日本野球機構とJR東海は、プロ野球OBとの野球ふれあい教室・超電導リニア体験乗車を9月16日に開催した。小学1・2年生を対象に、未来あるこどもたちに夢の大切さを感じてもらい、自身の夢を見つけてほしいという思いの下、両者のコラボが実現。プロ野球OBと交流でき、リニアも乗車できる「夢の体験」が展開された。

  • プロ野球OBと野球を楽しみ、超電導リニアに体験乗車できる「夢の体験」が行われた(提供 : JR東海)

■新幹線の貸切車両で三島へ - プロ野球OBと対面

野球ふれあい教室・リニア体験乗車の集合場所は東京駅。抽選で選ばれた38組の親子が、ツアー添乗員の案内に従って東海道新幹線のホームへ。東京駅から新幹線を利用し、三島駅へ向かった。野球ふれあい教室の会場となるJR東海総合研修センターへは、三島駅からバス移動となる。

新幹線では一般利用者も乗車していたが、野球ふれあい教室の参加者が乗車する15・16号車のみ貸切に。参加者には今回限りの特別仕様として、新幹線N700Sとリニア改良型試験車、東海道新幹線再生アルミバットをデザインしたヘッドカバーが配布された。客室内の広告を見ると、日本野球機構の広告が掲出されていた。

  • 新幹線車内でスケジュールを説明。新幹線の再生アルミを使ったバットも

  • 特別デザインのヘッドカバー。L0系改良型試験車をデザイン

  • 反対側にはN700Sも

車内では、ツアー添乗員が今回のスケジュールや注意事項などを説明。「リニアの何がすごいか知ってる?」と添乗員が問いかけると、「新幹線より速い!」「磁石で走る」など、こどもたちから元気な反応が返ってきた。三島駅に到着した後、バスに乗り換えて5分ほど移動し、JR東海総合研修センターに到着する。

グラウンドで野球ふれあい教室が始まると、プロ野球OBの里崎智也氏(元千葉ロッテマリーンズ)、井端弘和氏(元中日ドラゴンズなど)、西村健太朗氏(元読売ジャイアンツ)、村中恭兵氏(元東京ヤクルトスワローズ)が、各チームのユニフォーム姿で現れた。現役時代に中日ドラゴンズなどで活躍した井端氏が、「野球を好きになって今日帰ってもらえるように一生懸命頑張ります」と挨拶した。

  • (写真左から)村中氏、西村氏、里崎氏、井端氏が登場

  • 井端氏が挨拶した

  • 研修センター社員が描いたイラストも

その後はリストバンドの色ごとに2班に分かれ、親子キャッチボールとバッティングの体験時間が設けられた。親子キャッチボールは井端氏と村中氏がレクチャーを担当。当たっても痛くないティーボールを使用し、ボールの投げ方を教える。その後は親子で、少しずつ間隔を空けながらキャッチボールを行った。井端氏と村中氏はこどもたちの様子を見ながら、投球フォームをアドバイスした。

  • 村中氏と井端氏が投げ方をレクチャー。教わったことを参考に、親子でキャッチボールを体験した

  • 西村氏と里崎氏はバッティングを担当。野球を通してこどもたちと交流した

続いてバッティング体験が行われ、西村氏と里崎氏がレクチャーを担当。西村氏がバットの持ち方を指導し、里崎氏がバッティングのデモンストレーションを行った。初めてバットに触れる子にも伝わるように丁寧に説明するプロ野球OBたち。ティーにボールを置きながら、「いいね!」「ナイスバッティング!」とこどもたちを応援していた。

■野球を簡易化した「BTボール」で対戦、サイン会も

2班ともキャッチボールとバッティングを体験した後、「BTボール」が行われた。「BTボール」は「野球(Baseball)」と「ティーボール(Teeball)」を簡易化したゲーム。リストバンドのグループごとに、緑チーム対オレンジチーム、青チーム対黄色チームで2試合ずつ行った。

チーム構成はこども5~10人と大人1人。守備チームと攻撃チームに分かれ、守備チームはキャッチサークル(野球でピッチャーが立つ位置)内に大人1人、守備エリア(野球の外野にあたる位置)にこども5人が入る。守備エリアに入れる子は5人までだが、途中で交代もできる。

  • いよいよ試合でバットを振る。村中氏もそばでアドバイス

  • ホームランを打つ子も

  • 守備エリアから投げたボールがキャッチサークルの井端氏へ。間に合うか!?

