キリンビールは8月28日、事業戦略について説明。それによれば、上期は市場を上回る推移で好調に推移したという。下期には強固なブランド体系を構築すべく「一番搾り やわらか仕立て」を10月10日より期間限定発売し、また「一番搾り とれたてホップ生ビール」を11月7日より限定発売。そして、新たな成長エンジン育成のため「スプリングバレー JAPAN ALE<香>」の通年販売を10月24日より開始すると発表している。

  • キリンビールが事業戦略説明会を開催。写真は、キリンビール 執行役員マーケティング部長の山田雄一氏

■ビール事業が好調

キリンビール マーケティング部長の山田雄一氏は、上期業績について「コロナの5類移行があり消費マインドが高まりました。円安および原材料の高騰、もろもろの値上げで節約志向も高まってはおりますが、価値を感じるものに対しての消費意欲は向上している、との分析もあります。このように外部環境のめまぐるしい変化が消費マインドに影響をおよぼす昨今ですが、キリンビールでは一番搾り、一番搾り 糖質ゼロをリニューアルして発売しました。お客様のインサイトを捉えたマーケティング戦略も奏功し、ビール事業は好調に推移しています」と振り返る。

  • 2023年 上期の振り返り

一番搾りは1-7月のトータルで前年比7%増、一番搾り 糖質ゼロも同 約3割増と堅調に伸長。また同社が新たな成長エンジンと位置づけるクラフトビールについても、全国13のブルワリーと連携したイベントを初開催したほか、スプリングバレーのコラボショップを展開するなどしたことで「それぞれのお客様接点で成果を創出できた」(山田氏)と評価する。

  • クラフトビールカテゴリの振り返り

折しも2023年10月には2回目の酒税改正が実施される。ビールが値下がりし、新ジャンルが値上がりすることで「再びビールに注目が集まる」と山田氏。この機を捉えてビールの裾野をさらに広げていきたい、と力を込める。ちなみに、3回目の酒税改正(2026年)を経てビール類の税額は350mlあたり54.25円に統一されることが決まっているが、キリンビールでは2026年以降も、ビール、発泡酒、新ジャンルのカテゴリを残したまま商品展開していくとしている。

  • 今後の環境変化

■新しい美味しさでビールの裾野拡大へ

下期には3つの新商品を投入する。

「キリン一番搾り やわらか仕立て」は、やわらかなうまみと軽やかな後味が特徴。麦の美味しいところだけを搾る「一番搾り製法」はそのままに、新たに”小麦麦芽”を採用した。消費者の、無理しすぎないで自然体で過ごしたい、肩肘張らずに気軽に飲める飲みやすさが欲しい、といったニーズを捉えたという。なおモニターからは「軽やかで飲みやすいけどコクもある」「口当たりが優しい」といった声が寄せられている。山田氏は「新しい美味しさでビールの裾野を広げていきます」と説明する。

  • 「一番搾り やわらか仕立て」は10月10日より期間限定発売

  • パッケージ容量は、350ml缶、500ml缶。価格はオープン。アルコール分は5%

「一番搾り とれたてホップ生ビール」は、2023年に収穫した採れたての岩手県遠野産ホップによる旬の美味しさが味わえる商品。なお同シリーズは今年で発売20年目を迎えており、累計販売本数は3.5億本を突破したという。

  • 「一番搾り とれたてホップ生ビール」は11月7日より限定発売

  • パッケージ容量は、350ml缶、500ml缶。価格はオープン。アルコール分は5%

また「SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>」は希少な日本産ホップを一部使用した、爽やかな香りが楽しめるクラフトビール。海外産ホップに加え、キリンが開発した日本産ホップ「MURAKAMI SEVEN」(ムラカミセブン)および「IBUKI」(イブキ)を一部使用した。山田氏は「華やかな香りが感じられる海外ホップに、イチジクや蜜柑、マスカットのようなユニークで爽やかな香りの日本産ホップを組み合わせました」と紹介する。

  • クラフトビールの「SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>」は10月24日より全国発売

  • ムラカミセブンを一部使用したキリン初の缶商品となる。パッケージ容量と希望小売価格は、350ml缶が266円、500ml缶が353円。アルコール分は6%

販売目標については、「一番搾り」ブランドのトータルで約2,880万ケース(前年比+3.5%増)、「スプリングバレー」ブランドのトータルで約230万ケース(同 36.5%)としている。

  • 販売目標。ケースの単位は大びん633ml×20本換算

■香りにこだわった理由は?

最後に質疑応答の時間がもうけられ、山田氏が対応した。

SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>について、香りにこだわった理由を聞かれた山田氏は「キリンビールでは、日本にクラフトビール市場を創造していきたいという考えがあります。でもスプリングバレーは、これまで『価格の高いプレミアムビール』と捉えられがちでした。私たちとしては、スプリングバレー=通向けのハイスペックなビールではなく、あまりビールを飲まない方にも身近で新しい楽しみ方ができるビールとして展開していきたい。そこで今回は(ビールに詳しくない人にも分かりやすいように)クラフトビールの魅力のひとつである『香り』にこだわって開発しました」と説明した。

  • 香りにこだわった、SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>

キリン一番搾り やわらか仕立てにおいて小麦麦芽を使用した背景については「コロナ禍などを経て、市場ではさらにビール離れが進んだと感じます。ビールから離れているお客様には、どうやったら飲んでもらえるか。特にビールから遠い存在となっている若年層に、もっとビールを身近なものにしてもらうため、多様化が進むお客様の『自分らしく過ごしたい』という価値観に触る商品の開発を目指しました。現代のライフスタイルに合う味覚、ということで小麦麦芽を採用し、やわらかなうまみ、かろやかな余韻といったところを実現させました」と回答した。

  • 一番搾りブランドのラインナップは写真の通り