ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせた造語「ワーケーション」。この言葉はすっかり市民権を獲得した。

SNSのハッシュタグ「#ワーケーション」で流れてくる写真は、南国のリゾートなんかで、青い海の前でパソコンを開いている。あんな開放的な風景を目の前にして仕事ができる集中力が、まったく尊敬に値するってものだ。

だいたい飛行機に乗って移動できる余裕がうらやましい。
こちとら机にかじりつき、移動時間も惜しんで働いているというのに。こういう人にこそ、ワーケーションのようなリフレッシュが必要なのではないだろうか。

もはや旅行へ行きたいうらやましさでちぎれそうになっていたら、友だちが都内でワーケーションをするという。場所はなんと、浅草!

都内だったらもちろん行ける。というか、実は近くに住んでいる。でも、改めて観光したことはない。果たしてワークもバケーションもできるのだろうか。

平日ど真ん中の水曜日、午後休とって行ってみた!

まずはホテルにチェックイン! 拠点は浅草ビューホテル

  • 銀座線田原町駅から徒歩10分。つくばエクスプレス浅草駅なら直結。近すぎる

今回利用したのは、全国の提携ホテルを最大90%オフで利用できるサービス「The Worke(ザ・ワーケ)」を利用したプランだ。3〜30日までの連泊で最大90%オフ。基本的には素泊まりだが、浅草ビューホテルをワーケのプランで予約すると駐車場無料などの特典が。利用料3000円のプールも1回利用できるという。

シックなセカンドロビーでは御神輿が出迎えてくれ、浅草らしさに抜かりはない。
なるべく人が写り込まないタイミングで写真を撮ったが、宿泊客は家族連れから外国人観光客まで幅広く人気なようだ。

そりゃそうか。
だってここは江戸随一の遊興地、浅草なのだ。

  • まじまじと御神輿をのぞき込む

ロビーでワーケで予約したと伝えると、スムーズに対応してくれた。エレベーターでカードキーをかざし、20階を目指す。

  • 部屋は20階、シティ側だったが日当たりは最高

浅草ビューホテルの創業は1985年。客室はリニューアル済みで清潔感はあるが、バブル時に建てられた一般的な客室だ。ボックスシーツがエモーショナル。

ワーケーションというからには、さっそくWi-Fiの速度をチェック。ビジネスホテルあるあるだが、Wi-Fiが入っているとはいえ、SNSの表示もままならないほど弱いところも多いのでついつい警戒してしまう。

幸い、浅草ビューホテルのインターネット速度は問題なし。オンライン会議も問題なさそうだ。

お部屋チェックが済んだら荷ほどきをして、少し浅草を散歩しよう。

  • 20階展望室からの眺め。左から花やしき、浅草寺、東京スカイツリー、アサヒビール本社と、浅草のアイコンが一望できる。

平日だから楽しめる、おすすめの浅草さんぽ

街へ出ると日差しと観光客ですごい熱気だ。平日でこれなのだから、休日はもっとだろう。

ところで筆者はフライドポテトが好物なのだが、浅草に専門店がある。「フリッツ・ブルージュ」だ。フライドポテトの本場ベルギースタイルで2度揚げされたサクサクほくほくの「ベルギーフリッツ」がいただける。オープンしたばかりの頃に1度行ったが、感動的なおいしさだった。
その後、マスコミにもよく取り上げられ、SNSでもバズり、見たことがある人も多いのではないだろうか。
そんな人気店なので土日は整理券制で、これまたその整理券をもらうために長蛇の列が。もう気軽に味わえない一品になってしまったと思っていたのだが、平日ならいけるのでは?

  • 来店時は満席だったが、その後貸切状態になった。ポテトのお供はベルギービールだ

読みは正解! これだけで浅草でワーケーションをした甲斐があった。

腹ごなしに浅草散歩へ。立派な観光地で「非日常感」のわくわくがありつつも、ここは東京だという安心感もある。不思議な感覚だ。

金色のビルはアサヒグループ本社ビルなのだが、泡の部分の22階に展望カフェがあるのをご存じだろうか。もちろん誰でも利用できる。浅草を見下ろしながらいただく生ビールが最高なのだけれど、この日は残念ながら貸切パーティーで利用できず。

どうしてもビールが飲みたい気持ちが高まっていたので、ビルの裏手にある「TOKYO隅田川ブルーイング」へ。テラス席で夕日を見ながら1杯いただいた。

夕闇に染まる浅草で歴史を感じる

夜のとばりに染め上がる浅草が美しい。 お江戸の雰囲気を残しどこかノスタルジックな風景が飛び込んでくるが、ここは一度焼け野原になった場所だ。

  • 浅草寺越しに、今日の我が家が見えた

江戸初期から栄えた江戸だが、関東大震災と第二次世界大戦で2度も焼失しているのだ。知名度があり、浅草寺の根強い参拝客の支援もあって復興してきたが、まっさらになった土地は新しい商売を始めるのにうってつけだったそうだ。

そうやって、当時新しかった洋食店が次々と開き、今では老舗となったというわけ。

浅草の江戸情緒も洋食のノスタルジックさも、人の手が新たに生み出したものだと思って眺めると感慨深い。

  • 夕食は浅草を代表する洋食店「洋食ヨシカミ」へ。ここも休日のランチは大行列の人気店

「洋食ヨシカミ」は創業1921年。オープンキッチンに白いコック帽をかぶった料理人たちが4人、それぞれの持ち場を守り、次々にオーダーをこなしていた。店内の年齢層は子どもからお年寄りまでおり、国籍だって豊か。観光客向けかといわれれば、どうやらそういうわけでもなく、常連のようなおじいさんが、ひとりで新聞を広げながらオムライスを食べていたりする。

  • メニュー表とサインでにぎやかな店内。羽子板がステーキだった

  • 友人はミートソーススパゲッティにクリームコロッケをトッピングした

  • デザートは硬いプリン

  • 浮かれる筆者(Photo by UKOARA)

食事を終えて店を出ると、ホッピー通りの輝きが増していた。といっても、これも週末の半分程度だけれど。

もしもここが東京でなければ、ちょっと無理してでも一杯飲んでいくに違いない。だけど、来ようと思えばこれるのだ。だから、いま行かなくても大丈夫。

非日常と日常が交差するからこそ、生まれる余裕がある。

早起きはプライスレス! 浅草寺をゆったり朝さんぽ

  • 朝7時なら雷門だって独占できる

早起きして仕事のメールをササッとチェックし、9時送信予約のボタンをポチッと押したら朝ごはんの調達がてら朝散歩に出かけよう。朝7時の浅草寺はのんびり歩くのにぴったりだ。

  • ひとがいないってだけで清々しい

  • 参拝後にふりかえってみた。人がいないこの時間にしか見られない絶景だ

パン屋さんへは開店15分前に着いてしまったけれど、ふつうにオープンしていた。地元密着型店舗あるあるだ。なつかしい味がするパンを買ってホテルの部屋へ。今日も一日が始まる。

もしもここが南国の観光地だったら、のんびりコーヒーなんて飲んでいるほど、落ち着いていられない。だけどここは東京だから、来ようと思ったらいつでも来られる。だから、仕事に集中することだってできる。

いろいろなワーケーションのスタイルがあるけれど、東京・浅草でのワーケーションは非日常のなかの日常が、心の平穏を保ってくれる、そんな新しい体験ができた。

  • 浅草ビューホテル5階にある開放的なプールも最高だった