そんなQREATIONのクリエイターたちが手がけるTikTokに、鈴木氏は「もう米(よね)ちゃん最高です! TikTokから本編に興味を持って見てもらうという目的は間違いなくあるんですけど、何より伝えるべきメッセージに向かって一緒に並走してくれている感じがあるんです」と絶賛する。

TikTokの総再生数は約7,000万回(18日現在)で、他の縦動画プラットフォームを加えると1億回に迫る勢いだが、鈴木氏が求めているのは数字ではない。「そこばかり見ちゃうと、100万再生で当たったら、似たようなものを出して80万再生を担保していくような形が正解になってしまう。そうじゃなくて、見たことがない、新しいものをどんどん出してもらいたいんです」(鈴木氏)と、とにかくクリエイティブ重視で、数字は後から付いてくれば良いという考え方だ。

その姿勢に、「何か当たったものがあっても、全部スクラップ&ビルドで新しいものを生んでほしいということなので、TikTokのクリエイターたちもすごく楽しんでくれています」(米永氏)と受け止めているそうで、お互いが同じ方向を見て取り組めているようだ。

さらに鈴木氏は、米永氏のチームについて、「SNSのノウハウがあっても、ちゃんとドラマと並走できる胆力、持久力、瞬発力のある人って、ほぼ皆無なんですよ。このパートナーシップが素晴らしいです」と感謝。具体的に、「TikTokを撮る人と演者の距離感というのは、スマホの画面に出るんですよね。外から来た人に『撮りますよ』って言われると、取り繕ったような顔にしかならないんですよ。これを僕は、ニコッとしてパチっと撮る“ニコパチPR”と呼んでるんですけど(笑)、米永さんのチームはウソのない表情を引き出してくれるんです」と、その効果を語る。

これが実現できる理由は何か。米永氏は「僕がテレビ局出身で、作り手が持っている熱量や、どんな思いで1つの作品が作り上げられて世の中に出ていくかというところを、新卒の感受性豊かな時期に経験することができた」という自身の“テレビ現場”の経験値と、「TikTokのトップクリエイターが裏側に入って、彼らのクリエイティビティをいかんなく発揮してくれていることが大きいと思います」というマッチングが背景にあると分析。

その上で、「僕らがしっかり並走させていただけるのは、努さんが作り上げているドラマのメッセージの“原液”の部分がすごく濃いということと、スタッフの皆さんが僕らのチームと深くコミュニケーションを取ってくれていることが大きいと思っています。そのおかげで、僕もクリエイターのメンバーも、『最高の生徒』という作品自体や出演者のキャラクター、素の姿も含めて、全部好きになって取り組めていて、だからこそ、僕らじゃないと切り取れない部分を見つけて、制作の皆さんが伝えたいことを発信して、一緒に走っているという感覚があります」と、今回のタッグが成功している要因を述べた。

  • TikTokの撮影風景

■出演者、所属事務所の理解も進む

SNS施策に対する出演者や所属事務所の理解も、近年は大きく進んでいるという。

「少し前は、『SNSいっぱいやります』とか『切り出し動画たくさん出します』と書いた書類を作って説明してたんですけど、今はもう必要ないですね。ドラマが盛り上がるために、みんながやるべきことなんだと強く理解してくれています。もちろん、『このカットはNGです』みたいなことはあるんですけど、“作品のためであればみんなで頑張ってやっていきましょう”という空気になっていますね」(鈴木氏)

米永氏にとっては、「このドラマは絶対にSNSも全力でやって成功させていくんだという空気感と、みんなが楽しんでくれる空気感があるので、フルスイングでやらせてもらっています」と、抜群の環境が整えられているようだ。