ルノー「カングー」の3列シート7人乗り仕様「グランカングー」が日本で発売となる。人気のカングーに待望の(?)多人数乗車バージョン登場だが、日本仕様はどんな内容? 普通のカングーと何が違う? 「カングージャンボリー」にサプライズで登場した実車を確認してきた。
組み合わせは1,024通り? 3列シートの特徴は
ルノー・ジャポンは10月15日、山梨県山中湖村でオーナーズイベント「ルノー カングージャンボリー2023」を開催。会場には新型「グランカングー」がサプライズで登場した。今回が日本初公開だ。
グランカングーは現行型(3代目)カングーのロングホイールベース仕様。開口部の大きな両側スライドドアと3列シート7人乗り仕様が特徴となる。ちなみに、普通のカングーは2列シート5人乗り仕様のみだ。
会場に展示された濃紺のグランカングーは、本国仕様のため左ハンドルのままだった。エクステリアは全長4,910mmの長いボディが特徴。カングー比でホイールベースは400mm、両側スライドドアの開口幅は180mmも拡大している。実際に開けてみると、とても乗り降りがしやすい。テールゲートはカングー(日本仕様)だと観音開きのダブルバックドアなのだが、展示車両のグランカングーは跳ね上げ式だった。
2-3-2の7人乗りレイアウトを確認してみると、2列目の前後左右には十分なスペースが確保されていた。3人が並んで座っても、窮屈さは感じないはずだ。3列目シートはレッグスペースがクラス最大とのこと。ルノーは「シアター方式」と呼んでいるが、3列目は座面が最も高くなっていて、前方の視界が良好だ。
2列目、3列目のシートは、それぞれ独立してスライド、折りたたみ、格納、取り外しが可能。その組み合わせは1,024通りというからすごい。
フル乗車でのラゲッジスペースは500Lと十分なサイズ。2~3列シートを取り外して助手席シートも折りたたんでしまえば、3,750Lという広大な空間が出現する。室内長は最大3,110mm(ホイールベースとほぼ同じ)。長い荷物も余裕で積める。
展示車は1.3L直列3気筒ガソリンターボエンジン(最高出力130PS、最大トルク240Nm)搭載のATモデルだったようだが、本国には1.5L直4ディーゼルターボ(116PS/270Nm)搭載モデルもあるし、さらにはフル電動の「グランカングーE-Techエレクトリック」も発表済みだ。
日本仕様はどうなる?
グランカングー日本導入の理由は明確だ。日本でも人気があるフルゴネット(商用バン)ベースの欧州車は、もともとはカングーしか選択肢がなかったのだが、今やシトロエン「ベルランゴ」、プジョー「リフター」、フィアット「ドブロ」と花盛りの状態。しかも、現状ではカングー以外のいずれのモデルにもロングホイールベースの3列7人乗り仕様が存在し、そちらの方が注目度が高い。さらに日本では、3列シートのミニバンが売れに売れている。ルノーとしてはライバルに対応する必要があるし、日本の3列シート車需要を取り込みたいという思惑もある。
今回のカングージャンボリーには、本国からルノーLCV(商用車)部門 上席副社長のハインツ・ユルゲン・レーヴ氏が初めての視察にやってきていたので、話を聞いてみた。
「こんなに雨が降っているのに(当日は朝から強い雨模様だった)約1,400台ものカングーユーザーが集まり、楽しんでいるのを実際に見ると、1万kmも離れたところから14時間かけてやってきた私たちも心が温まる感じがしますし、エネルギーがもらえました。世界で唯一のジャンボリーだと思っています。感動しました」(以下、カッコ内はレーヴ氏)
グランカングーについての考えは?
「グランカングーについては、日本でたくさん売れている3列シートのミニバンとも実際に比べてみました。例えば同じグループの日産自動車『セレナ』と比べると、2列目の3人乗車が余裕でできる点、3列目シートにも大人がしっかりと座れる点、2列目~3列目を取り外すとより大きなモノが積める点、バックドアが観音開きとなっている点など、利点がたくさんあります。ロングホイールベースとワイドトレッドによるドライバビリティの面でも評価していただけると思います」
日本仕様はどうなるのか。
「ルノーが大事にしているのは、お客様の話を聞くことです。今回のイベントでさまざまな質問をしてみたり、駐車場を見に行ってみたりしてみて、やはり日本のお客様のニーズに合わせていかないとダメだと感じました。ニーズに合えば、ものすごいヒットになると確信しています。観音開きのダブルバックドアやカラフルなボディカラーなど、日本のMPVではできないようなことは必ずやります。アクセサリーの使い方も、みなさんアイデアが豊富ですね。たくさん写真を撮って本国に報告し、オプション開発にもいかしたいと考えています」
グランカングー日本仕様の詳細はこれから詰めるようだが、ダブルバックドアを含め日本のニーズはしっかりと伝わった様子。日本発売は2024年の予定だ。