今回は「音読」を用いた英語学習法をご紹介します。人によっては、「え? シャドーイングじゃなくて音読?」と思う人もいるかもしれませんね。その違いはもちろん、どんな効果があるのかを解説していきます。

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まずは誤解されがちな「音読」と「シャドーイング」の違いから説明していきましょう。

■音読とシャドーイングは何が違う?

音読とは、テキストを見ながら文章やフレーズを声に出して読む練習方法です。一方、シャドーイングは、耳で聞いた音声の後を追って、なるべく正確に模倣して声に出す練習法です。

最も大きな違いが、音読は「英語を見て」シャドーイングは「英語を聞いて」です。おわかりいただけたと思いますが、シャドーイングはある程度のリスニング力がある人でないとなかなかうまくできません。そのため、初心者にとっては学習効果も低くなりがちです。具体的な数値で表すのは難しいですが、シャドーイングをするのであればTOEICで800点程度の英語力は必要かと思います。

今回は英語学習を始めたばかりの人、もしくは中級者に有効な学習法である「音読」の正しいやり方を紹介していきます。

■音読の効果

今まで多くの人に英語を指導してきた中で「音読したけど意味があったの……?」「音読しても続かなかった……」などの否定的な言葉を耳にすることが多くありました。みなさんも、中学や高校の授業時に、CD音声などに続いて声に出して英語を読むよう促されたものの、あまり気が乗らずにぼそぼそとしか声を出さなかった記憶はありませんか?

ここで強調したいのですが、「音読は間違いなく英語力の向上に効果があります」。しかし、「音読」することによって伸ばされる能力が誤解されている、明確になっていないという場合が目立ちます。

「音読」をすることによって得られる最大の恩恵は「英語を英語のまま理解する」能力が向上することなのです。

■「英語を英語のまま理解する」とは?

英語を英語のまま理解できると、英語の処理能力が上がります。一つひとつの単位の認識から、英語のカタマリでの認識が可能になり、それだけ早く英語を処理できるようになります。

例えば、I am calling about the issue we discussed in the last meeting. という英語を「この前の会議で話し合った件のことで電話しています」という形にして理解してしまうとなかなか速く読むことができません。

その原因は英語の語順に逆らって読んでいるからです。つまり、①I am calling ②about the issue ③we discussed ④in the last meeting という英語を「④この前の会議で ③話し合った ②件のことで ①電話しています」というように英語の語順に逆らって読んでしまっているのです。これは「返り読み」と言って多くの日本人がやってしまいがちです。

これを日常的に音読することにより、カタマリ単位で認識しておくと、①I am calling ②about the issue ③we discussed ④in the last meeting という英語を「①電話しています ②件のことで ③話し合った ④この前の会議で」という形で語順通りに理解できるようになるのです。

また、想像していただければわかると思いますが、リスニングにおいても英語を語順通りに理解できるようになり、理解度が高まります。つまり、音声通りにカタマリ単位で理解できるようになるのです。
英語音声:①I am calling   ②about the issue ③we discussed ④in the last meeting
頭の理解:①電話しています ②件のことで ③話し合った ④この前の会議で

■音読のやり方をチェック

ここからは音読のやり方を詳しくみていきましょう。

①テキスト教材の選び方
自分の英語力よりも簡単な内容の教材がおすすめです。英文を見て、文構造や内容理解に時間がかかってしまう教材は避ける方がいいでしょう。

②英文の内容を理解する
音読の前に、英文の内容をしっかりと理解します。先述した通り、英語の語順のカタマリ通りに理解するようにします。

③初めはゆっくりと音読
まずはゆっくりと音読し、徐々にスピードを上げていきます。早く読むことよりも、はっきり読むことが大切です。

④繰り返し読む
読み続けていると、スムーズに読める部分とうまく読めない部分がわかってきます。うまく読めない部分は繰り返し読んで、文章全体がスムーズに読めるようにします。

■目で読むだけではダメ?

「音読は声に出す必要があるの? 目で読むだけではダメ?」

これは私が音読について一番多く受ける質問です。答えは「声に出すべき」です。先ほど、音読によってカタマリで認識し、語順通りに理解する重要性について述べました。声に出さなければ(目だけで読んでいると)、多くの人は返り読みしてしまいます。声に出すことによって、「強制的に語順通りに読んで理解する」トレーニングをしているのです。

音読は最初はきつく感じてしまうかもしれませんが、慣れてしまうと意外と続けられます。ぜひ日常の英語学習に取り入れてみてください。