テレビ東京系で放送中のドラマ『きのう何食べた? season2』(毎週金曜24:12~)。よしながふみ氏による同名コミックの実写化作である同作は、2LDKのマンションアパートで同居する、料理上手で几帳面・倹約家の弁護士・筧史朗、通称・シロさん(西島秀俊)と、恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二、通称・ケンジ(内野聖陽)の毎日の食卓を通して浮かび上がる、男2人暮らしの人生の機微を描く。2019年にseason1が放送され人気を博して以来、SPドラマ、2021年の映画化を経て待望のseason2に。第1話再生数は同局の歴代1位を記録するなど、ますます勢いを増している。

今回は、シロさんとケンジのゲイ仲間である航(通称:ジルベール)を演じる磯村勇斗にインタビュー。恋人の大策(山本耕史)にツンツンでわがまま放題だが、視聴者からは大人気のジルベールの魅力について、話を聞いた。

  • 磯村勇斗

    磯村勇斗 撮影:泉山美代子

■season1、SPドラマ、映画に続き『きのう何食べた?』に出演する磯村勇斗

――season1、スペシャルドラマ、そして劇場版を経て作品の変化、航の変化などはありましたか?

season1からずっと、温かく進んでいく日常の中に変化があって……というベースは変わりません。でも今回、けっこういろんなイベントごとがあったので、外でのシーンも結構ありました。そういった意味では、盛りだくさんだったなと思います。航に関しては、変わらず小悪魔感があります(笑)。航も少し大人になってきているのかな、なんて思うところもあれば、やっぱり子供だなと思うところもあって、自分自身も彼に振り回されてるような感覚でした。

映画版の撮影の時から、現場でも「season2をやれたらいいね」みたいな話は出ていたし、きっとどこかのタイミングでまた続いていくんだろうなと思っていたので、驚きはなかったですけど、「またホームに戻って来られる」「皆さんと一緒にお芝居ができる」というのが、楽しみでした。

――第三話のハロウィンシーンはどのように撮影されたんですか?

磯村勇斗

ハロウィンシーンは撮影の後半でしたが、後半でよかったというくらいハードでした(笑)。最初はいつもと変わらず、筧さんのお家で集まるシーンだったので、久々にお正月に親戚同士で集まってきたような感覚といいますか。離れているけど、家族のような時間が現場に流れていました。僕は、コスプレの動きをどうするかをひたすら悩んでたんです。そうしたら、西島さんが「そんな悩まなくてもいい話だぞ」と(笑)。でも、内野さんは「かわいいよ」と言ってくださってました。

最初のシーズンの時は、内野さんや山本さんのアドバイスを受けて付いて行くのに必死だったんですけど、今回は自分もディスカッションに参加したり、提案したりもさせてもらえたので、距離も縮まったのかなと思いますし、先輩たちが受け入れてくださったので、より絆が深まった現場でした。

――改めて、共演する方々に「素敵だな」と感じた部分はありましたか?

西島さんも内野さんも山本さんも本当に尊敬する役者の先輩方で、いつも素敵なんですが、中でも今回驚いたのは、航と筧さん2人のシーンがあったこと。現場でも西島さんと「僕たち2人で芝居するの初めてですよね」「そうだね。不思議な感じだよね」とお話ししました。お互いどう踏み込んでいくか、みたいな感覚はあったんですが、西島さんが自然体で筧さんを演じられているので、自分も航として自然に乗っかっていきたいなと思っていました。空気で引っ張ってくださると言うのか、すごく助けていただきましたし、楽しかったです。『何食べ』の山本さんと内野さんは動きのある芝居で、西島さんは静の芝居なので、新鮮な撮影でした。

――撮影ではついアドリブが出るようなこともあるんでしょうか?

