第49期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、挑戦者決定トーナメント敗者復活戦の豊島将之九段―伊藤匠七段戦が12月1日(金)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、相居飛車の力戦を114手で制した伊藤七段が挑戦者決定戦まであと1勝としました。
挑戦には4連勝が必須
棋王戦の挑戦者決定トーナメントは敗者復活戦があるのが特徴。ベスト4に残りながら敗退した3名のうち、これを勝ち抜いた1名が勝者組との挑戦者決定二番勝負に進出します。振り駒が行われた本局は先手となった豊島九段の注文で矢倉の出だしに進みました。
後手の伊藤七段が組み合いの相矢倉を選ばなかったのは現代的な作戦選択。飛車先の歩交換は許しますが、中住まいの布陣から角筋を生かした素早い反撃を含みにしています。間合いの計り合いが続いたのち豊島九段が右辺の端攻めに出て局面が動き出しました。
伊藤七段が快勝
首尾よく1筋に馬を作った豊島九段ですが、1筋にキズを抱えているため損得は微妙。むしろ実戦はここから伊藤七段の懐深い指し回しを見ることになりました。豊島九段が攻めに踏み込むしかないのを見越して馬取りに飛車を回ったのが丁寧な受けの始まりです。
先手の攻めをかわしながら手順に自玉を右玉の好形につけたのがたまらない味で、このあたりで駒得の伊藤七段の優勢がはっきりしました。終局時刻は19時45分、最後は後手玉に詰みなしと見た豊島九段が駒を投じて伊藤七段の勝利が決まりました。
局後の豊島九段が「端を仕掛けたのがかなりの悪手でした」と振り返った通り、本局は受けを基調にじわじわ優位を拡大した伊藤七段の快勝譜となりました。
水留 啓(将棋情報局)
この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