B級品の「チンパラガス」、ネーミングで正規品と同じ価格に
新潟県の曽我農園が規格外のアスパラガスの名前の商標登録を報告したX(旧Twitter)の投稿が話題になっています。その名も「チンパラガス」。曲がったアスパラガスがチンアナゴに似ていたことから名付けたそう。
今年、曲がった規格外品アスパラを「B品」表示で売るのが忍びなくて「チンパラガス」という名前をつけて販売しましたが、正規品と同じ価格なのに皆さんからたくさん買ってもらえて大変ありがたかったです。来年も4月くらいから販売予定なのでよろしくおねがいします。あとチンパラガスで商標がとれま…
— フルーツトマトのSOGA FARM トマトの世界 (@pasmal0220)
取材に応じてくれたチンパラガスの名付け親、曽我農園代表の曽我新一(そが・しんいち)さんによると「曲がったアスパラガスは規格外になるので、どうしても安く売らざるを得なくて。なんとか高く売りたいと思い、『チンパラガス』と名付けて一つの商品にしました」とのこと。チンパラガスはネーミングの甲斐(かい)もあり、正規品と同じ価格で販売できたそうです。
実はこの曽我農園、ネーミングで話題になるのは今回が初めてではありません。同じく曽我さんが「闇落ちとまと」と名付けた規格外トマトでもバズった過去がありました。
もともと曽我農園の主力品目は、栽培時に水やりを制限することで甘くする高糖度のフルーツトマト。しかし、糖度を上げようとするあまり、水やりを制限し過ぎると、黒く変色した「尻腐れ」と呼ばれる状態になります。この状態のトマトは、見た目に反して大変甘くおいしいのが特徴で、それをネーミングとともに打ち出し、曽我農園の直売所で販売したところ、毎日売り切れになるほどの大人気商品に。
曽我さんは「規格外品はできるだけ出さないように作っています。ただ、直売所やインターネットで高価格帯で販売するフルーツトマトの場合、ストレスをかけて育てるので規格外品が出やすくなります。そういうのを捨ててしまうと利益がほとんど出ない状況になるので、付加価値をつけて販売することは大事になるかと思います」と、規格外野菜を一商品として確立させ、価値を上げる重要性に言及しました。
ネーミングで高付加価値を実現するヒケツ
もちろん曽我農園はネーミングだけで評価されている生産者ではありません。メインで栽培している越冬トマトは、日本野菜ソムリエ協会主催「全国トマト選手権」のミディアム部門で2年連続最高金賞を獲得。プロも認めるおいしい野菜を作った上で、ネーミングによる高付加価値を実現しているのです。
このように人気の高い農作物を生み出している曽我さんは、ブログや本の執筆、地元紙での10年にわたる農業コラムの連載の経験も。そのような執筆経験を通じて思いついた“ネタ”をメモする癖がついたことから、「配達や運転の時にふっと思いついたものをメモしています」と、キャッチーなネーミング作りのヒケツを教えてくれました。
また、曽我さんは漫画や映画が好きな自称“オタク”であり、その趣味もネーミングの着想の一部となっているとのこと。
曽我農園はこのほかにも、極太アスパラガスを聖剣に見立てた「エクスカリバー」、トマトの発音をネイティブの英語話者の発音に近づけた「タメィロゥ」など、ユニークな商標を多数登録しています。
曽我さんはチンパラガスの投稿に対する多くの反響を受け「消費者の皆さんには実際のアスパラガスはまっすぐなものだけではないことをリアルに知ってもらったり、農家の皆さんにはどういう風にしたら人気が出るのかを考えていただいたり、ということにつながると良いかな」と話しました。今後も曽我さんはおいしい野菜の生産に真摯(しんし)に取り組みながら、面白いネーミングで規格外野菜について考えるきっかけを生み出してくれることでしょう。