また、「史実は最大限守る」ことをルールとして決めていたと語る古沢氏。

「家康の解釈を今までとなるべく違う解釈にしたいと思っていたから、それで史実も守らないとなると何でもありになってしまうので、史実として合意が取れていることに関しては最大限守るという方針にしました」

そして、「通説や逸話は必ずしも守らず、なるべく新しい解釈をした」と言い、史実の範囲内で物語を膨らませていったという。

「通説は昔からなんとなく言われているという解釈で、逸話はほとんど後世の創作なので必ずしも守らず、なるべく新しい解釈をするけれど、いつどこで誰が何をしたかという史実は最大限守ることに。だから考証の先生方にもものすごく細かく見てもらってできる限り守ったんです。お客さんに通じてない部分もあるかもしれないけど、僕の中ではめちゃくちゃ史実を守ったドラマだと思っています」

2年間の執筆において一番苦労したのは、まさに史実を守ることだったそうで、「徳川家康なのでめちゃくちゃ史料が残っていて、この数年でまた学説の進化があり、勉強しなきゃいけないことが想像していた以上に多くて。撮影に追いつかれるし放送も始まっているしという時が一番つらかったです」と吐露した。

■築山殿事件も史実を踏まえた上で新解釈に

家康の正室・瀬名/築山殿(有村架純)と嫡男・信康(細田佳央太)が命を落とした“築山殿事件”の描き方も新しかった。武田と内通した悪女として描かれることの多かった瀬名を、そうではなく、瀬名が戦なき世を作ろうとした結果の悲劇として描いた。

古沢氏は「このドラマでは瀬名がすごく重要な人物で、家康を大きく変え、彼が成し遂げなければならない宿命を残していくキャラクターにしたかったので、そのために築山殿事件がどうあるべきか考えて作りました。戦のない時代を作るという夢を誰が家康に一番強烈に託していくかというと、その人は家康にとって最愛の人でないといけないと思ったので」と説明。

そして、この築山殿事件も史実を踏まえた上で、通説や逸話の部分の解釈を変えて描いたという。

「瀬名と信康が武田と通じて新しい軍事同盟を作ろうとして、それが家康にバレて結果的に命を残すというのが史実で、ドラマでも起こっている出来事はそのまんまなんです。ただ何を思ってそうしたかとか、何を目指してそうしたかという解釈を全部変えています」

■「歴史っていろんな解釈ができるから面白いというのを提示したかった」

続けて、「従来だと瀬名が悪女だったからだとか、家康と仲が悪かったからだという解釈にしているけれど、人間を一面的に解釈する歴史観が僕は嫌で、どんな人だったかなんて僕らにはわからない、歴史っていろんな解釈ができるから面白いというのを提示したかったので、反論もたくさんあるだろうということも覚悟の上でああいう風にしました」と語った。

新たな解釈を提案することで歴史の面白さも伝えたかったという古沢氏。

「こういう解釈が成り立つのか成り立たないのかという議論が沸騰してくれたらそれが一番僕が望んでいたことで、ドラマも盛り上がるし歴史の解釈の面白さみたいなことで歴史好きの人が増えるんじゃないかなとも思いました」と思いを明かした。