東京駅一番街地下1階にある「東京を代表するラーメンの名店が集まる」ゾーン「東京ラーメンストリート」。2009年6月にオープンし、現在ではジャンルの異なる8店舗が営業している。「一週間通っても飽きない」がコンセプトで、どの店も常に行列が絶えず新幹線の利用者だけでなく「ラーメンストリート目当て」の客も多い。
そんな東京ラーメンストリートは来年15周年を迎えるが、新たな2店舗が10月25日に開業した。
ラーメンデータベース1位「東京味噌ラーメン」の名店
1店舗目は東京味噌ラーメン「味噌麺処 花道庵」。東京都の野方本店と北参道店の2店舗を展開する味噌ラーメンの名店だ。全国のラーメン屋クチコミサイト「ラーメンデータベース」味噌ラーメン部門でこれまで3度も1位を獲得、さらに東京ラーメン・オブ・ザ・イヤーでは10年連続で掲載されている。
店主の康氏は実は「もともとそんなに味噌ラーメンが好きじゃなかった」そうだが、北海道出身の父の影響で出会った「さっぽろ純連」の味に感動し、「東京にしかない、自分にしか作れないものを作りたい」と味噌ラーメン作りに取り組み始めた。
初めてお店を出したのは、「つけ麺ブーム」だった2008年。「味噌ラーメンで勝負する」と話す氏に周囲は反対したというが、それでも貫き通した味には自信をのぞかせる。
そのビジュアルはよく目にする「味噌ラーメン」とは異なっている。チャーシューとは別に、ニンニク醤油で煮込んだ豚バラ肉がのっている。これは限定ラーメンやイベント時にのみ提供してたメニュー。ラーメンストリートでは「東京駅限定メニュー」として提供される。
口にしてまず感じるのは「味噌ラーメンにしてはかなり優しい味だな」ということ。スープは豚肉の甘い風味を感じるが、味噌がまろやかで全くきつさがない。
これは氏のこだわりでもあり、「スーパーで買える味噌」を独自のブレンドで使用していることからだそうで、大げさに言うと味噌汁のようなほっとするような優しさとコクがある口当たりだ。
特徴的だったのは麺。札幌ラーメンの特徴でもある黄色い卵麺はおなじみだが食感は柔らかくふわっとまるでうどんのようにモチモチしている。幼稚園に通う年齢の子から高齢者の方まで誰でも食べやすく万人ウケする麺も人気店の秘訣なのだ。
東京駅限定メニューのニンニク醤油で煮込んだ豚バラ肉は、「しょうが焼きのしょうが抜き」と表現するのが恐らく最も近い。やさしい甘辛さのある濃厚な味わいは、ラーメンには珍しいが食べているうちにその虜になる。
さらにもやしは水っぽくならないようにラードで炒めており、香ばしさもありつつシャキシャキ感も味わえる。
卓上にはニンニクと一味唐辛子がある。氏は「これから新幹線に乗る方のことを考えると不向きかもしれないけれど、トッピングすると中毒性のあるおいしさになるのでぜひ加えてみてほしい」と語る。
途中加えてみると、風味が濃厚に増す。一度この味を知ってしまうと、たとえその後の予定が気になってしまったとしても、せっかく訪れたのならニンニクはマストで入れるべきだなと確信した。酢はかなりさっぱりと爽やかになるので最後の方に入れると気分も変わってよい。
さらにおすすめなのがチンピラ玉子。1日40~50個出るほど人気のトッピングで、ラーメンに加えて味変しても良いし、ビールのツマミとして楽しむ常連客も多いのだそう。
ミシュランビブグルマン掲載店店主が手掛ける「進化系家系ラーメン」
2店舗目は進化系家系ラーメン「家系ラーメン 革新家 TOKYO」。
店主は東京ラーメンストリート内にも店舗を構える人気店「ソラノイロ」を手掛け、三度もミシュランガイド東京・ビブグルマンに掲載された宮崎千尋氏。
宮崎氏はかねてより「日本の中心である東京駅で家系ラーメンを提供したい」と考えていたのだそう。ラーメン好きでこれまで6,000軒のラーメンを食べ歩いたというが、そのうち家系ラーメンも100軒ほど食べ歩いた宮崎氏。中でも蒲田にある「らーめん飛粋」に弟子入り、独自の家系ラーメンの開発までたどりついた。
「ソラノイロ」同様に、女性1人でも気軽に食べやすい家系ラーメンを目指し、各食材にはかなりこだわっている。
油は親鶏油と若鶏油をブレンド。親鶏油を使用することでコクと旨味が出てしっかりとした風味になるという。たしかにしっかりとした塩味は感じつつも、ギトギトした感じは皆無で食べやすい。
さらに海苔は「青まぜ海苔」というあおさ入りの高級海苔を使用、そして家系では葉物はほうれん草が一般的なところ、シャキシャキとした甘味と苦味のバランスがある小松菜の江戸菜を使用している。
麺は家系としては珍しい国産小麦(春よ恋・ゆめちから)を100%使用。麺自体にもかなり塩味がある。個人的には小麦の美味しさもさることながら、麺の長さが短いのでスープが飛び散らずに食べやすいと感じた。
最も特徴的なのは3種類のチャーシュー。国産豚の吊るし焼き焼豚モモ・煮豚バラ・低温調理ロース肉が贅沢に使用されている。特に美味しかったのは低温調理ロース肉で、まるで生ハムかのような食感が家系ラーメンのイメージを覆してくれる。
卓上には様々な調味料が用意されているが、一番のウリは「ニンニク味噌」。少しずつラーメンに入れることで味わいはさらに複雑さを増す。ライスを注文した人なら直接乗せて食べても美味しいのだそう。
酢はリンゴ酢で、なぜか「スティーブジョブ酢」と名づけられており、途中で味変に使用することで一気にさっぱりとした食べやすさが増す。
内装には浮世絵をイメージした家系ラーメンに関連したイラストが華やかに彩られており、インバウンド客にも喜ばれそうだし、日本人の私たちもなんだかテンションがあがる。
東京ラーメンストリートに新たにオープンする2店舗はそれぞれ「味噌ラーメン」「家系ラーメン」の固定概念を覆す驚きと美味しさがあった。ラーメン好きな方はもちろん、「味噌はちょっと……」「家系は苦手」という方でもぜひ訪れてみてほしい。