トヨタ自動車のVIP向け超高級車「センチュリー」に新たなモデルが登場した。見た感じ、センチュリーのSUV版だと思えるのだが、発表会でトヨタ側の説明者たちは一度も「SUV」という言葉を使わなかった。その理由も気になるし、そもそも何を狙った新型なのかも知りたいところだ。

  • トヨタ「センチュリー」のSUVタイプ

    トヨタ「センチュリー」に新モデル登場!

SUVに見えるだけ?

センチュリーの新モデルは「新しいショーファーカー」を目指して開発したとのこと。セダンタイプに比べ全高は300mmも高く、タイヤもかなり大きくなっており、クルマの形からしてSUVと呼びたくなる雰囲気なのだが、トヨタは新車発表のプレスリリースにすら「SUV」という言葉を使っていない。かなり徹底したやり方だ。

  • トヨタ「センチュリー」のSUVタイプ

    「新しいセンチュリー」のボディサイズは全長5,205mm、全幅1,990mm、全高1,805mm、ホイールベースは2,950mm、前後席間距離は1,220mm、乗車定員は4人

  • トヨタ「センチュリー」のSUVタイプ

    「センチュリー(セダン)」のボディサイズは全長5,335mm、全幅1,930mm、全高1,505mm、ホイールベースは3,090mm、前後席間距離は1,135mm、乗車定員は5人

新モデル登場により、これまでのセンチュリーは「センチュリー(セダン)」という表記になっている。なぜ、今回の新型に何らかのサブネームを与えなかったのかと問われた中嶋裕樹トヨタ副社長は、「これがド真ん中のセンチュリーだと確信」しているからだと答えていた。

  • トヨタ「センチュリー」のSUVタイプ

    「新しいセンチュリー」は3.5LのV型6気筒エンジンにモーターとバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。フル充電で69kmを電気のみで走ることが可能だという。トヨタの製品企画担当によると、「ショーファーユーズの方の約8割は、1日あたりの走行距離が約50kmまでというデータがあります。ただ、ショーファーカーですから、いざ遠出をしようというときに電欠になってしまったら困るんです。ハイブリッドでも走行できるという安心感は、ショーファーカーとして必須の部分だと思います」とのこと

  • トヨタ「センチュリー」のSUVタイプ

    こだわったのは「乗り降りする人の所作がいかに美しく見えるか」(中嶋副社長)。VIPが乗る2列目(リアシート)は、ある程度の高さがないと、着物を着た人やスカート着用の人が足元を気にして、所作を崩してしまう可能性がある。なので、新モデルの開発では、最初にリアシートのヒップポイントを決めて、それからルーフの高さを考えたそうだ

どうしてこういう形のクルマになったのかというと、「結局は、カッコよさです。その結果として、SUVっぽく見えるのかもしれません」というのが製品企画担当の回答だ。全高を上げたのは車内のスペースを拡張するためでもあるが、風格があって、堂々としていて、カッコいいクルマを目指した結果として、いわゆるSUV的な見た目のクルマができあがった、ということであるらしい。

なぜSUVライクな新しいセンチュリーを作ったのか。その理由はセンチュリーの顧客が変化してきているからだ。セダンタイプは威厳があってフォーマル感たっぷりで、こういうクルマを好むVIPは引き続きセダンに乗り続けてもらえばいいわけだが、これだと自分には威厳がありすぎる、抵抗感があると考える客も増えているので、選択肢を増やしたかったというのがトヨタの考えらしい。「セダンに乗りたい方は、そのまま乗っていただければと思いますが、よりアクティブにクルマを使いたい方、車内で仕事をしたり、運転も楽しみたいという方、そうした新たなショーファーカーを求めるお客様を想像して開発しました」と製品企画担当は話していた。

新しい方のセンチュリーは2,500万円で月産30台を予定。ボディカラーや内装は、素材も含めかなり細かくカスタマイズできるそうだ。ただし、お金を持っていれば誰でも買えるクルマではなく、ある程度は売る側からの選考も入るらしい。