ヨーロッパ遺産の日 その4:サルムソンの集い

9月16~17日はヨーロッパ遺産の日。この日はあちこちで普段は入れない場所が公開されるイベントが催される。最後に訪れたのはルノーのお膝元ブローニュ・ビヤンクール。会場がビヤンクールということですっかりルノーの展示と思い込んで現地入りした。ルノーの割にはこぢんまりとした展示で、この町のオーナーによる小さなミーティングなのか?と思った。

【画像】クラシカルな内装も見どころ満載。サルムソンのミーティング参加車両(写真14点)

しかしそこにはルノーのマークの付いたモデルはない。…というより、そこにある車はSALMSON(サルムソン)ばかり。サルムソンはエミール・サルムソンによって1890年にポンプや蒸気機関の会社として創業した。その後1912年にこのビヤンクールで航空機、車のエンジンを製造を開始。Société des Moteurs Salmson(SMS)として1913年には1000㎡、従業員50名規模だった会社が1918年には5万2000㎡、6000人の従業員へと発展を遂げた。ただ、多くのフランス車のように第二次大戦後、高級車の需要は激減し1950年代に姿を消してしまうのである。

この集まりは”オーナーズクラブ”というよりも、”サルムソン友の会”という方が近い団体が主催しており、サルムソンが偉大なる遺産であることの周知と、サルムソンの車両の保存や修復などを行っている。

会員の一人がこの場所に建てられたパネルを指さした。「あれを見てごらん」

その指の先にあったのはSALMSON LE POINT DU JOURというこのマンションの案内板だ。そう、今この住宅地となっている場所がSALMSONの工場のあった場所なのだ。メーカーは消えたがその名前だけは残されていた。だからこの場所を選んで、このヨーロッパ遺産の日にSALMSONが集ったのだ。

このように、文化遺産の日に車が主役になるイベントが開かれるのは、車が文化のひとつであることが認知されているからだ。お祭り騒ぎするだけでなくしっかりと後世に伝えていく、そういった車文化の深さを知ることとなった週末であった。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI