藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、第4局が8月15日(火)・16日(水)に佐賀県嬉野市の「和多屋別荘」で行われました。対局の結果、相掛かりの力戦を85手で制した佐々木七段が今シリーズ初勝利を挙げました。
相掛かりの力戦
0勝3敗と後がない状況に立たされた佐々木七段はタイトル奪取の望みを得意の先手番相掛かりに託します。8筋に迫る後手の飛車を放置したまま右桂の活用を急いだのが用意の作戦で、場合によってはこの持ち歩を生かして攻撃的な構えを取る狙いが見て取れます。実戦は後手の藤井王位が強気に横歩を取ったことで局面が大きな動きを見せました。
定跡を外れた局面を前に両者1日目から長考が続きます。盤上中段に漂う敵飛に狙いをつけた佐々木七段は自玉そばの左金を力強く繰り出しました。ここで藤井王位が次の手を封じて1日目の戦いが終了。2日目に入ってから今度は盤上右方に逃げ場を求めた藤井王位の飛車に対し、佐々木七段は切り札となる手段を用意していました。
渾身の角打ちで佐々木七段が1勝目
手番を握った佐々木七段が4筋に放った角が、本局の命運を左右する一手になりました。後手の飛車が盤上左辺に逃げ出すのを防ぐ単純な狙いながら、金銀が偏在する藤井陣には飛車の打ち込みが多いため対応は容易ではありません。控室にいる中田功八段(立会人)も感心した角打ちを前に、藤井王位の持ち時間はみるみるうちに減っていきます。
この飛車を捕獲したのち大駒4枚を独占した先手の佐々木七段は、満を持して寄せに向かいます。小駒を駆使して猛追する藤井王位を尻目に、角捨ての王手が冷静な決め手になりました。終局時刻は18時26分、自玉の詰みを認めた藤井王位が投了。投了図で、中盤に打った佐々木七段の角は後手玉の逃げ道に先回りする要の駒として働いていました。
これでスコアは佐々木七段の1勝3敗に。敗れた藤井王位は「(佐々木七段の角打ちは)見落としていて、打たれてみると飛車が取られる形で厳しくした」との感想を残しています。注目の第5局は徳島県徳島市の「渭水苑」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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