本記事では固定観念/固定概念の意味や、どんな考えを指すのかの具体例の他、使い方と例文、類語、英語表現を紹介。固定観念のメリット/デメリットと、固定概念にとらわれない方法もまとめました。

  • 固定観念・固定概念とは

    「固定観念」と「固定概念」の意味や違い、具体例に、固定観念をなくすための方法などを紹介します

「固定観念」と「固定概念」の違いとは

「固定『観念』」と「固定『概念』」は非常に似ている言葉ですが、それぞれどういった意味があり、どんな違いがあるのでしょうか。「観念」「概念」の意味と併せて解説します。

「固定観念」と「観念」の意味

そもそもここで言う「観念(かんねん)」とは、ある物事に対する考えやイメージという意味です。

例えば「犬」と聞いてあなたはどう思いますか。「かわいい」「ほえてうるさい」「苦手だ」のほか、人によっては「チワワが好き」など犬種をイメージすることもあるでしょう。

このように人々が心中に思い浮かべるイメージや意見を「観念」と言い、この「観念」は当然、人によって異なります。

そして「固定観念(こていかんねん)」とは「ある対象に対しての主観的で、外部の状況変化などによっても変えることが難しい、凝り固まったイメージや考え方」といった意味の言葉です。この主観的で偏ったな考え方に固執している状態を「固定観念にとらわれている」「固定観念が強い」などと表現します。

固定観念によって柔軟な発想が妨げられると、適切な状況判断ができなくなることがあります。普段から自分の考えや思い込みに固執せず、広い視野を持って物事を判断するように気を付けたいものです。

「固定観念」は、「固着観念(こちゃくかんねん)」とも言います。

「固定概念」は間違い? 「概念」の意味

一方、「固定観念」と同じような場面で使われることのある「固定概念」とはどのような意味なのでしょうか。まずは「概念」という言葉について解説します。

「概念(がいねん)」とは、ある物事に対する普遍的で変わらない認識や定義、共通する性質のことを言います。

先ほどの「犬」を例にしてみましょう。一匹の犬を見て「これはなんですか?」と問われれば、ほとんどの人が「犬」だと答えるはずです。

それは多くの人が「犬」という生き物とは何か、共通した認識を持っているからです。「四足歩行であること」や「犬と認識できる顔や体の特徴」など、犬が犬であると見分けるポイント、それらによって形成された犬の定義のことを「概念」と言います。「概念」は基本的には固定され、変わることないものです。

これを踏まえて「固定概念(こていがいねん)」の意味を説明するなら「固定された普遍的な共通認識」となります。「もともと変わることのない、言い換えれば『固定されている認識』である『概念』が、さらに固定される」ということで、重複した言葉になり、不自然です。

「何にも揺るがない確立された概念」という意味で「固定概念」という言葉をあえて使っているケースも無いとは言い切れませんが、現状「固定概念」という言葉は基本的に辞書に掲載されていません。

「固定概念」は「固定観念」の間違いとして使われていることがほとんどでしょう。

「固定観念」の具体例

  • 固定観念の例

それでは具体的に「固定観念」とはどんな主張のことを言うのでしょうか。一例を見てみましょう。解説を読んでもらえれば、きっと「確かにこうとは言い切れない」「言われてみればこれは決めつけだ」と思えるでしょう。

「固定観念」、つまり思い込みは、意外と身近にあふれているものです

子育ては母親がするものだ

上の写真を見て、「お母さんがベビーカーを押している」と思った方は、もしかすると「子育ては母親がするもの」という固定観念にとらわれているかもしれません。

育児の形はさまざまです。母親だけがするものではなく、もちろん父親もするものですし、祖父、祖母や、周りの人など、誰がするのが正解、というものではありません。

仕事はオフィスでするものだ

新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、今ではテレワークが社会的にかなり浸透したと言えるでしょう。かつて、仕事はオフィスでするのが一般的でしたが、今や在宅勤務やコワーキングスペースでの勤務、ワーケーションなども広がっています。

このように、価値観と言うのは何かのきっかけや、時代の流れなどによってアップデートされていくものですが、それについて行けていないと、固定観念が生まれてしまいます。

体が大きい人はたくさん食べる

こちらも固定観念の一例と言えるでしょう。背が高かったり体重が多かったりするからといって、よく食べるとは限りません。体が大きくて小食の人はいます。

また背が低い、体重が軽いけれど、よく食べる人もいます。

体の大きい大食いタレントをテレビなどで見たことがあるといった、少ない例が固定観念に結びついている可能性があります。

「固定観念」のビジネスシーンでの使い方と例文

  • 固定観念の使い方と例文

固定観念という言葉は、ビジネスの場ではどのような使い方をするでしょうか。具体的な例文をいくつか見てみましょう。

・多様性が重要視されるこの時代に、固定観念が強い人は取り残されてしまうだろう
・あの上司は固定観念が強すぎて、人の意見を聞かない
・固定観念にとらわれることなく、自由な意見を出していこう
・新しいアイデアを生み出すためには、固定観念にとらわれていてはいけない
・固定観念を覆すような発想が全く出てこない
・固定観念を捨てて、新しい製品を作ろう

