東宝映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』の完成報告会見が2023年9月4日、東京・帝国ホテルにて行われ、山崎貴氏(監督・脚本・VFX)、市川南氏(製作)、そして主演を務める神木隆之介、ヒロインの浜辺美波が登壇。日本が世界に誇るビッグスター「ゴジラ」のシリーズ最新作であり、かつてない恐怖と破壊のスペクタクルに満ちた大怪獣映画にかける意気込みが語られた。
1954年11月3日に公開された『ゴジラ』(監督:本多猪四郎)は、水爆実験によって安住の地を追い出され、東京へ上陸して大破壊を繰り広げる怪獣ゴジラの猛威を描いた怪獣映画の金字塔と呼ぶべき作品である。日本だけでなく海外でも大評判を取った『ゴジラ』は次々とシリーズ化されて人気を高め、大人から子どもまで、あらゆる世代から愛される「キング・オブ・ザ・モンスターズ=怪獣王」として現在も映画界に君臨し続けている。2021年にはアメリカ版ゴジラシリーズ『ゴジラVSコング』が公開され話題を集めたが、このたび2016年の『シン・ゴジラ』以来7年ぶりに「国産・実写」ゴジラが復活することになった。
『ゴジラ-1.0』は、2023年11月3日から公開されるゴジラシリーズ第30作である。昨年の3月から6月にかけて撮影を終え、VFX作業も完了。本編全体が完成したのは今年の5月であるという。「山崎貴監督がゴジラを撮る」と発表されてから今まで、タイトル以外のほとんどが謎に包まれていた本作だったが、会見の席で主要キャストとスタッフが情報解禁となった。さらに、1分22秒の「最新予告編」も流れ、新しいゴジラの凶暴さ、強さがぞんぶんにうかがえる迫力満点の映像が送り出された。
ステージには、見るからに獰猛そうな本作のゴジラ立像を背景に、キャスト・スタッフ合わせて4名が姿を現した。
製作を代表し、東宝株式会社専務執行役員・市川南氏が「『シン・ゴジラ』から7年、このたび新しい『ゴジラ』が出来上がりました。山崎監督らしい、斬新なゴジラ映画です。どうぞ、ご支援をお願いします」と、ひさびさの国産実写ゴジラに確かな手ごたえを感じつつ、挨拶した。
山崎貴監督は「ずいぶん前から『ゴジラを作りたい』と思っていて、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)の冒頭でゴジラに出てもらったことがありましたが、いよいよ僕の夢が叶いました!」と、念願といえるゴジラの監督を務められたことに大いなる喜びを感じつつ、挨拶を行った。
本作の主人公・敷島浩一を演じる神木隆之介は「このたび、日本を代表する映画キャラクターである『ゴジラ』に携わることができて、幸せに思っています」と語り、日本じゅうで知らない者がいないゴジラの映画に主演として参加することへの喜びをあらわにした。
本作のヒロインで、焼け野原となった日本で浩一と出会う女性・大石典子を演じる浜辺美波は「私は芸能活動を始める前からゴジラに見守ってもらい、ずっと側にいるように思っていました」と、自身が所属する東宝芸能の先輩女優たちと同じく『ゴジラ』作品に出演し、注目されることへの喜びを示した。
市川氏は『ゴジラ-1.0』の企画経緯について「2016年の『シン・ゴジラ』が興収80億円を越える超ヒットを飛ばし、作品の評価も高かったので、次のゴジラをどうするか、思いあぐねて2、3年が経ちました」と、ヒット作『シン・ゴジラ』が存在するがゆえの、プレッシャーがあったことを明かした。
続いて「山崎監督には、2019年の『アルキメデスの大戦』をやっていただいたとき、食事の席で『次のゴジラ、どうですか?』とお誘いしてみました。すると監督は『自分がゴジラを手がけるなら、旧い時代設定でやってもいいんじゃないか』と乗ってくださったので、じゃあやりましょうという話になり、プロット(あらすじ)と脚本作りにとりかかりました」と、数々のヒット作を送り出した山崎監督にゴジラを託すことにした流れを説明した。