ありました。たとえば山本さんとのシーンでは、アドリブは“大ちゃん”から出てくるものなんだと思っていたので、楽しみでしたし、毎回どんな技が出てくるのか、アンテナを張っていました。航としてはとにかくわがままにやるのが大事だと心がけているので、随所に入れていけたらと考えていました。

  • 磯村勇斗

――食べるシーンもたくさんあると思いますが、そういう時はどのようなことを心がけているんですか?

航は、筧さんの作る料理に対して、心では「めちゃくちゃおいしい」と思ってるのに、その裏返しでひどいことを言うんです。「太る」とか「油っぽい」とか「こんなに食べたらダメじゃない」みたいな感じで、棘はあるんですけど、実は喜びの表現というか。裏腹の感情を出す温度感が、毎回難しいなと思いながら演じています。おいしそうな表情はしたいんですけど、それをむすっとしたような顔で表現するみたいな……非常に難しいですし、心とは違う顔の表情をしなければいけないので、いつも悩んでます(笑)。今回も「こんなにひどいこと言ってたっけ?」と思うぐらい言うんですけど、筧さんが理解して流してくれている感じが、すごくいいなと思います。

――山本耕史さんとの掛け合いもいつも楽しいですけど、そちらの中でなにかエピソードがあれば教えていただきたいです。

山本さんとは、いつもその場その場でお互いいろいろ出し合ってお芝居をしている感じなので、毎回何かが違う。今回は航の家のシーンで、大好物のわさビーフを使って大ちゃんを困らせることをたくさんしたりして、2人ともハイになって楽しんでました。1日ずっと家の撮影があったりすると、同じような掛け合いが朝から夜まであるわけで、もうおかしくなってました(笑)。今思えば、アスリートみたいです。運動しているかのように芝居が進んでいくので、なかなかそういう役とも出会えないし、本当に面白いなあと思います。

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■「この先の航」を演じてみたい気持ちは?

――周りの人を困らせてしまうようなキャラクターでもある航が人気な理由について、改めて磯村さんどのように感じていますか?

お仕事の場でもプライベートでも、「ジルベールが好きです」と言われることは、すごく多いんですよね。きっとみんなが日常的に言いづらいこととか、同性愛者の話でもあるので「思ってるんだけど隠してしまっている」という本音の部分を、航がカラッと言うことが気持ち良くて、愛される部分なのかなと思います。わがままな部分も「面倒を見てあげたい」と思わせるのかなと思いつつも、絶対に大変だろうなと思っています(笑)

ただわがままなんですけど、演じれば演じるほど、愛おしくなってくるというか、航の本音が見えてきたというのか。ツンツンしているところも、season2になってようやくかわいく見えてきました(笑)。最初はもう、「とんでもない猛獣だな」という印象でしたから。でも最初から「一途な奴だな」とは思っていましたけどね。航を演じる時は、とにかくエネルギーが必要なんです。非常に緩急のある役柄ですし、子供っぽいところもあったりするんですが、30の大人が子供っぽさを出すのは、けっこうエネルギーがいるんですよ(笑)。自分にガソリンを入れておいて臨むことを心がけています。

――原作もかなり進んでいますが、「この先の航」を演じてみたい気持ちもありますか?

もちろん今後の航を演じる機会があればうれしいです。ただ原作の進みと実写の進みも違うので、今の段階ではまだ想像できていないのが率直な気持ちです。ひとまずは、「season2」が最後まできちんと皆さんに届くことが大切なのかなと思っています。

■磯村勇斗
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。2015年、『仮面ライダーゴースト』にレギュラー出演。2017年には連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの相手役を務めて注目を集めた。近年の主な出演作に、映画『東京リベンジャーズ』(21年・23年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、『PLAN 75』『ビリーバーズ』(22年)、『渇水』『波紋』『月』『正欲』(23年)、ドラマ『今日から俺は!!』(18年〜)、『恋する母たち』(20年)、Netflix作品『今際の国のアリス シーズン2』(22年)など。公開待機作に映画『若き見知らぬ者たち』(2024年公開)がある。