鉄道・運輸機構は23日、北陸新幹線金沢~敦賀間で新幹線車両による走行試験(総合監査・検査)を開始し、芦原温泉駅で報道公開を実施した。試験初日はJR東日本の新幹線電気・軌道総合検測車「East i」(E926形)を使用。福井県内の敦賀車両基地まで走行する。
北陸新幹線は「高崎・大阪間の延長約600kmを結ぶ路線」とされ、1997(平成9)年10月に高崎~長野間、2015(平成27)年3月に長野~金沢間が開業した。現在建設中の金沢~敦賀間は、石川県内5市町(白山市、川北町、能美市、小松市、加賀市)、福井県内7市町(あわら市、坂井市、福井市、鯖江市、越前市、南越前町、敦賀市)を経由する総延長(線路延長)約125kmの路線で、2012(平成24)年6月に着工。2024年3月16日の開業を予定している。
新幹線車両による走行試験(総合監査・検査)は、土木構造物・軌道・電車線・信号設備等の機能確認を目的に、整備主体の鉄道・運輸機構、営業主体のJR西日本が共同で実施。金沢~敦賀間で初めて新幹線車両が走行することになる。試験初日に使用された「East i」(E926形)は、新幹線の架線や軌道の検測、信号設備や通信設備の検査を目的にJR東日本が開発した新幹線電気・軌道総合検測車。JR東日本などの各新幹線で定期的に実施する検査走行に加え、開業前の走行試験にも使用しており、北陸新幹線長野~金沢間の開業前にも「East i」の走行試験が行われた。
9月23日未明、「East i」は1時56分に白山総合車両所を出発。金沢駅に2時9分着・2時28分発で折り返し、敦賀方面への走行を開始した。鉄道・運輸機構とJR西日本の職員ら約60名が乗車し、試験を行いながら駅構内30km/h・駅間45km/hの速度で走行。小松駅に4時37分着・5時5分発、加賀温泉駅には7時28分に到着し、待避設備のある同駅構内でも試験を行ったという。「East i」は芦原温泉駅の手前で一旦停止した後、9時45分頃、12番線ホームへ入線した。
芦原温泉駅に「East i」が停車している間、反対側の11番線ホームで「北陸新幹線(金沢・敦賀間)初入線歓迎式典」を開催。くす玉開披などを行い、新幹線車両の初入線を祝った。式典に出席した福井県知事の杉本達治氏は、新幹線車両の初入線について感想を聞かれ、「スムーズに入ってきて、静かに止まる様子を見ながら、先人たちが50年間待っていたことがここに結実したと感じることができ、本当に感無量でした」とコメント。前日に北陸新幹線金沢~敦賀間開業後の特急料金等が発表されたことにも触れ、「(福井から)東京もしくは大阪・名古屋への料金が高くなりますが、特別な企画商品・企画きっぷをご検討いただけると聞いています。我々としても、不便にならないように、高かったということがないように、JR西日本に強くお願いしていきたい」と語った。
「East i」は芦原温泉駅に約30分間停車し、10時15分頃に発車した。その後も試験を続けながら福井駅、越前たけふ駅、敦賀駅に停車。敦賀車両基地への到着は深夜となる見込みで、日付をまたぐことになりそうな状況だという。9月24日は敦賀車両基地にとどまり、9月25日の朝に出発して金沢方面へ。9月26日の早朝、白山総合車両所へ戻る予定と説明があった。
9月26日には、JR西日本の車両W7系が北陸新幹線金沢~敦賀間へ初入線。同日未明に白山総合車両所を出発し、最高速度110km/hで金沢駅から敦賀車両基地まで走行する。10月1日は日中時間帯にW7系が走行し、これに合わせて沿線自治体による「W7系電車入線イベント」が開催される。
新幹線車両による北陸新幹線金沢~敦賀間の走行試験(総合監査・検査)は12月9日まで行われ、期間中の40日程度、1日あたり1往復程度の運転を予定している。現在は総合監査・検査のうち入線・架線試験(新設した線路に初めて列車を走行させる試験)を行っている段階で、今後行われるホーム測定試験、ATC現示試験、列車無線試験はいずれもW7系を使用。総合監査・検査の終盤に行われる速度向上試験もW7系を使用し、110km/hから段階的に速度を上げ、11月下旬以降、最高速度260km/hに到達させての高速試験走行を実施する。その後、全区間通しての260km/h走行に問題がないか確認するため、12月初め頃をめどに再び「East i」を走らせたいとのことだった。