「シーチキン」の原材料はなんの魚かご存じだろうか? 現在、シーチキンに使用されている魚は4種類。今年8月に登場した新商品は「ぶり」のもの。今回はそんな意外と知られていないシーチキンのトリビアや、災害時でも作ることができるフェーズフリーレシピを紹介する。
シーチキンにはこんなに種類がある!
シーチキンの定義は「マグロ、カツオ等のお魚を油漬け等に加工した食品」。1931年にメーカーのはごろもフーズが創業されたと同時にマグロの油漬け缶詰を作ってアメリカに輸出したのが始まりだ。
その後、1958年には日本国内での販売を開始したが、当時はアメリカでしか販売されていなかった「マグロ油漬缶詰」を知らない日本人にもわかりやすい名前を付けようと考えた名前が「シーチキン」だった。味も食感も鶏肉に似ていることから「海(Sea)の鶏肉(Chicken)」と名付けられたという。
そして現在はごろもフーズでは缶詰25種類、袋(パウチ)タイプ14種類もの商品を販売。
缶詰の中の形状には3種類あり、 ほぐさずに大きい形のままの「ソリッド」・大きくほぐした「チャンク」・細かくほぐした「フレーク」と用途に合わせて使い分けられるようになっている。
さらに調味液は、「油漬」「油入り水煮」「水煮」「調理品」の4種類があり、使い分けることで用途に合わせた味わいを選ぶことができる。
シーチキンの原材料に使用されている魚は、現在4種類。はごろもフーズでは、それぞれどの魚が使用されているか分かるように名称を変えて販売されている。びんながまぐろを使用したものは「シーチキン」、きはだまぐろを使用したものは「シーチキンL」、かつおを使用したものは「シーチキンマイルド」、そして今年8月21日に登場したのがぶりを使用した「シーチキンEvery」だ。
これまでまぐろとかつおを使用していたシーチキンだが、近年、海洋資源の漁獲量が不安定である一方で世界的な需要が増加。需給バランスの悪化により原材料の調達が難航していた。そんな中、シーチキンとしてのおいしさを保ちつつ、たんぱく質が豊富に含まれシーチキンの特長「たんぱく質が豊富(11g以上)」も満たすことができ、さらに安定して供給できる魚として選ばれたのが"ぶり"だった。
ぶりは北太平洋に広く分布し、特に日本海近海に多く存在。そのため日本でも多く食べられており、旨味もあることからシーチキンの原材料として選ばれたという。国内で水揚げされるぶりは日本国内で消費されるため、世界的な需要の変動に影響を受けにくいのもポイントだった。
ネーミングの「Every」は「エブリー」と「ぶり」がかかっていることに加え、「いつもの(Every)、みんなから愛される(Every)、どこのお店でも出会える(Every Where)、毎日(Everyday)の食卓に欠かせない」などさまざまな意味合いがこめられている。
魚の種類によってシーチキンの味は違う?
4種類の魚が使用されているというが、味は違うのだろうか?普段は魚の種類の違いなどあまり気にせずに「シーチキン」というだけで購入してしまっていたが……。食べ比べをすることができたので意識して味の違いを確認してみたい。
ぶりを使用した「シーチキンEvery」は最も"魚"感があり、コクと旨味を感じる。和風のレシピによく合い、醤油や出汁と相性が良いそうだ。
きはだまぐろを使用した「シーチキンL」は4種類の中でもかなりあっさりとした食感と味わいが特徴、それよりもさらにサラっとした味はびんながまぐろの「シーチキン」。かつおを使用した「シーチキン マイルド」はイノシン酸の効果か旨味と塩味を強く感じた。
これまでなんとなくすべて同じ「シーチキン」と思っていたが、食べ比べてみると意外にもかなり味や食感が異なる。レシピや目的に合わせて使い分けることでより美味しく感じることができることが分かった。
ちなみに価格は各70g缶で「シーチキンEvery」が235円、「シーチキンLフレーク」が220円、「シーチキンマイルド」が215円、「シーチキンフレーク一本釣」が235円(参考小売価格)。売れ筋は「シーチキンLフレーク」と「シーチキンマイルド」だそうだ。
いくつ知ってる? 「シーチキントリビア」
ここからは「シーチキントリビア」を紹介する。シーチキンは実はさまざまな「初」づくしの存在なのだ。