攻撃チームは1人ずつバッターとして打席に立つ。ティーに置かれたボールをバットで打ち、バットを籠(今回はフラフープを使用)に入れた上で、1塁から順にダイヤモンドを走る。バットを籠に入れた時点で1点、打ったボールがキャッチサークル内の大人へ渡るまでに通過したベース1つにつき1点もらえる。さらに、打ったボールがホームランライン(外側の弧のライン)をゴロで越えれば4点、バウンドせずに越えれば10点となる。

キャッチサークル内の大人は、バッターの打ったボールを直接キャッチできないため、守備チームのこどもたちがボールを取り、キャッチサークル内へ投げる。バッターが打ち上げたボールをノーバウンドでキャッチできた場合、バッターの得点は0点。攻撃チームの全員が打ち終えたところで攻守交代し、お互いの合計点を競う。今回はバッターが半数打ち終えたところで守備も交代していた。

緑チーム対オレンジチームは、キャッチサークルを井端氏、進行・アドバイスを村中氏が担当。青チーム対黄色チームは、キャッチサークルを里崎氏、進行・アドバイスを西村氏が担当していた。ルール上、大人は打球をキャッチできない(守備エリアから投げられたボールのみ取れる)が、「通さないぞぉ」と里崎氏が盛り上げる場面も。どちらも試合が進むにつれてだんだんと白熱し、ベンチからの応援も活発に。大人たちも「ナイスバッティング!」など積極的に声をかけていた。初めてボールに触る子も楽しめる、にぎやかな時間になった。

  • ボールを捕った位置が近かったため、里崎氏に手渡しする子も

  • 次に向かうベースを西村氏が教える

  • 4人のサインと記念品がプレゼントされた

試合終了後に閉会式が行われ、里崎氏が登壇。「楽しかったですか」と里崎氏が問いかけると、こどもたちは「はい!」と元気に答えた。里崎氏は午後の超電導リニア体験乗車にも触れ、「里崎さん(自分)も乗ったことないので楽しみです。ここからも皆さんの言うことを聞いて、元気に楽しんでいきましょう」と呼びかけた。

閉会式の後にサイン会も行われ、先ほど新幹線の車内で配られたヘッドカバーにプロ野球OBの4人がサインし、記念品のボールもあわせてプレゼントされた。このボールは日本野球機構がこども向けにプレゼントしているもので、親子でのキャッチボールに使いやすく作られているとのことだった。

4人のサインとボールを受け取った親子は順次バスへ。JR東海総合研修センターを後にし、山梨県のリニア実験センターへ向かった。

■超電導リニアに体験乗車、プロ野球OBとこどもたちの反応は

山梨実験センターに到着すると、最初にこどもたちとプロ野球OBの4人で記念撮影を行い、グループごとに順番にリニア改良型試験車に乗車。待機中のグループにも、超電導リニアの通過シーンや、ガイダンスルーム内での見学時間が設けられた。体験乗車を終えたこどもたちから、「楽しかった」「坂道も上ってた感じしなかった」「静かだった」「揺れなかったし、乗り心地良かった」といった感想を聞くことができた。

リニアの走行を見学する親子の中には、通過シーンを動画撮影した人も。実際に体験乗車した感想としては、「タイヤで走って、浮く瞬間がわかった」とのこと。午前中の野球ふれあい教室も楽しかったという。ガイダンスルームにリニア関連のパネル展示とL0系改良型試験車の縮尺模型(20分の1)、ほぼ実物大の写真も用意されており、親子でじっくり見学したり、記念撮影を行ったりしながら過ごしている様子だった。

  • リニア乗車前にこどもたちとプロ野球OBで記念撮影

  • いよいよリニアに乗車。報道関係のカメラに手を振る子もいた

  • 待機中に展示の見学や記念撮影も(写真はガイダンスルームの実物大写真)

プロ野球OBからも、リニア体験乗車についてのコメントがあった。初めて乗車したという里崎氏は、「初めての感じですね。これが浮いているんだと」とコメント。こどもたちの反応について、「むちゃくちゃ喜んでましたよ。500km/hになったときは歓声も上がってました」と話す。野球の観点からもリニアについてコメントし、「試合を最後まで見て東京(または名古屋)まで帰って来れる。選手も、試合終わってから、次の朝移動しなくても夜のうちに帰ることができると思うので、時間の短縮と、いろんなことに応用できて楽しみが増えると思います」と語った。

西村氏は「浮いた瞬間と、車輪に戻る時の感覚が全然違いました」、井端氏は「500km/h出て速いなとは思います。でも、速さの、身体にグッとかかる負担は一切ないです」、村中氏は「想像したよりも揺れがなくて、でも外からの景色は『のぞみ』の2倍以上の速さでした」とコメント。4人とも従来の鉄道とは異なる乗り心地を存分に体感したようだった。

  • リニア体験乗車中の様子(提供 : JR東海)

参加者全員がリニア体験乗車を終えた後、バスで東京駅へ戻り、解散となった。JR東海によれば、今回の応募倍率は約8倍だったという。午前中の反応を見たところ、もともと鉄道好きなこどもたちが多く参加していた様子だったが、最終的には皆が野球もリニアも両方楽しんでいた。里崎氏のコメントにもあったように、もしリニア中央新幹線が開業できたなら、試合が行われる日にスタジアムへ行き、その日のうちにリニアで地元へ帰る光景が実現するかもしれない。