このように「固定観念」はネガティブな意味で使われることが多い言葉です。「強い」「とらわれる」「覆す」「捨てる」などといった言葉と併せて使うケースがよく見られます。

特にビジネスシーンでは、新しい企画や商品開発といった場面において、固定観念に邪魔されてしまい、壁にぶち当たることがよくあります。

企業として新たなチャレンジに進み、また求心力を上げるためには、多くの従業員による固定観念の打破に向けた努力が必要でしょう。

「固定観念」の類語と使用例

  • 固定観念の類義語

「固定観念」とよく似た意味の言葉も、使用例と併せて覚えておきましょう。

既成概念

「既成(きせい)」とは、既にできあがっているものという意味です。「既成概念(きせいがいねん)」は「すでに多くの人がそうであると共通して持っており、変えがたいと思っている認識や考え方」という意味です。

「固定観念」とよく似た使い方をされますが、個人の主観的な意味合いを含む「固定観念」に対し、「既成概念」は一般的・社会的によく知られている認識を指す、という点で少し異なります。

例文:欧米人が生の魚を食べないという既成概念を捨て、新たなメニューを開発する

思い込み

「絶対こうであるに決まっている」「こうに違いない」というように、ある一定の考え方にとらわれること、深く信じ込むことを「思い込み」と言います。

思い込みが自信につながり、成功を後押しすることもありますが、独りよがりな考え方で周囲の状況が見えないと、物事を正しく判断できなかったり、柔軟な発想ができなかったりすることが多くなってしまいます。

例文1:人の話を聞かずに思い込みで行動すると、大きな失敗につながる恐れがある
例文2:彼は思い込みが強すぎて、いつも正しい判断ができない

先入観

「先入観(せんにゅうかん)」とは、ある事柄に対して前もって持っている、凝り固まった見方のことです。物事を客観視できず、限定的な意見や印象だけで判断しようとすると、その奥にある本質を見抜けなくなります。

例文:噂からあの上司は厳しくて怖い人だという先入観を持っていたが、実際に接してみると案外優しくて気さくだ

偏見

「偏見(へんけん)とは、客観的な根拠のない偏ったものの見方や考え方のことを言います。好意的に使われることはほとんどなく、個人や団体に対する差別につながりやすい考え方でもあります。

例文1:あの人は男性に対する偏見がひどい
例文2:偏見をなくさない限り、人種差別はなくならない

「固定観念」の英語表現

  • 固定観念の英語表現

「固定観念」を英語で表す場合、以下のようなものがあります。

  • stereotype
  • fixed idea
  • think inside the box

「stereotype」には、固定観念、型にはまった、決まり文句などの意味があります。カタカナ語でも「ステレオタイプ」はよく使われますね。

「固定観念を捨てなさい」なら「Throw away your stereotypes」などと表現します。

また、「fixed」とは、固定した、動かない、固執した、とらわれた、確固たるなどの意味がある言葉です。「fixed」に続けて、考え、思想、アイデアなどを表す「idea」と続けて「fixed idea」とすることで「固定観念」という意味を表します。

最後の「think inside the box」は、まさに固定した箱の中に入った状態で考えている、というようなイメージで、常識にとらわれている状態を表します。

固定観念のメリット・デメリット

  • 固定観念のメリット・デメリット

「固定観念」の言葉としての意味がわかったところで、その効果や影響、どうすればとらわれずに済むのかなどを見ていきましょう。

今まで見てきたように、固定観念は、良い意味で使われることが少ない言葉です。しかし、固定観念にもメリットはあります。

固定観念のメリット

固定観念はその人の主観的で凝り固まった考えとは言え、「こういうときにはこうなるものである」という、ある程度の経験に基づいた知識である場合も多いです。

例えば、雲が黒く重く垂れこめてくれば、多くの人が「そろそろ雨が降るかもしれない」と思います。外出前なら傘を持って行こうと考えるでしょうし、外にいるときなら早く屋外に入ろうと思うかもしれません。雲が黒いからといって必ず雨が降るわけではないので、これは固定観念とも言えますが、「雲が黒くなると雨が降る可能性がある」という考え方は、私たちを助けてくれることも多いでしょう。

また、例えば「A部長が貧乏ゆすりをしているときは機嫌が悪い」というのも、直接A部長に気持ちを確認したのではないのならば、固定観念と言えます。

しかしこれはおそらく、過去にA部長が貧乏ゆすりをしていたことがあり、その時に確認事をしたら嫌な顔をされた、大したことではないのにひどく怒られたなどの経験があり、自分の中で導き出された法則なのでしょう。