1. 缶詰製品に名称を付けたのはシーチキンが初
前述のように、1958年に日本でマグロ油漬け缶詰を発売するにあたり「シーチキン」と名付けて販売したのだが、実は缶詰製品に名前を付けたのはシーチキンが初めて。
2. メニュー提案型の缶詰TVCMはシーチキンが初
1967年に名古屋地区でシーチキンのTVCMを放映開始。当時缶詰めはそのまま食べるという概念が一般的だった中で、シーチキンのTVCMは「そのまま食べても、お料理に使っても」というナレーションで多くの人に衝撃を与えたそう。このTVCMのおかげでシーチキンファンが飛躍的に増加したという。
3. 缶切り不要の「イージーオープン缶」を広めたのはシーチキン
それまで缶詰は缶切りを使用しなければ開けられないと思われていたものの、1981年から85年にかけてシーチキンに採用されたことをきっかけに「イージーオープン缶」が浸透。以降、コーンやフルーツなど多くの缶詰にこの技術が採用されていったそう。
4. 積み上げられる「スタック缶」を食缶で採用したのはシーチキンが初
前述の通り、イージーオープン缶を進めるにあたり、プルトップ部分がむき出しになってしまい破損することが懸念された。そこでシーチキンでは缶の上下で径の大きさを変えて積み上げられるように缶を改良。これは飲料缶を除く一般の缶詰では初の試みだったのだそう。
5. シーチキン消費量NO.1は「沖縄県」!
シーチキン消費量NO.1の都道府県は「沖縄県」。沖縄では米軍の影響でツナやスパムを多く食べる傾向にあり、また暑い地域であることから保存のきく缶詰が重宝されていた。また、ソーミンチャンプルーやにんじんしりしりなどの炒めものにはシーチキンの油をそのまま調味料として使用することが定着している。その結果、沖縄のシーチキン消費量は全国平均のなんと4倍。米などの日用品を贈答品として贈る習慣があるが、その際に箱入りのシーチキンは人気なのだそう。
シーチキンで美味しい! フェーズフリーレシピ
シーチキンはローリングストック&フェーズフリー食材としても便利。日ごろからシーチキンを使ったレシピを作り慣れておくことで、災害時にもいつもと変わらない食事を摂ることができる。今回は管理栄養士・防災士・災害食専門員の資格を持つ今泉マユ子さんが災害時にも作れるシーチキンレシピを教えてくれた。
まずは「シーチキンEvery」と「サラスパ」を使用したレシピ。高密度ポリエチレン製袋とカセットコンロを使用すれば災害時でも簡単に作ることができるレシピだ。 高密度ポリエチレン製袋に材料を入れて湯せんすることで、湯せんに使ったお湯が汚れずに繰り返し使えて、何種類も同時に作ることができる。
注意点は鍋の底にお皿か金ざるなどを敷くこと。高密度ポリエチレン製袋がなべ底に接すると熱で穴が開いてしまう場合がある。また、鍋に入れるお湯の量は鍋の高さの半分以下すること。沸騰してお湯が溢れることがあるためだ。
材料を入れた高密度ポリエチレン製袋は空気をなるべく抜くことで鍋の中で浮いてくることなく熱と味がしっかりと行き渡る。お湯が沸騰してから、規定の加熱時間(サラスパの場合は4分)に加え2分温める。
食べ終わった後の高密度ポリエチレン製袋はゴミ袋として使用すれば災害時でも限りある資源を有効活用することができる。
続いてはマイルドチャンクを使用した味噌汁。最初にマイルドチャンクの油で材料を炒めることでより味わいが活用できて美味しくなるのだそう。2分炒めたらだし汁とマイルドチャンクを入れみそを溶き入れたら完成だ。
最後はシーチキンLを使用したイタリアンサラダ。袋に材料を全て入れて揉むだけなのでお子さんでも簡単に作ることができる。トマトジュースは野菜ジュースでもOK。完成したら20分ほど置くことで切り干し大根が軟らかくなり、味も馴染んで美味しくなる。
サラスパを茹でている6分の間に残りの2品を作れば、およそ6分で3品が完成する。
それぞれ味わいも異なり、すべてシーチキンを使用しているものの、食べ飽きることはない。シーチキンにはたんぱく質が豊富に含まれているため災害時には嬉しい。もちろん、ふだんのおかずとしても食べたい美味しさだ。ぜひ普段のレシピに取り入れたい。