ビジネスメールなどでよく見掛ける「ご一考いただければ幸いです」ですが、その詳しい意味や効果、「ご検討いただければ幸いです」との違いをご存じでしょうか。

本記事では「ご一考いただければ幸いです」を分解して詳しい意味を解説。使い方と例文や注意点、「ご一考」を含むその他のフレーズや「ご検討」との違いも紹介します。言い換えや英語表現もまとめました。

  • ご一考いただければ幸いですとは

    「ご一考いただければ幸いです」の意味や使い方、「ご一考」を含むその他の言い回しなどを紹介します

「ご一考いただければ幸いです」の意味と読み方とは

「ご一考いただければ幸いです」とは、自分をへりくだり、相手を立てながら「(この件について)一度考えてもらえたらうれしい」、つまり「(この件について)一度考えてほしい」と、やんわりとお願いするフレーズです。ビジネスシーンにおいて、目上の人に対して使われることが多いでしょう。

より細かく意味を見ていきましょう。

まず「一考」は「一度考えてみること」という意味を表します。

「ご~いただく」は謙譲表現であり、「~してもらう」という意味を表します。「れば」は仮定です。

「ご一考いただければ幸いです」は、「ごいっこういただければさいわいです」と読みます。

「ご検討いただければ幸いです」との違い

ビジネスシーンにおいて「考えてほしい」「考えてください」と表現したい場合に、「ご検討いただければ幸いです」という言葉を思い浮かべる方も多いでしょう。

しかし「検討(けんとう)」は「詳しく調べて考える、吟味する」という意味を表すため、「一度考えてみる」という意味の「一考」の方が気軽なニュアンスです。使用すべきシーンが異なるので注意しましょう。

「ご一考いただければ幸いです」の正しい使い方・例文

  • 「ご一考いただければ幸いです」の正しい使い方・例文

「ご一考いただければ幸いです」は、ビジネスシーンにおいて新しい案件を依頼したい場合や、調整、交渉したいときなどに、ライトなニュアンスで使用する言葉です。

社内外を問わず、目上の人に対して使えます。

以下「ご一考いただければ幸いです」を用いた例文です。

  • ご提案した○○の件につきまして、ご一考いただければ幸いです
  • 先日のミーティングでお話した企画ですが、ぜひともご一考いただければ幸いです
  • ○○の件について、資料を添付いたしますので、ご一考いただければ幸いです

「ご一考いただければ幸いです」を使う際の注意点

  • 「ご一考いただければ幸いです」の使用時の注意点

ここからは「ご一考いただければ幸いです」を使用する際の注意点について紹介します。

急ぎの案件や、絶対に実現したいことには使わない

「~いただければ幸いです」という言葉は柔らかい印象を相手に与えるため、「急いで返事をしなくてもいいだろう」「やらなくてもいいだろう」と相手に感じさせてしまう可能性があります。

また、「一考」自体が「一度考えてみること」という意味のため、ライトなニュアンスです。

そのため、返答期限が迫っている場合や必ず回答をもらいたい場合などには「恐れ入りますが、◯月◯日までにご回答いただきますよう、よろしくお願いいたします」といった形で、返信期限を伝えたり、明確な意思を伝えたりすることがおすすめです。

上司や取引先など、目上の人に使う場合はより丁寧な表現も

「ご一考いただければ幸いです」は謙譲語が含まれており、そのままでも上司や取引先など目上の人に使用することができます。しかし少し変化させると、さらに丁寧に表現になります。

例えば、「ご一考いただければ幸いに存じます」「ご一考いただけますと幸甚です」などの形にしてもいいでしょう。

間違えやすい言葉と混同しない

「ご一考(ごいっこう)」と読み方が同じで混同しやすい言葉として「御一行」があります。

「御一行」は、集団や団体を示す丁寧な言葉です。例えば「株式会社◯◯御一行様」などの使い方があります。

「ご一考」とは全く違う意味の言葉であるため、メールでの誤変換や、手紙での書き間違いには注意しましょう。

「ご一考いただければ」を「ご一考頂ければ」にしない

「~いただければ」は「~いただく」の仮定の形です。「~いただく」とは「~してもらう」ということを表す謙譲語であり、前の言葉に付属して意味を添える補助動詞です。

「いただく」には、「(物を)もらう」の謙譲語で、動詞としての意味もあります。「賞状を頂く」「立派な贈り物を頂く」といった具合で使用し、この場合は「頂く」と漢字で記載することも多いでしょう。

