2022年の名古屋からスタートした、『仮面ライダー』の50年以上に及ぶ歴史を立像・アイテム展示や特別映像でふりかえる大規模イベント『生誕50周年記念 THE仮面ライダー展』は、福岡、札幌、東京、静岡をめぐり、2023年7月15日から大阪府枚方市の「ひらかたパーク」で開催されている(9月3日まで)。
ここでは、『THE仮面ライダー展』大阪アンバサダーを務める、大阪府寝屋川市出身の奥野壮(仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ役)にインタビューを行い、地元大阪で仮面ライダーの展示イベントが開催された喜びや、『仮面ライダージオウ』(2018年)放送から5年という歳月を経た今の心境、そして自分自身も50年の歴史の一部となって輝きを放ち続けている『仮面ライダー』シリーズ全体の魅力について、気さくに語ってもらった。
――地元大阪で『THE仮面ライダー展』が開催され、奥野さんが大阪スペシャルアンバサダーになられたことで、地元のお友だちからはどんなリアクションがありましたか?
オープニングセレモニー(7月14日)の前日に大阪へ戻り、夜に地元の友人たちとご飯を食べに行ったんです。そのとき「オレ、明日ひらパー(ひらかたパーク)で仕事すんねんけど、どう思う?」って言ったらみんなが「マジで!? すごいな!!」なんて、ドラマや映画のときよりもめちゃくちゃ良いリアクションをしてくれたんです。それを聞いた瞬間、僕たちにとって「ひらパー」ってこんなに大きな存在だったんだなあとしみじみ思いました。何しろ、子どものころから遊びに行ってて、生活の一部みたいな遊園地ですからね。なんて光栄なことなんだ……と感激しました。
――『THE仮面ライダー展』の会場をすべて回られたときの感想はいかがでしたか。
展示の物量に圧倒されました。昭和の10人ライダー(1号~ZX)がズラリと並んだ立像をはじめ、各エリアを回るたびに「マジで!?」「こんなものまで展示してんねや!?」と、驚きの連続でした。僕が出演した『仮面ライダージオウ』が、ここまで壮大な仮面ライダーの歴史の中にしっかり加わっている事実に、感動を覚えましたね。思い起こせば『ジオウ』が始まったころは「仮面ライダーになったー! ウキウキ、嬉しい!」みたいな気持ちのほうが強くて、それが撮影を重ねていくうち、だんだん「仮面ライダーの歴史の重み」みたいなものを感じるようになりました。印象的だったのは、平成仮面ライダーそれぞれの「変身ベルト」が並べられたスペースです。最初の『仮面ライダー』から始まって、昭和ライダー、平成ライダーと、時代の移り変わりに合わせてライダーのヒーロー像も変化しながら、ずっとつながっている。自分がライダーをやっていた当時は気付くことができなかった、仮面ライダーの大切さや感謝の気持ち、いろんな感情がわきでてくる展示会でした。
――『仮面ライダージオウ』コーナーではソウゴ、ゲイツ、ウォズの衣装やアナザーエグゼイド、アナザービルド立像といった展示物が充実していました。大阪会場の目玉として、50年後の魔王=「オーマジオウ」立像が今回初めて展示されたのも話題を呼んでいるようです。
僕がいちばん「おおっ!」と目を見張ったのは、オーマジオウでしたね。大阪会場で初めて見ることのできる立像というのもいいじゃないですか。マスクとか、よく近づいて観ていただけるとわかりますけど、アップ仕様のもっとも精密に造型されたものなんです。ボディ部分に近づいてみると、戦闘でついたキズなんかがわかったりして、「ああ~、このオーマジオウ、実際に撮影で使われたんやなあ」と感慨深くなります。仮面ライダーのスーツや衣装、小道具に顔を近づけて、じっくり観られる機会って、そうそうあるものじゃないですよ。僕がいま倉庫へ顔を出して「すみません、個人的にオーマジオウ見せてもらえますか?」なんて言っても、まあ断られるでしょうね(笑)。貴重な体験ができました。みなさんも期間中、ぜひオーマジオウだけでも一目見てください!
