――第1話の舞台はテレビ局で、そこでの悪に立ち向かう話でした。昨今はSNSなどで「テレビは身内に甘い」など揶揄(やゆ)されていますが、一企業として自らの業界にメスを入れるという作品づくりについて、結構な勇気だと感じたのですが。

こういう連ドラの弁護士ものですと、だいたい悪い会社、不正を働いている企業が敵となるじゃないですか。その中でテレビ局の人間が悪いという設定を描くことはあまりない。でもそれは、フェアではないのではないか。テレビ局にだってパワハラをする人がいてもおかしくないし、それをしっかりとやってからやっと別の業種や会社を題材にできる。当初から第1話はテレビ局をやりたいと思ってました。世間の企業と同じく、我々も背筋を正していかなければという気持ちもあったと思います。

――それが新しいなと思いました。

■「月9とか忘れちゃった方がいいんじゃないか」

――金城さんのドラマづくりの原体験を知りたいのですが。

うちは両親がドラマ好きで、父が多忙で見られず撮りためたドラマを週末に家族そろって見るという家庭でした。家族での楽しい時間=ドラマという原風景があり、そんなふうに視聴者の皆さんにも見てもらえたら、という一個人としての視聴者体験がまずあります。好きなドラマは三谷幸喜さんの作品で、他には山下智久さんの『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』や『プロポーズ大作戦』、ほか『救命病棟24時』や『Dr.コトー診療所』などの医療ものも好きでした。

――そうしてフジテレビに入社し、月9で朝ドラのような『監察医 朝顔』を手がけられました。非常に革命的というかパプリックイメージの月9ブランドを変えるかのような肝の据わったドラマづくりをするなと感じたのですが、そこに関しては?

正直、弊社の視聴率が芳しくなかった時期なので、同じようなことをやっても仕方がないと思ったのが一つ。それと、私自身が月9が華々しかった頃に入社していないので(2012年入社)、そこまで「月9」というイメージに個人的執着がなかったのかもしれないということが一つです。違うテイストを持ち込んだほうがいいのではないかという気持ちはありました。

――なるほど! 若い世代、つまり「月9世代」じゃなかったからこそできたと。

かもしれないですね。先輩から伝え聞くようなエピソードを経験しないまま、予算削減、勤務時間などを言われて社内で育った世代です。語弊があるかもしれませんが、ある意味、「月9とか忘れちゃった方がいいんじゃないか」という気持ちでした。

――それがシーズン2も作られるほどのヒットとなりました。

当時はラブコメ(2015年10月期『5→9~私に恋したお坊さん』)を一度作っていたので違うものを、という気持ちもあったと思います。それにその時々に興味があることじゃないと頑張れないかもしれないですね。今の私が興味があって面白いと思うことを伝えたい、そういった思いでドラマづくりをしています。

  • 上野樹里

    『監察医 朝顔』主演の上野樹里

■スマホ視聴を意識したドラマづくりに変化

――最近は見逃し配信なども評価されるようになりましたが、ドラマづくりにどんな影響や変化を感じますか?

難しいですが、例えば見逃し配信をスマホやタブレットで私などは見るんです。ですが年配の先輩方は画作りのプロですから、大きな画面でルーズ(引いた画)など美しく、また画変わりするよう工夫されるんですね。でもスマホで見ると広い画の3ショットだと誰が誰だか分からない。小さすぎるんです。だから寄り(アップ)を撮らないと、など相談したりしていますね。

――なるほど。昨今、テレビでアップの画が多いと感じてたのはスマホ対策でしたか。では、最後に視聴者にメッセージをお願いします。

ムロさん演じる蔵前がどんどん平手さん演じる杏ちゃんにいろんなことを教えていき、赤ちゃんが社会に出ていくように一つひとつできることが増えていったり、かえってまっすぐな杏ちゃんに忖度おじさんの蔵前がハッとさせられることもあったり。毎週事件が変わっていきますので、それにまつわるバディのやり取りを楽しみにしてくだされば幸いです。ぜひ今後もご覧ください。

  • ムロツヨシと平手友梨奈

    (C)フジテレビ

●金城綾香
1987年生まれ、兵庫県出身。12年フジテレビジョンに入社し、『5→9~私に恋したお坊さん~』『グッド・ドクター』『犬神家の一族』『監察医 朝顔』『SUPER RICH』『元彼の遺言状』『PICU 小児集中治療室』などを手がける。現在放送中の金9ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』をプロデュース。