連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、趣里演じるヒロイン花田鈴子の後輩・秋山美月役で熱い視線を浴びている伊原六花。朝ドラは『なつぞら』(19)に続いて2度目の出演となったが、キレキレのダンスパフォーマンスを魅せ、舞台で輝く秋山役は、幼少期からミュージカルに親しみ、スターを夢見て精進してきた伊原自身の情熱が相まって、観る者の心を惹きつける。

  • 伊原六花 撮影:加藤千雅

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」など数々の名曲や多数の映画に出演した戦後の大スター・笠置シヅ子(かさぎ・しづこ)をモデルにした『ブギウギ』。趣里演じる福来スズ子(芸名)こと花田鈴子が、下町の小さな銭湯の看板娘から“ブギの女王”と呼ばれる大スターになるまでの波乱万丈の人生を描いていく。

スズ子の後輩である秋山はタップダンスの名手で、スズ子と共に演出家の松永大星(新納慎也)にスカウトされ、花咲歌劇団から梅丸楽劇団に移籍してきた。非常に理想が高く、花咲時代には、たとえ相手が先輩でも物怖じせず意見する性格から、人と衝突することも多かった秋山。しかしスズ子と2人で上京したことで、共に切磋琢磨しあい、恋や仕事の相談もしあえるような良き友情を築いていくことに。

■猛練習したタップダンスシーンも大きな見どころに

『ブギウギ』では、バレリーナ志望だった主演の趣里を筆頭に、脇のキャスト陣もプロのダンサーたちや、ダンスや歌に素養のある俳優陣が集められた。もちろん伊原もその1人 である。

笠置が、スズ子の所属する「梅丸少女歌劇団(USK)」のモデルであるOSK日本歌劇団の前身である劇団に所属していたことで、本作にはOSKの現役女優が多数出演している。秋山が憧れる男役のスター・橘アオイ役を演じる翼和希も、OSKの男役トップスターだが、ドラマ初出演にして大いに爪痕を残したことは言うまでもない。

また、スズ子の目標であった大和礼子役の蒼井優も、デビュー作がミュージカル『アニー』(99)であり、映画『花とアリス』(04)ではクラシックバレエを、『フラガール』(06)では見事なフラを披露していたが、伊原も幼少期からバレエを習ったり「子どもミュージカル」に参加したり、そして登美丘高校ダンス部キャプテン時代には“バブリーダンス”で脚光を浴びるなど、歌とダンスを鍛錬してきた。

さらに演技力にも磨きをかけ、『明治東亰恋伽』(19)では連続ドラマと映画にて初主演を務めるなど、順風満帆にキャリアを重ねてきている。

そんな伊原にとって、2023年は飛躍の年となりそうだ。特にこの秋は、現在放送中の広瀬アリス主演のTBS系火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』(毎週火曜22:00~)で、ゴーイングマイウェイの小悪魔系女子・桂山キイナ役で独自の存在感を放ち、10月20日に公開された2本目となる主演映画『リゾートバイト』では、内気で人と馴染めない主人公・内田桜役という逆ふりの役どころを演じている。そして『ブギウギ』の秋山役と、その活躍ぶりには目を見張る。

特に出色だと感じたのが、華麗にタップを踏むシーンだ。伊原による公式コメントを見ると、『ブギウギ』2度目の朝ドラ出演を喜びつつ「いつかやりたいと思っていたタップダンスをする役でとても楽しみでした。でも、タップはとても難しくてびっくり!クランクインする約4か月前からRONxIIさんという指導の先生がマンツーマンで教えてくださり、何とか乗り越えられました。難しい技にも挑戦して、本当に私が踏んでいるので 見ていただけたらと思います」と、かなりの特訓を積み重ねて、秋山役に挑んだようだ。

また、彼女のタップだけではなく、劇団のメンバーたちが大勢で胸熱のパフォーマンスを披露する“ショータイム”も、大いに見応えがある。もともと歌やダンスにおいてポテンシャルの高いキャストたちによるものだから、完成度が高いのは言うまでもないが、演技ではなくリアルに築いたチームワークや熱意がそのまま反映されていることは、伊原のコメントからも伝わってくる。

「ダンスの練習や、OSKの皆さんからの所作や先輩後輩のルールを教えてもらってみんなで共有したことで、他の作品では味わえない一体感やチーム感がクランクインする前からありました。もっとこうやっていこうという話し合いや、歌劇シーンの撮影時の声かけなどもいい雰囲気でできたので、本当にいいメンバーが集まったと思います。このメンバーだからこそ、支えあって乗り切れたと思います」と語る伊原。きっと共演者たちから、多くのものを受け取ったに違いない。

■恋や仕事に悩むスズ子と秋山が下す決断とは?

11月13日からの第7週「義理と恋とワテ」は、スズ子や秋山の恋模様が描かれつつ、自分たちが本当にやりたいことを見極めるという重要な週となっている。

東京に来て1年、すっかり劇団の人気者になったスズ子と秋山。そんな中、秋山は付き合っているダンサーの中山(小栗基裕)からプロポーズされ、スズ子もおでこにキスをされた松永にドキドキしつつ、なんと彼からライバル会社である日宝への移籍の話をもちかけられる。

いわゆる初恋、いや、スズ子にいたっては“ほのかな恋”止まりではあるが、うぶな2人が心をときめかせたり、思い悩んだりする姿がなんとも愛おしい。

伊原いわく、スズ子と秋山は「先輩と後輩という関係でもあり、同志でもあります」というが、いろいろな経験をして大人の階段を上がってきた2人が、しっかりと固い絆で結ばれていることが、その表情からも読み取れる。果たして2人は、どんな決断をするのか? 今後の展開に注目したい。

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