――昭和・平成・令和と3つの時代にまたがって、仮面ライダーは活躍してきました。奥野さんが会場で初めて観て、気になったライダーはいましたか。
会場のモニターにシリーズ各作品の「名場面映像」が流れているのですが、そこで『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』(1992年)に目が行きました。変身シーンがとても生々しく、人間の目が瞬間的に赤く変わるとか、このころの撮影技術がここまで優れていたのかと、衝撃を受けましたね。超精巧なダミーヘッドを使っているそうなのですが、観ていて「おおー、こんな変身もあるんや!」と興奮しました。おそらく当時観ていた人たちにも僕と同じような衝撃があったと思うと、ワクワクしてきます。自分が生まれる前のライダー、幼くて記憶がおぼろげな時期のライダー、そしてテレビで熱中して観ていたライダーなど、さまざまなライダーの「時間」を行ったり来たりできるところが魅力です。
――まさに、さまざまな仮面ライダーの時代をめぐる旅をしてきたソウゴを思わせる、よい言葉ですね。ソウゴを演じてこられた奥野さんはまさに、『THE仮面ライダー展』のスペシャルアンバサダーにふさわしい方だと思います。
確かに、それは自分でも思います(笑)。各作品のコーナーにキャラクター紹介のパネルがあるんですけど、写真を見ていて「あっ、知ってる人」とか「この人、共演したことある」とか、見つけながら巡っていましたから!
――オープニングセレモニーでは、大勢の仮面ライダーファンを乗せた京阪電鉄「仮面ライダー」特別列車に奥野さんが乗り込み、大きな歓声が上がっていましたね。俳優さんとファンとの、あの「距離の近さ」は何と言いますか、実に関西的な感覚がありました。
あの距離感、僕としても「こんなに近くて、ええんかな?」と思うくらいでした(笑)。あれだけの数のファンから「キャー!」と言われたのは、『ジオウ』のファイナルトークイベント以来だったかもしれません。役者をやっていて、ファンの方と直接お会いするってイベントは、写真集やカレンダーのお渡し会など、わずかしかないですからね。ひさびさに「キャー」を目いっぱい浴びまして、とても気分がいいです(笑)。
――以前の取材で、奥野さんは『ジオウ』の1年間で俳優として人間として、着実な成長を実感したとお話されていました。あれからさらに月日が流れた今、ご自身がどんな風にステップアップされたと思いますか?
『ジオウ』のときはずっと同じ役を1年演じることで、前できなかったことができるようになるなど、変化がわかりやすかったんです。まだ右も左もわからないタマゴの状態から、なんとか役者としてやっていけるようになるまでの1年ですから、はっきり「成長できた」と実感しますけど、今はどうなんだろう? 日々、人として役者として、一歩ずつレベルアップの階段を上り続けていることができていれば、それが自分にとっての「成長」だと呼べるかなって思います。
――そのように、ご自分を客観視して語れるというところこそ、今もなお着実に成長されていることの表れですね。
そう言っていただけると嬉しいです。自覚があるところとしては、フリートークの苦手意識がだんだん無くなってきましたね。『ジオウ』のとき、映画の舞台挨拶があったりするとぜんぜんしゃべることができなくて、トークの達者な渡邊圭祐(ウォズ役)さんに回してもらっていたところがありました。今もうまくしゃべることができているかわからないですけど、自分の言葉で、自分が言いたいことが徐々に伝えられているかな、と思えるようになりましたね。
――最後に、仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ、そしてすべての仮面ライダーを愛するファンのみなさんに向けて、奥野さんからメッセージをお願いします。
『仮面ライダージオウ』の放送終了から約4年、改めて仮面ライダーの世界にこういう形で携われることには、ほんとうに感謝していますし、誇りに思います。これもジオウ、常磐ソウゴを愛し続け、応援してくださったみなさんのおかげです。改めてお礼申し上げます。『THE仮面ライダー展』は仮面ライダーの歴史や重み、カッコよさなど、いろいろな要素が詰め込まれています。ふだん観られない貴重なスーツやアイテムが観られるワクワク感など、さまざまな感情を得られる展示会。ぜひ京阪電車に乗っていただいて、ひらパーへ遊びに来てくださると、とても嬉しいです!
『生誕50周年記念 THE仮面ライダー展』大阪会場(ひらかたパーク)の開催は9月3日まで。最新シリーズの『仮面ライダーガッチャード』や、2024年公開が予定されている『仮面ライダー555(ファイズ)20th パラダイス・リゲインド』の立像展示など、見どころ多数。そして「あなたと共に生きた仮面ライダーは誰ですか?」と題されたメッセージボードが用意され、入場された方々が仮面ライダーへの熱き想いを書き残すことが可能。なお『THE仮面ライダー展』今後の開催場所、開催期日は公式サイトをご確認いただきたい。
(C)石森プロ・東映