因数分解して選書

最初に覗いたのは「文喫」とシャトー・メルシャンがコラボした部屋。「文喫」は“文化を喫する”をコンセプトに本と出会うための“入場料のある本屋”として有名です。

ワインと本がコラボと聞くとワインの関連本とワインの組み合わせを想像しますが、ここでは発想を逆転。ワインを味や色、香りなどの要素に因数分解し、そこからイメージした本を選書したそうです。ここに展示されていたワインと本のマリアージュセットの一部は「WINE & DOORS」でも紹介されています。

シャブリの名門ワイナリーの生産者によるミニセミナーも

  • 「シャブリ2021」と「シャブリ・プルミエ・クリュ レ・ヴァイヨン2021」をテイスティング

別の部屋では、フランスのブルゴーニュ地方でも一番北に位置するシャブリにある名門ワイナリー「ドメーヌ・ロン・デ・パキ」の生産者ルイ・ジモネ氏の特別セミナーを体験。シャブリで生産されるぶどうはシャルドネ種100%で、白ワインしか作っていないのが特徴です。ワイン上級者にはベーシックな情報かもしれませんが、実際に「シャブリ2021」と「シャブリ・プルミエ・クリュ レ・ヴァイヨン2021」の2種類を飲み比べながらルイ氏の説明を生で聞くことができるのは贅沢な気分。

  • “結婚しているのか”という質問だと勘違いするお茶目な一面も覗かせたルイ氏(そもそもマリアージュはフランス語で結婚という意味)

直接質問できる機会があったので、シャブリとのマリアージュにおすすめの料理を聞いてみたところ、「シャブリは日本食にも合って、シンプルなものはお寿司やお刺身、厚みのあるプルミエ・クリュは厚みがあるから、チーズや白身魚のクリームソースにも合いますよ」と教えてくれました。シャブリと牡蠣は有名なマリアージュの例ですが、その理由は「シャブリの地はかつて海だったと言われ、牡蠣や貝殻の石灰がごろごろと転がった土壌だから」なのだとか。なるほど、誰かに話したくなる豆知識!

珈琲×ワイン、豆の香りで赤ワインを楽しむ新体験

最後に訪れたのは「松本珈琲店 Matsurica1978」の松本章氏による、珈琲とワインの共通点に迫る体験型トークショー。JSA認定シニアソムリエであり、ブラジル認定珈琲鑑定士でもある松本氏だからこそ発見できるワインとコーヒーの共通点をレクチャーしてもらいました。

  • 「松本珈琲店 Matsurica1978」の松本章さん

ワインもコーヒーも温度や熟成で印象が変わることなどの基礎知識を得たあとに、松本氏が「ペンフォールズ ビン8 シラーズ・カベルネ 2019」と共通するだろうと、Googleアースで探しあてたという農園のコーヒー豆が登場。そもそもGoogleアースで農園を探せるスキルに驚きつつ、松本氏が直接焙煎した豆の香りを嗅ぐと、なんともいい香り。この焙煎したての豆はポリポリと食べることもできるんです。

  • コーヒー豆の香りを嗅ぎながら赤ワインを楽しむのは未知の体験

松本氏の「この中の乳酸の香りが今回のワインと共通する部分です」という言葉に「に、乳酸の香り?」と戸惑いましたが、ヨーグルトの香りを探せばいいのだとか。いや〜、奥が深い。そしてプロフェッショナルの臭覚はレベルが違う。素人には細かなことは難しかったものの、コーヒー豆の香りをかぎながらワインを飲むという初体験は、脳を刺激されて楽しい経験となりました。

  • メルシャン 代表取締役社長 長林道生さん

ワインだけを学ぼうとすると奥が深すぎて難易度が高そうに思えますが、自分が身近に感じるエンタメなどとコラボさせて楽しむとぐっと身近に感じるし、誰もが同じスタートラインから想像したり感じたりできるのも新鮮な感覚。その感覚が「WINE & DOORS」でも体験できたら最高ですね。

  • 会場では武蔵野美術大学生のライブアートも