第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、3回戦の渡辺明九段-豊島将之九段戦が9月7日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの熱戦を103手で制した豊島九段が開幕3連勝を飾りました。
2か月ぶりの対決
渡辺九段は1勝1敗、豊島九段は2勝0敗のスコアで迎えた3回戦。名人挑戦権を争ううえでともに負けられない本局は後手・渡辺九段の注文で横歩取りの戦型に進みます。7月に行われた直近の対局でも両者は横歩取りを戦っており、その際は相横歩取り調の力戦を豊島九段が制しています。
お互いの息が合った結果、本局はクラシカルな持久戦形に進展。先手の豊島九段が3筋の歩を突かずに駒組みを進めているのは後手の仕掛けを警戒してのもので、飛車の横利きを通したまま仕掛けを探る意図が見て取れます。間合いの計り合いが続いたのち、豊島九段が左桂を中央でぶつけて本格的な戦いが始まりました。
豊島九段の鬼手!
早々に定跡形を離れ、昼食休憩明けから長考合戦が始まります。続いて右桂を跳ね出した豊島九段は、後手が銀を逃げたタイミングで5筋の後手の歩頭に飛車を差し出す鬼手を披露。これを取られた場合は角で金を取り返す用意はあるものの、SNS上は「こんな手初めて見た」「クリックミスかと思った」「おおおおおお!?」と驚きの声であふれました。
渡辺九段はたまらず銀を繰り出してこの歩を支えますが、豊島九段もさらに飛車を押し売りして飛車銀交換を強要。駒損の代償として角を大きくさばいてペースをつかみました。この角を馬として自陣に引きつけた豊島九段は、丁寧な手順で後手の飛車を捕獲して駒損回復に成功。すぐにこれを後手陣に打ち込んで寄せの網を絞ります。
渡辺九段も小駒を駆使してなんとか反撃を試みますが、豊島九段の対応は終始冷静でした。終局時刻は23時44分、最後は自玉の受けなしを認めた渡辺九段が投了。勝った豊島九段は無傷の開幕3連勝となりました。敗れた渡辺九段は1勝2敗となっています。次回4回戦で豊島九段は永瀬拓矢王座、渡辺九段は佐藤天彦九段と対戦します。
水留 啓(将棋情報局)
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