閉店を発表してから特に最後の1週間は、「もうむちゃくちゃ盛り上がってましたね。ほぼほぼ毎日会う人もいました」とお祭り状態に。だが後編の予告映像では、客に対しても歯に衣着せぬ物言いでパワフルなりっちゃんが、涙で「撮るな、オレの泣き顔なんか、バカ野郎」と言う姿があった。

この時の涙は、常連客の持っているバッグを、以前から「いいバッグだね」と褒めていたりっちゃんに、その常連客が閉店にあたって「お疲れさま」と、同じバッグをプレゼントしてくれた場面。他にも、花束をプレゼントする常連客など、多くの人たちがりっちゃんを笑顔で送り出したいとサプライズを用意していた。

そんな光景を見て、田渕Dは「“寂しい”というのは自分本意でしかなく、クインやご夫婦が好きな人たちは“笑顔で送り出したい”という心意気が垣間見えたんです。改めて、りっちゃんと加地さんが築いてきたものは偉大だったんだな」と感じたという。

  • 厨房に立つりっちゃん(左)と夫の加地さん (C)フジテレビ

■プライベートで交流継続「全然変わってないです」

取材を終えた現在も、りっちゃんから10日に1回のペースで「何やってんだ? お前」と電話がかかってくるそうで、「りっちゃんの家の前にある中華料理屋さんで、一緒にビールを飲むのが恒例になっています」と、プライベートで交流を継続。自分たちにとって生きがいにもなっていたクインがなくなっても、「全然変わってないですね」と、パワーは健在だという。

クインの跡地には、常連客がシャンソンバーを12月9日に開店予定。そのイズムを受け継ぎ、クインゆかりのものが飾られるそうで、「オープンの日はりっちゃんと一緒に行くことになっています」とのことだ。

閉店にあたり店の品々を常連客に譲渡しているが、田渕Dが託されたのは、料理を載せる銀皿3枚と、りっちゃんがビール瓶を叩いて音を奏でていた栓抜き。さらに、料理のレシピも譲り受けたそうで、「カイブツ(ベーコンエッグ)もドライカレーもハンバーグも、かなり再現できていると思うのですが、何かが違うんですよね」と、忠実に作っても届かないものがあるようだ。

客の1人として飲みながら撮影し、りっちゃんや他の客の信頼を得て取材するスタイルで、月2回のペースで朝まで通っていたため、「飲み代がめちゃくちゃかかりました(笑)」という田渕D。取材に行くというより、もはや飲みに行くという感覚だったため、「全部は取材費で落ちないと思います。これから、自分の会社の経理と交渉です(笑)」と苦笑いした。

  • りっちゃんから譲り受けた栓抜きを持つ田渕慶ディレクター