神木、浜辺のキャスティングについては「プロデューサーや山崎監督と相談し、このお2人で行こうと決まりました。2019年に『屍人荘の殺人』で共演されていたお2人に本作のオファーをかけ、脚本を読んでいただいた上で快諾していただきました。今放送中のNHK朝ドラ『らんまん』は、ゴジラの後に決まったんですね」と、神木と浜辺が夫婦役で出演している連続テレビ小説『らんまん』のキャスティングは、今回の『ゴジラ-1.0』の前に決まったことだと強調した。
浜辺は市川氏の話を受け、「朝ドラのお話は、ちょうどゴジラの撮影をしている途中にいただきました。撮影の終わりの挨拶で、神木さんに『これからも長くご一緒させていただきます』と挨拶してから、これまでずっと仲良くさせていただいてます」と言ってニコリとほほえんだ。
山崎監督は、なぜ今回の舞台を「戦争が終わった直後の日本」にしたのかの理由として「ゴジラは核の脅威であるとか、戦争の影などが怪獣の形をとって現れるイメージ。現代日本と対峙するゴジラという作品は『シン・ゴジラ』であまりにも上手くやっているので、これに対抗するのなら、と昭和の『戦後』という時代を選んだんです」と、『シン・ゴジラ』とは違う方向性を探った結果だと強調した。この言葉を受けて市川氏は「日本を襲うゴジラに対して、日本人には軍隊も無ければ武器・弾薬の類もない。こういう時代にゴジラを暴れさせるというのが、斬新だと思います」と山崎氏の卓越した感覚を絶賛。
山崎氏はまた「三丁目~のときのゴジラは登場時間が短かったので、なんとかあのころのCGスキルで乗り越えることができましたけど、ゴジラ映画を作るのは大変だなあと今回思いました。『シン・ゴジラ』のとき、僕は『こんな凄い作品を作ったら、次に『ゴジラ』をやる人は大変ですね』って、まだ他人事だったのでコメントをしていましたが、まさか今になってその言葉がブーメランになって自分に返ってくるとは……(笑)。でも、以前からゴジラはやってみたかったですし、技術的にもいろいろ成熟してきた現段階だと、もしかしたら頭に思い描いていたゴジラができるかもしれないと思いました」と語り、CGの技術が進歩した現在だからこそ、自身がイメージしたゴジラ像が描けるかもしれない、という自信のような思いがあったことを明かした。そして「改めて映画を観てみると、この20数年間、自分が吸収してきた知見や技が惜しみなくつぎ込まれた、集大成感のある作品になっています」と、『ゴジラ-1.0』の出来栄えに自信を見せた。
神木は改めて出演オファーを受けた際のことを振り返り、「映画を観たことのない人であっても、ゴジラのキャラクターは知っている。そんな世界的にも有名な作品に自分が携わることができるのか、何を表現して、どれだけの思いを背負ってやっていけるとか、とてつもなく大きなプレッシャーがありました。それに自分が耐えられるのか、不安でしたけれど、それでもぜひ『やってみたい』と思いました」と決意を固めたことを明かした。
浜辺もまた「出演には不安もありましたが、山崎監督や神木さんを信じ、すべてをかけて典子という役を演じさせていただきました」と笑顔で語り、その場の空気を和ませた。
映画を観た感想を訪ねられた神木は「そこにゴジラがいましたね。恐ろしかったです。撮影のときはグリーンバックでの芝居が多く、自分の演技がどんな形になっているかわからないままやっていました。山崎監督から説明していただき、これくらいの大きさのゴジラが街を破壊しているんだなと思い込むように努めました。映画の観客という意識から飛躍して、まるで自分がゴジラの襲撃を受けているかのような緊張感、思わず息をひそめる臨場感がありました」と、ゴジラの日本襲撃シーンがリアルなVFXで表現されている部分を強調した。
浜辺もまた「映画を観るというより、ゴジラを体感しに行くという感じ。目の前にゴジラが現れて、こちらへと迫りくる感覚がありました」と、本作でのゴジラがいかにリアリティを備え、圧倒的な迫力で観客の感情を刺激するのかを熱弁した。
