「第8回 鉄道技術展」(幕張メッセで11月10日まで開催)に東京メトロとグループ会社が出展。新たな鉄道製品とシステムを紹介した。

  • 東京メトロのブース。各路線のラインカラーをあしらっている

東京メトロとそのグループ会社は、低コストで導入できる新技術の開発に力を入れている。今回の鉄道技術展では、列車混雑計測システムやトンネル中柱として地下駅を支える新型鋼管柱、鉄道技術区員向け保守管理システムなどが展示された。

■1台のカメラで1編成の混雑率を測定

列車混雑計測システムは、駅ホームの端に1台設置してあるデプスカメラで、駅を出発する列車内の混雑を撮影した後、深度情報を取得。AIによって分析・解析し、列車内の混雑を号車ごとに算出できるようにした。

ドイツ製のデプスカメラ1台と、ホーム上に設置したエッジサーバで情報を取得し、奥行きの情報を持った画像をテキストデータにして送信。クラウドサーバでAIにより分析・解析する。エッジサーバは小さなものである。

  • 列車混雑計測システムの説明

  • デプスカメラ

  • エッジサーバ(小)

  • エッジサーバ(大)

  • 乗客は車内の混雑を4段階でチェックできる

  • 混雑データを数値でも把握できる

この技術を活用することで、スマートフォンのアプリに号車ごとのリアルタイム混雑状況を配信できる。アプリでは4段階で情報が提供されているものの、東京メトロ側では1%単位で混雑率が見えるようになっている。従来は人力で測定していた混雑率と同等以上の信頼性で、営業時間中の全時間帯での計測が可能になっている。この方法により、東京メトロに乗り入れている他社線車両の情報も取得できる。

■職人不足対応で新型の鋼管を開発

地下鉄用箱型トンネルをつくるために、これまで鋳鋼製朝顔形支承板を使用してきた。しかし、鋳物をつくるための職人や工場が減っているため、もっとシンプルな方法でつくる必要が出てきた。

今後の大型プロジェクト等で大量の鋼管柱が必要になると、鋳鋼製の支承板に準じた品質のものを調達することが困難になると想定される。そのため、鋼板を積み重ねた支承板の開発実験が行われ、従来の支承板と同等の安全性を確認できた。

  • 鋼製積層型支承板(左)と従来の鋳鋼製朝顔形支承板(右)

  • 表側から見ると…

  • 積層型(左)と朝顔形(右)の違い

この支承板はJIS規格鋼板を切断加工するだけで製作できることから、汎用性や調達性に優れているとのこと。鋳物だと6カ月かかっていたものが、鋼製積層型ではその半分の3カ月よりも早くつくることができる。しかも職人の手によるものよりも安くなるという。

■手作業の保守管理を電子化・自動化

「鉄道電気設備保守管理システム(REFMa)」

鉄道関連の電気設備における検査・修繕計画の策定業務や検査結果の登録業務は、いままで紙を中心に手作業で管理していた。これを電子化・自動化する「鉄道電気設備保守管理システム(REFMa)」を構築。このシステムを中心に、検査台帳や保守計画、実績管理の標準化・自動化・効率化を実現することが可能になった。

台帳ができれば年間計画ができ、それにより月間計画もできる。検査実績も承認・管理できるという。ノートパソコンやタブレットPCでも使用可能。このシステムは、東京メトロが長年培ってきたノウハウを集約した、鉄道電気設備の保守を支えるプラットフォームである。通常のシステムを導入するよりも、このシステムを導入するほうが本稼働開始までの時間が大幅に短くなる。