第82期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、4回戦全14局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、2勝1敗同士の対決となった久保利明九段-石井健太郎六段戦は名古屋将棋対局場で行われ124手で石井六段が勝利。4戦全勝で走る藤井猛九段、戸辺誠七段に続いて昇級戦線に踏みとどまりました。
熾烈な昇級争い
3回戦終了時点で全勝は村山慈明八段、戸辺誠七段、谷川浩司十七世名人、藤井猛九段の4人。昨年と比べて2人多い28人が戦うB級2組は、3つの昇級枠を勝ち取るための熾烈な争いが続きます。2勝1敗同士での直接対局となった本局は、先手の久保九段のノーマル三間飛車に後手の石井六段が持久戦模様で対抗する構図に落ち着きました。
居飛車穴熊への組み換えを図った石井六段に対し、久保九段は軽やかな駒使いで局面を動かします。右桂を跳ねて後手の角を逸らせておいてから4筋の歩をぶつけたのが振り飛車党らしいコビン攻め。居飛車穴熊を阻止しながらこちらは石田流の好形に組み替えて、久保九段好調を思わせる中盤戦となりました。
不詰め読み切り石井六段が勝利
盤上右方の攻防で香を手持ちにした久保九段は、跳ねた桂を拠点として敵陣に香を打ち込み王手。田楽刺しの要領で銀を奪ったことでリードを広げたように思われましたが、ここから石井六段の粘り強い指し回しに手を焼くことになりました。1筋方面は明け渡し、左辺から先手の攻め駒を責めたのが石井六段の好着想です。
局面は攻め合いに転じて一層激しさを増します。久保九段が後手玉そばに馬を作った局面はいかにも危険な形ながら、石井六段は最後の長考で丁寧に自玉の不詰めを見抜きました。この馬を放置して2筋に金を捨てたのが最後の決め手。終局時刻は21時31分、久保九段の王手ラッシュを耐え抜いた石井六段が競り勝って今期3勝目を挙げました。
勝った石井六段は3勝1敗、敗れた久保九段は2勝2敗に。このほか、戸辺七段と藤井九段が開幕4連勝を飾っています。
水留 啓(将棋情報局)
この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