ワールドプレミア以来、話題沸騰の新型「ランドクルーザー250」だが、その正体は「ランドクルーザー300」の弟分である現行「ランドクルーザープラド」の後継モデルだ。この新型車、性能、使い勝手、立ち位置などから考えると、どうやら「最強のランクル」なのではないかと思えてくる。
なぜ原点回帰を図るのか
現行型プラドはランドクルーザーの名に恥じないクロカン性能を備えつつ、街乗りでも快適なSUVに仕上げられている。300よりも一回り小さいサイズで価格も抑えられているため、「普及型ランクル」というべき存在であり、ファミリー層にも人気が高い。
しかしながら、街乗りSUVの車種が増えたことから、他のSUVとの差別化もあり、SUVの中でも特別なラダーフレーム付きクロカンとして、モデルを重ねるごとに上級化が進んでいた。事実、3代目モデルのエントリー価格が発売時(2002年)で277万円(消費税5%含む)だったのに対し、販売中の最新型(4代目)では367.6万円(消費税10%含む)まで上昇している。
そもそも初代プラドは、「ランドクルーザー70」をベースに生まれたライトデューティーモデルであり、乗用性能を高めた身近なランクルという立ち位置だった。しかし、SUV人気の高まりと共に上級化が進み、当初の70の派生という色はどんどん薄まった。
そこで原点回帰を図り、「質実剛健を追求し、顧客の生活と実用を支えるクルマ」を開発コンセプトとして生まれたのが新型「250」というわけだ。このため、より現実的な価格になるのではというのも注目を集める理由のひとつとなっている。
クロカンの本場・米国でも戦える?
ただ、ランドクルーザー250はランクルシリーズの中核的存在と位置付けられており、ジープ「ラングラー」やフォード「ブロンコ」に代表されるクロカンが活躍する米国市場への再登板を明言している。それだけに、お手頃モデルとなりそうな予感は抱かせつつも、中身はランクルシリーズのプライドを掛けた本格性能を目指している。
その象徴が、300譲りの「GA-Fプラットフォーム」の採用だ。要となるラダーフレームの構造はランクル300と基本を共有。このため、ホイールベースもランクル300と共通だ。しかし全長は短くなるため、ラダーフレームを小型化しているのだが、当然、単純にサイズを縮めただけだと性能に影響してしまう。そこで、高い強度を保つために新たな成形技術を用いることで、なんと現行型プラド比で150%となるフレーム剛性を実現しているのだ。
実用性を高めるためデザインにもこだわっている。普段使いでの取り回しも考慮し、前輪より前の長さを切り詰めた上、ボディの角も削ぎ落している。これを実現するためのラダーフレームの小型化でもあるのだ。
さらに前後バンパーは、コーナー部を独立したパーツとすることで、もしもの破損時にも部分交換で対応できるよう配慮。これには維持コストの削減に加え、環境負荷低減の狙いもある。ボディサイドの下部を削ぎ落としたのもデザイン性だけでなく、悪路走行時に岩などとの干渉を避けるため。このように、デザインもしっかりと性能の一部となっているのだ。
最新装備と電動化で300を超えた?
ランクル初となる新技術も積極的に採用している。そのひとつが電動パワーステアリングだ。油圧式から電動式に変更することで、低速時の取り回し性の向上に加え、車線維持支援のステアリングアシストや悪路走行時のハンドルへのキックバック低減などを実現している。
また、トヨタ初採用となる電動可動式スタビライザー「SDM」でオフロードの悪路走破性・乗り心地とオンロードでの操縦安定性を両立。悪路走行時に車両下部の映像を映し出す「マルチテレインモニター」の後退時対応なども採用している。現時点ではフラッグシップのランクル300に未採用の最新技術も積極的に取り入れることで、走りと使い勝手の両面でクロカン性能に磨きをかけているのだ。
パワートレインの電動化もランクル初だ。現時点で明かされている情報では、北米・中国向けに2.4L直列4気筒ガソリンターボエンジンとパラレルハイブリッドシステムを組み合わせたストロングハイブリッド車を用意。さらに豪州と西欧向けには、48Vマイルドハイブリッド付きの2.8L直4クリーンディーゼルターボエンジンを投入する。このように、仕向け地に合わせてさまざまなパワートレインを用意するのも、250がコアモデルという位置づけだからこそといえる。ちなみに、ランクル250の電動車が日本でも発売となるかどうかは現時点で不明だが、将来的には期待していいだろう。
クロカン性能と快適性を高次元で両立させたプラドの基本性能を磨くだけでなく、お手頃な存在に進化する250は、ある意味で「最強のランクル」といえるだろう。日本発売は2024年前半とのことだが、今から登場が待ち遠しい。