現在放送中のNHKドラマ10『大奥 Season2』(毎週火曜22:00~)の「幕末編」に徳川家定役で出演している元宝塚歌劇団月組トップ娘役の愛希れいか。2018年に退団後、舞台を中心に活躍していた愛希が「すごく大きなチャンス」と緊張感を持って臨んだ本作への思いを語った。

  • 愛希れいか

    愛希れいか

■「私に将軍役、しかも家定という非常に難解な役が務まるのか」

男女が逆転した江戸時代を描いたよしながふみの人気漫画をドラマ化した本作。シーズン2では、第8代将軍徳川吉宗(冨永愛)の死から20年後の世界で、彼女の遺志を継いだ医師たちが、謎の疫病「赤面疱瘡」に挑む姿を描いた「医療編」と、開国、攘夷、大政奉還、江戸城無血開城と続く混乱の大奥を描く「幕末編」が描かれる。

シーズン1は、ストーリーテリングはもちろん、俳優たちの熱演も相まって大きな反響を呼んだ。愛希も「同じ事務所の堀田真由ちゃん(徳川家光役)や仲里依紗さん(徳川綱吉役)が演じられているのは拝見していましたし、原作も全部読ませていただきました」と意識の中に強くある作品だったという。

だからこそ、「幕末編」のなかで重要な役割を担う徳川家定役のオファーには「うれしかったのはもちろんなのですが、私に将軍役、しかも家定という非常に難解な役が務まるのかという不安の方が大きかったです」と正直な胸の内を明かす。

家定という将軍は歴史を紐解いても、評価が大きく分かれる人物。しかもよしながふみの原作で描かれる家定には壮絶な過去が描かれている。愛希は「一番はよしなが先生の原作を参考にしました」と役へのアプローチ方法を述べると「普段舞台をやっていると、本番までに稽古の時間があるので、いろいろ試行錯誤できるのですが、映像は瞬発力が試される。いろいろと考え過ぎると悩んでしまうので、相手の方と現場に入って生まれるものを大切にしようと臨みました」とあえて作り込まず、フラットな状態で現場に入ったという。

物語のなかで大きく対峙するのが、胤篤・天璋院だ。演じるのは福士蒼汰。「今回初めましてだったのですが、すごく気さくで明るい方で、あまり気負わずお芝居させていただきました。思っていることもしっかりと提示していただけたので、お話をしながらシーンを作っていくことができました」と充実した撮影だったことを明かす。

■時代劇出演で実感「一つ一つの所作が日本人は素敵だなと」

愛希と言えば、宝塚歌劇団では月組トップ娘役として活躍。2018年に退団後は、最初の舞台で、宝塚時代の退団公演で演じた『エリザベート』を帝国劇場で演じるなど、舞台を中心に活動を行っていたが、2021年放送の大河ドラマ『青天を衝け』で福士誠治演じる井上馨の妻・武子役で初の映像作品に出演した。

愛希は「映像のお芝居に今までの経験が役に立っているのかというのは正直分からないんです。表情、例えば瞬き一つとか目の動き一つでどれだけ表現できているのかというのは、演じていてあまり実感がないんです。とにかく自分が思うままにやってみたのですが……」と苦笑い。それでも、しっかりと訓練したことは自信になっているようで「どんなに大きな声を出しても、声が枯れないとか。声帯の正しい使い方はしっかりと学んできたので、活きていると思います」と語っていた。

大河ドラマの現場は大きな刺激を受けた。「やっぱり空気感がすごいなと。セットも細部までこだわっていて、消えもの一つまで本当に豪華。見えないだろうなというところまで、手がかかっているんです。“良いものを届けたい”というこだわりが伝わってきました」

また、『青天を衝け』、『大奥』と時代劇に出演したことで学びも多かったという。愛希は「日本文化というのは、知っているようで知らないことが多かったなという気づきはありました」と述べると「宝塚でも日本舞踊の稽古があり、お辞儀の大切さなどは教わったのですが、一つ一つの所作がやっぱり日本人は素敵だなと。お箸の持ち方一つにも相手への敬意があったり、意味があるんですよね。すごく勉強になりました」としみじみ語った。