そこから、A部長が貧乏ゆすりをしているときはなるべく関わるのを避けておこう、という心理が働きます。

このように私たちは、固定観念のおかげで安全に暮らしたり、正しい判断を下したりできている側面もあるのです。

固定観念のデメリット

ほぼ無意識の中で固定観念の恩恵を受けている私たちですが、固定観念にとらわれすぎることは避けなければなりません。それは視野が狭くなり新しい発見ができなくなるという、大きなデメリットがあるからです。

ビジネス上でも、強い固定観念のせいで仕事が円滑に進まない場合が少なくありません。固定観念から抜け出せない、抜け出す努力をしない企業に、新しい企画やチャレンジは期待できませんね。

常に固定観念を打ち崩すような工夫をしなければ、企業としての成長力が弱まる恐れがあるのです。強すぎる固定観念は、良くも悪くも変化を妨げ、人間や会社の成長を止めてしまう可能性があります。

固定観念にとらわれない・覆す方法とは

  • 固定観念を崩すには

固定観念にとらわれず、新しい発想を生み出す方法としてよく知られているのは、ターンオーバー発想法とゴードン法です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

ターンオーバー発想法

ターンオーバー発想法とは、物事の考え方をひっくり返すこと(turn over)で新しいアイデアや価値観を生み出す方法です。「逆設定法」とも呼び、アメリカ人コンサルタントのステファン・グロスマンが提唱しました。

具体的なやり方は以下のとおりです。

  1. ある一つの物事に対して、その固定観念(決まったイメージ・先入観)を具体的に書き出す
  2. 書き出したものの逆を考える
  3. そこから新しい発想・アイデアを生み出す、具体化する

例えばおにぎりで考えてみましょう。まずおにぎりの固定観念を書き出してみます。以下のようなものがあるでしょう。

  • 家で作る
  • 白飯で作る
  • 具は梅干しやサケ、こんぶなど
  • 三角か俵型ににぎる

では次に、この反対を考えてみましょう。

  • 家で作らずに外で買う
  • 白飯以外で作る
  • 具に決まりはない
  • いろいろな形ににぎる、またはにぎらない

ここから生まれたアイデアをもとに、具体化していきます。こうして、現在では一般的になった以下のような商品が生まれたのかもしれません。

  • コンビニで販売されるおにぎり
  • ケチャップライス、ピラフなどのおにぎり
  • 唐揚げ、スパム、味付け卵、クリームチーズなど、バラエティーに富んだ具
  • おにぎらず

「おにぎりはこうであるべきだ」というのが固定観念であり、それを覆すことで、新しい発想や商品が生まれてくるのです。

このように意識して固定観念から脱却し、新しいアイデアを生み出す方法が、ターンオーバー発想法です。

ゴードン法

次に紹介するゴードン法では、あえて本当のテーマを伏せ、リーダーが抽象化した第1次テーマに対し、メンバーがアイデアを出し合うことで、新しい発想へとつなげていきます。この方法は、アメリカのウィリアム・ゴードンが考えました。

こちらもおにぎりを例にして考えてみましょう。まずはおにぎりについて思い浮かぶことをリストアップし、第1次のテーマを決めます。

  • 白飯で作る食べ物
  • 正規の食事としても、軽食としても利用できる食べ物
  • 手ごろな価格
  • お弁当やピクニックなどでも食べやすい

この中から「正規の食事としても軽食としても利用できる食べ物」を選び、第1次のテーマを「正規の食事にも軽食にもなる食べ物」とします。

メンバーはこのテーマで新しいアイデアを出し合い、討論します。この際、メンバーは真のテーマを知らないので、リーダーはメンバーに多角的な発想を促しつつも、真のテーマに結び付けられるよう場を上手に回します。

  • 正規の食事ならボリュームがほしい
  • 正規の食事ならおかずもたくさん食べたい
  • 正規の食事なら栄養バランスに気を配りたい
  • 軽食ならつまみやすいサイズ感がいい

ある程度アイデアが出た時点で、真のテーマである「おにぎり」を明かし、第2次のテーマとして、先ほどのアイデアをより深めていくのです。

  • 具を2種類入れることでボリュームを出す
  • 玄米や十穀米を使用し栄養バランスに気を配る
  • 形を小さくつまみやすくする

このようにおにぎりに関するさまざまな要素から、別のテーマを考えることで、従来のおにぎりというイメージを飛び越えた新しい発想が生まれます。

固定観念から脱することはたやすくはありませんが、これらのステップを踏むことで、誰にでも斬新な発想を生み出せる可能性が出てくるのです。

固定観念にとらわれることなく、自由な発想を心掛けよう

「固定観念」とは、一定の考え方やイメージにとらわれ、固執することです。「固定概念」と間違えて覚えている人も多いので気を付けましょう。

固定観念を打ち破ることは簡単ではありません。まずは聞く耳を持つこと、そして時には物事を客観的な視点で観察することから始めてみましょう。