映画で印象に残ったことは?というMC(笠井信輔アナウンサー)の問いに対し、神木は「CGの迫力がどれくらいなのかを監督が説明してくださるのですが、そのとき『こうゴジラが来て、ドアーッ! ドーン! そしてブワーッ! ガーッ! バーッとなるんだよ!』と、擬音が多くなるんです(笑)。そうすると僕も、なるほど! これを受けてリアクションしないといけないなと、臨場感が伝わってきます」と、山崎監督のイメージするゴジラの迫力が、数々の擬音と動きによって表されていたことを挙げた。これについて山崎監督は「すぐ目の前に迫ってくるゴジラの恐怖を見せたかった。最後はもう言葉での説明じゃ追いつかず、何を言っているかわからなくなりましたが(笑)、ちゃんと僕の思いを受け止めてくれて、ありがたかった」と、神木に感謝する場面が見られた。
空襲によって一面焼け野原となった東京の街を再現したセットでの撮影を体験した浜辺は「歩いていて、転びそうになるくらいの高低差がありました」と、セットのリアリティに言及。山崎監督は「スタジオに大量の土を運び込んで、焼け野原を作っていました。美術チームは『これってセット作業というよりは、土木作業だな』なんて言ってました」と現場スタッフの苦労を振り返った。そして浜辺は「撮影では、いろいろな体験をしました。こんなことができるのは『ゴジラ』の映画だけだなって思えるような、観ているとヒヤッとする場面もあります」と、まだ詳細が明かせないものの観客がハラハラするようなシーンが存在することを匂わせた。
戦争が終わり、本土へ引き揚げてきた兵隊役を演じるにあたって、神木は「今まで経験したことのない役で、役作りをするのが本当に苦しかった。どれくらい自分自身を追い込めばいいのか、撮影に入る前から精神的に苦しんで、迷いながら手探りで作っていきました」と、戦争の傷跡を心に深く残し、苦しみ続ける敷島の役作りを真摯に考え抜いていたことを明かした。
典子の役作りについて浜辺は「戦後の絶望的な環境を強く生き抜く女性を演じるにあたって、自分の中で『生きてこそ』だと唱えながら、最後まで駆け抜けようと思いました」と、すべてが破壊され、荒れ果てた状況の中であってもたくましく生きようとする典子の人物像について語った。
銀座の街を蹂躙するゴジラから逃げ惑う大勢の人々と共に演技をした神木は「あれだけたくさんの方々がギュッと一ヵ所に集まって、命からがら本気で逃げ惑うお芝居をされていたのが、強く印象に残っています。みなさんの気迫が凄かった。本当に命の危険を感じるというか、俺も早く逃げなきゃ!という気持ちにさせてくれました。貴重な体験でした」と、エキストラで参加した一般のゴジラファンたちの「本気度」が凄かったと、彼らの迫真の演技を称えた。
浜辺は、典子が初めてゴジラを目撃した場面での「あれが……ゴジラ」というセリフが強く印象に残ると語り「一言のセリフなのですが、このとき『ゴジラの映画を撮っているんだなあ』という実感が強くわきました。一言なのにすごく緊張して、何度も撮り直しました」と、ゴジラとの「共演」シーンについて気持ちが強くこもったことを明かした。
『ゴジラ-1.0』は、ラージフォーマット(IMAX、MX4D、4DX、Dolby Cinema)を含め、東宝配給作品で最大級となる「全国500館以上」での公開が決定している。これについて山崎監督は「体感してほしい映画、劇場へ行って観るにふさわしい映画にしたいと思って作っていました。ラージフォーマットは『ゴジラ』映画に向いていると思います。大画面の迫力もそうですが、音響もすごいんです。ゴジラが吼えると観ている人のお腹が震えて『ここにゴジラが来ている!』と脳が錯覚を起こします。ラージフォーマットはそれぞれ、いろんな方向で凄いですので、ぜひフォーマットめぐりをしていただきたい」と、ラージフォーマットの魅力を熱烈アピールした。
最後に、『ゴジラ-1.0』がどんな映画なのか一言で表してほしいという要望を受け、浜辺は「夢」、神木は「見よ、これが絶望だ」と、作品の本質を突いたキーワードを披露。2人の言葉を頼もしそうに聞いていた山崎監督は「再生」という言葉を挙げて「絶望的で、最悪な状況の中でも人間は決してあきらめない。武器も何もない状態で、襲い来るゴジラに対して人々がどう立ち向かっていくのかを観ていただきたい」と語り、映画への期待を大いにあおった。
『ゴジラ‐1.0』は2023年11月3日より、全国劇場にて公開。
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