2023年9月1日より期間限定上映される東映Vシネクスト『爆竜戦隊アバレンジャー20th 許されざるアバレ』は、『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003年)の放送20周年を記念した作品である。スーパー戦隊シリーズの歴史と伝統を守りつつ、敵と味方のポジションが目まぐるしく変わったり、予想のナナメ上を行くストーリーが展開したりと、さまざまな面で「アバレ」たテレビシリーズ。本作は『アバレンジャー』の面白さを見つめ直し、アバレンジャーが20年後の現在、世間からどのように受け止められているのかを真摯に考えた、社会風刺の精神に満ちたユニークな内容となっている。
本作の演出を手がけたのは、『TRICK』や『民王』『警視庁アウトサイダー』など、個性的な連続ドラマで知られる木村ひさし監督。子どものころから大の特撮ファンだという木村監督は、オリジナル『アバレンジャー』への強いリスペクトを込め、さらなる作品世界の強化につとめ、娯楽精神の強い作品を完成させている。ここでは木村監督に単独インタビューを行い、監督の『アバレンジャー』への愛着や、演出にあたって力を入れた部分、特撮ヒーロージャンルへ本格参加したことに対する思いを尋ねた。
――木村監督はどのような経緯で今回の『アバレンジャー』20周年記念作品を手がけることになったのでしょう。
もともと特撮ものと呼ばれる作品が好きだったんです。特に『アバレンジャー』は子どもが小さかったので、一緒に毎週観ていてすごく好きでした。その後、WEBドラマの仕事で西(興一朗/アバレッド・伯亜凌駕役)さんとご一緒する機会があり、僕がどれだけアバレンジャーが好きなのか、連日のように語っていたことがあったんです(笑)。そんなこともあって、アバレンジャー10周年となる2013年に「新作を作りたい」という話をいただいて、塚田英明プロデューサーともそのときにお会いしてたのですが、諸事情で企画が流れてしまいました。そこからさらに10年が過ぎ、今回「20周年記念作」をやることになり、ふたたび声をかけていただきました。撮影スケジュールも僕に合わせてもらったりして、かなり恵まれた環境で参加できた感じです。
――特撮ヒーロー作品にハマるきっかけになった作品は何ですか?
子どものころに熱中して観ていた作品よりも、8mmフィルムで映画を作り始めた高校時代に観た作品に強い思い入れがあります。ヒーロー作品を撮りたいと思って、勉強の意味で当時放送していた『宇宙刑事ギャバン』(1982年)や『宇宙刑事シャリバン』(1983年)、『科学戦隊ダイナマン』(1983年)『超電子バイオマン』(1984年)などを観たら、ものすごくよく出来ているし、面白い!と思ったんです。青春時代に観たこれらの作品と、結婚したあと、子どもと一緒に観ていた『アバレンジャー』『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)、『仮面ライダー龍騎』(2002年)、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)あたりの作品は強く印象に残っています。
――本作のストーリーは、今日的な社会問題を盛り込んだ風刺精神の強い内容です。
ストーリーについては、すでにプロデューサーや主演の西さんたちの中である程度できあがったものがあって、僕はその段階で参加をしています。アバレンジャーが20年経ってネットで炎上騒ぎを起こす、というお話は面白いと思いましたし、アバレンジャーらしいなという感想を持ちました。僕としては、台本作りから関わっていたのではなく、できあがった台本に乗っかって、各部分を膨らませていくというスタイルで取り組んでいました。
――テレビで人気の辛口コメンテーター・城南大学准教授の五百田葵(いおた・あおい)役に、大友花恋さんを起用されたポイントはどこだったのでしょう。
台本を読んだとき、花恋さんのイメージが浮かんだので、ぜひ出ていただきたいとオファーしたんです。子どものころアバレンジャーが大好きだったのに、20年経って「敵」に回るという設定にしては、ちょっと若すぎるかなとも思ったのですが、以前に社長秘書の役をやっていたのを観て、ああいう芝居が出来るのなら今回の役柄がハマるんじゃないかと確信しました。前半と後半で、大きく変化する葵の感情を、彼女だったらうまく表現してくれると期待していましたし、期待どおりのお芝居で応えてくださいました。もともと花恋さんも『アバレンジャー』を観ていたらしく、現場でもすごく楽しそうにされていて、嬉しかったですね。
――同じく討論番組のコメンテーター役で、『宇宙刑事シャリバン』の渡洋史さんが「渡米ヒロシ(わたりごめ・ひろし)」という大胆な役名で出演され、司会者の田原々(演:殺陣剛太)とのコミカルなかけあいが面白かったです。
『シャリバン』がすごく好きで、渡洋史さんもファンとして尊敬しています。今回の作品で渡さんに来てもらうにあたって、どんな風に「おいしく」表現しようかと考えて、ああいった役柄になりました。笑いの中にもスマートさがあって、良い役になったと思っています。司会の田原々役は、こちらも僕の大好きな映画『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズの「北高の工藤」役を演じられた殺陣剛太さんに来てもらいました。ビーバップとシャリバン、僕の中では「夢の共演」でした(笑)。僕と同じ世代、80年代に青春を過ごした方々にはたまらないシーンではないかと思っています。