伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。10月25日(水)には第5ブロックの斎藤慎太郎八段-服部慎一郎六段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、相矢倉の熱戦を132手で制した斎藤八段が予選突破まであと2勝としました。

関西の実力者が激突

両者の対戦成績は1勝1敗。3度目の対戦にあたる本局は先手となった服部六段の注文で矢倉に進みます。後手の斎藤八段が急戦の動きを見せたところで服部六段は早繰り銀の要領で先攻しました。

首尾よく飛車先の歩交換に成功した服部六段は手早く右辺の攻撃態勢を整えます。他方で盤上中央の歩を一切突いていないのは後手に仕掛けの争点を与えない意味があり、これを見た後手の斎藤八段も妥協したことで盤上は第二次駒組みに進展しました。

攻める服部六段に落とし穴

駒組みが頂点に達したところで服部六段が仕掛けます。駒台に載る4枚の歩を生かして端攻めに出たのが矢倉崩しの急所。手順に後手の金をつり出したのがその副産物で、この金めがけて控えの桂を打ったのが服部六段の充実を示す好手でした。

服部六段優勢のまま局面は最終盤へ。斎藤八段が先手玉そばの銀を取って下駄を預けた局面がポイントとなりました。持ち時間を45分残す服部六段はこの手が自玉への詰めろと踏んで早々に受けに回りますが、厳密には詰みがないことを斎藤八段は悟っていました。

華麗な詰みで斎藤八段逆転

服部六段の災難は続きます。連続で王手をかけたのち自陣に手を戻したのは後手玉に詰みがないためやむを得ない選択ながら、ここで自玉に詰み筋が生じていました。一分将棋の秒読みのなか、詰将棋の名手・斎藤八段は一瞬のチャンスを逃しませんでした。

終局時刻は19時36分、最後は華麗な飛車捨ての王手で先手玉を即詰みに討ち取った斎藤八段が逆転勝利。感想戦で自玉の不詰の筋を知った服部六段は天を仰ぎました。ブロックベスト4に進出した斎藤八段は次局で折田翔吾五段-石川優太五段戦の勝者と対戦します。

  • 斎藤八段は第62期以来となる挑戦者決定リーグ入りを目指す(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    斎藤八段は第62期以来となる挑戦者決定リーグ入りを目指す(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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