しかし補助動詞はひらがなで書くことが一般的であるため、「ご一考頂ければ幸いです」ではなく「ご一考いただければ幸いです」としましょう。

「ご一考」を含むその他のフレーズ

  • 「ご一考」を含んだよく使うフレーズ

ここからは、「ご一考」を使用したビジネスシーンで定番のフレーズを紹介します。

「ご一考」を含むフレーズには、さまざまなものがあります。それぞれが表す意味や、使用する場面は少しずつ異なるため、覚えておくと便利でしょう。

ご一考いただきますよう

先ほども少し触れたように、「ご~いただきますよう」は、こちらの意思を強く表現するフレーズです。

「ご一考いただきますようお願い申し上げます」と表現することで、丁寧な印象を与えながらも、こちらの要望はしっかりと伝えられます。

ただし、「ご一考いただきますよう」を使用すると相手に考えることを強制し、また、こちらの意見をくんでほしいというニュアンスを与えてしまう可能性があります。

角が立たないように、使用する相手や状況に応じて使い分けることが重要です。

ご一考のほど

「~のほど」を使うことで柔らかいニュアンスに仕上がり、角が立たないようにこちらの意思を伝えられます。

例えば「先日お話した件につきまして、ご一考のほど、よろしくお願い申し上げます」というように使用することで、丁寧さと誠実さが伝わるでしょう。

柔和な印象を与えるため、回答を急がない場合、強制しない場合におすすめです。

ご一考くだされば幸いです・ご一考くださいますと幸いです

「ご一考いただければ幸いです」の「いただければ」の部分を変更した「ご一考くだされば幸いです」「ご一考くださいますと幸いです」という言い回しもよく使われます。

「ご~くださる」は尊敬表現であり、「~してくれる」という意味を表します。「ご~いただく」が「もらう側」である自分をへりくだらせた謙譲語だったのに対し、「ご~くださる」は「くれる側」である相手を高める尊敬語です。

結果的にはどちらも相手を高めることになるので、意味合いとしては同じになります。

「ご一考ください」は敬語だが丁寧さに欠ける

前述のように「ご~くださる」は「~してくれる」という意味の尊敬表現です。しかし「ご一考ください」の形だと、失礼だと捉えられてしまう可能性があります。

なぜならば、「ください」は「くださる」の命令形であるためです。

そのため「ご一考ください」とは「一度考えてみてください」という意味を表すフレーズであり、敬語ではあるものの、同時に命令形でもあるため、相手によっては「命令された」と気分を害する恐れがあるのです。

「ご一考」「ご一考いただければ幸いです」の類語・言い換え表現

  • 「ご一考」「ご一考いただければ幸いです」の類義語

「ご一考」や「ご一考いただければ幸いです」にはさまざまな類語があります。ここからは、それぞれの言葉や使い方を紹介します。

ご検討いただければ幸いです

「検討(けんとう)」という言葉は前述したように「よく調べて考えること」という意味を持っています。

そのため「ご検討」は「ご一考」に比べると、「より細かく契約内容や売買内容を確認してから、物事を判断してください」というニュアンスを表現します。

以下は「ご検討いただければ幸いです」を用いた例文です。

  • 先日ご提案いたしましたプランにつきまして、ご検討いただければ幸いです
  • 契約内容につきまして、ご検討いただければ幸いです

ご考慮いただければ幸いです

「考慮(こうりょ)」は「さまざまな要素を含めてよく考えること」を意味します。

「提案した内容をよく確認して考えてほしい」「あとで問題が発生しないように、あらゆる方向からよく考えてほしい」というニュアンスを表現するフレーズです。

以下は「ご考慮いただければ幸いです」を用いた例文です。

  • これまでの実績を踏まえた上で、ご考慮いただければ幸いです
  • 異動について、ご考慮いただければ幸いです

ご勘案いただければ幸いです

「勘案(かんあん)」は「さまざまな事情を考え合わせること」という意味の言葉です。

「勘案」は公的な場所で使われることも多く、硬い印象があります。

以下は「ご勘案いただければ幸いです」を用いた例文です。

  • ご提示したプラン内容につきまして、ご勘案いただければ幸いです
  • 急いではおりませんので、内容について十分にご勘案いただければ幸いです

ご斟酌いただければ幸いです

「斟酌(しんしゃく)」は、「さまざまな物事を照らし合わせて取捨選択すること、相手の事情をくみ取ること」という意味を表します。

「こちらの状況や心情を踏まえた上で判断してほしい」というニュアンスを表現するフレーズです。

以下は「ご斟酌いただければ幸いです」を用いた例文です。

  • 育児休暇の取得につきまして、ご斟酌いただければ幸いです

お考えいただけますでしょうか

「お考えいただけますでしょうか」は、他のフレーズに比べるとかしこまったニュアンスが少なく、カジュアルな印象を与えます。

以下は「お考えいただけますでしょうか」を用いた例文です。

  • 今回は本条件にてお考えいただけますでしょうか

「ご一考いただければ幸いです」の英語表現

  • 「ご一考いただければ幸いです」の英語表現

ビジネスシーンでは、英語でやりとりを行う場面もあるでしょう。

「ご一考いただければ幸いです」を英語で表現したい場合は「I would appreciate it if you would think about the proposal」などと表すことができます。

「think」は「考える」、「proposal」は「提案」、「appreciate」は「ありがたく思う」という意味です。

なお「think」を「consider(熟考する)」に置き換えれば、「ご検討いただければ幸いです」の意味を表すことができます。

また「I would be happy if you could give it a thought」などと表すこともできます。

この英文内では、「一考する」「考えてみる」を「give it a thought」、「幸いです」を「I would be happy」と表現しています。

どちらも控えめに依頼の気持ちを伝えることができます。

「ご一考いただければ幸いです」はビジネスメールなどで使えるお願いの言葉

「ご一考いただければ幸いです」というフレーズは、主にビジネスシーンおいて目上の人相手に使用できる、柔らかな依頼の言葉です。

また、さまざまな類似フレーズや言い換え表現を併せて覚えることで、表現方法が広がります。相手や状況に応じて適切に用い、コミュニケーションを円滑に進めましょう。