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――本作の主役は7人組ユニット「龍宮城」のメンバー・佐藤海音さんが演じられています。片思いの相手である幼なじみ・ユキを救うために「夜行」になった少年役ですが、彼はこれが初めてのお芝居です。いかがでしたか?

「龍宮城」のメンバーの誰を主役にするかということで何回かお会いして、海音くんと(西田)至くんが候補に挙がったんです。お二人ともお芝居は初ですので、主人公としてのルックが重要になるかなということで海音くんが主人公で、相棒役が至くんに決まりました。

ですが、なにぶん初芝居なので、クランクインまでに「最低10時間ください」とお願いして、その2倍くらいのお時間を頂いてリハーサルをさせてもらいました。最近では映画でもここまで時間をもらえないのでありがたかったですね。その結果、彼らも少しずつ不安が解消されたんじゃないかと思います。おそらく皆、最初はすごく不安だったと思うんですが、海音くんは「むしろ休みの日も現場に行きたい」と言ってくれるほど演技することが好きになっていただき、非常にうれしかったです。

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――次に、ヒロインで幼い頃から父親に虐待を受けていたユキ役を演じた大原優乃さんについてはどうでしょう。

大原さんは演技の経験がしっかりある方なので全く心配はなかったのですけど、彼女は本作のクランクイン直前まで別のお仕事があったんです。それにもかかわらずリハーサルに参加していただけて感謝しています。ただ、ヴァンパイアものって日本でもちらほら出てき始めましたけど、まだ欧米レベルまでには定着していない。「夜行」は人間でもなければ幽霊でもない、化け物でもないわけで「夜行」という存在を理解するのは難しかったのではないでしょうか。それでも、現場に入る頃にはかなり高い理解で「夜行」を演じていただけたと思っています。

――「龍宮城」の他メンバーは劇中で「404 not found」というバンドを演じ、皆が「夜行」でお互いの血を吸い合うシーンがあります。中田監督が先ほどおっしゃったように吸血行為はある種の情愛、性行為に近いものだと思うのですが、男同士で吸血行為が行われるという点について、昨今のLGBTQ問題などにも関心があったのでしょうか。

確かに僕は過剰に性愛は男女だけということにこだわってはいませんが、おっしゃる通り、多少BL的な場面はありますね。それはLGBTQの方々に「わかるわかる」と言ってもらえるほど理解するまでには至らなかったかもしれませんが、男同士の恋愛、女同士の恋愛、バイセクシャル、クィアなど不必要な偏見を取っ払った中で、バンド内での恋愛感情のようなものは描きました。一緒に棺の中に入って寝るというシーンもあり、そういったところはBLがお好きな方には刺さるかもしれない、という程度です。

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■人でないからこそ「狂おしい濃厚なエモーション」が描ける

――中田監督の作品はホラーでありながら、人間の心の機微であるとか愛情、そういった人間ドラマ的な要素も多分に見られます。『仄暗い水の底から』など、単なるホラー映画というジャンルではくくれないドラマ性を感じたのですが、やはり本作でもそれは意識されましたか。

そうですね。本作は主人公とヒロインがいますが、どうもヒロインは主人公ほどの愛はない。相思相愛ではないんじゃないかというところから始まるので、彼としては狂おしくなってくるわけですよ。でも彼女を助けるために吸血され、自分も「夜行」になった。その狂おしい関係が主人公とヒロインの間にまずある。そしてその周囲にも男子がたくさんいて、彼らは彼らで様々な感情とエロスの交わし合いがある。

ですから、おっしゃっていただいた「夜行」ならではの濃密なエモーションとか、人間よりも濃度の高い感情の交わし方は意識しました。人間が演じる限り、人間の感情の交わし合いというのはホラーでもあるはずだし、あるべきだと思っているので、そこはいつものようにやったという感じです。

――ありがとございます。最後にメッセージをお願いします。

多数、ホラー映画に携わってきましたがヴァンパイアものは初めてだったので、とても挑戦のしがいがありました。そもそもホラーとエロスは密接につながっているものだと思うんですね。不安を煽られると生存本能が働く。人間の動物脳的な本能的な部分に訴えかけてくる面があるでしょうし、その精神はこのドラマでもしっかりやろうとしています。

男女の、あるいは男同士の、ひょっとしたら女性同士のその感情。あるいは性愛、エロティックなものも濃厚に描いているつもりですので、そのあたりをお楽しみにしていただければと思います。

●中田秀夫
1961年生まれ、岡山県出身。映画監督デビュー作『女優霊』(96年)における、斬新な恐怖描写で注目を集める。『リング』(98年)、『リング2』(99年)でJホラーブームを巻き起こし、その後も、『仄暗い水の底から』(02年)などで、ハリウッドからも注目。『ザ・リング2』(05年)でハリウッド進出し、全米映画興行成績1位を獲得した。他の監督作品に『暗殺の街』『ガラスの脳』『サディスティック&マゾヒスティック』『カオス』、『ラストシーン』『怪談』『L change the WorLd』『スマホを落としただけなのに』『貞子』など。今年はNetflixドラマ『THE DAYS』が配信、映画『禁じられた遊び』が公開され、ドラマ『秘密を持った少年たち』が10月6日にスタートする。