帝国データバンクは8月4日、花火大会における「有料席」の導入状況に関する調査・分析結果を発表した。調査は、7~9月に開催される全国の花火大会のうち、動員客数が10万人以上(平年)の106大会について、「個人席」「グループ席」のデータを集計した。

2名30万円のプレミア席も

  • 有料席導入について

    有料席導入について

国内で7~9月に開催される主要な106の花火大会のうち、「有料席」が導入されていたのは約7割にあたる77大会。うち5大会で、コロナ禍に導入したことが判明。中には全席指定の有料化に踏み切ったケースもあり、花火大会の有料化が全国に広がっていることが明らかに。

また、2019年から有料席を導入している72大会のうち、61大会で、23年に「値上げ」を実施。1区画(席)あたりの「最安値」平均は、19年の3,676円から約3割(1,092円)上昇し、23年では4,768円に。一方、最も高額な有料席の価格(最高値)平均では3万2,791円と3万円を突破。19年の2万1,609円から約5割(1万1,182円)上昇した。

コロナ前に比べ、面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、多様な種類の観覧席が導入され、プレミアム化・高価格化が進んでいる。なお、有料席の設定がある77大会のうち、最も高額な有料席は「小田原酒匂川花火大会」(神奈川県・8月5日開催)で販売された「Sタイプ/ベット席」の30万円(大人2名)だった。

輸入花火や運営コストが増加

  • 有料席の導入や値上げが続く背景

    有料席の導入や値上げが続く背景

次に、有料席の導入や値上げが続く要因となっている「輸入花火や運営コストの増加」について調査した。2023年(~6月)の打ち上げ花火輸入価格は、過去15年の平均価格より5割高い1700円/kg。ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けた22年(2200円/kg)に比べると低下したものの、依然として高止まりが続く状況に。加えて、観覧客の安全確保や違法駐車の監視など、安全対策に不可欠な警備費や、大会後の清掃、仮設トイレといった設備費など、円滑な運営に必要なコストも人手不足や物価高で増加。こうしたコストアップが各花火大会の運営費を圧迫しているよう。

テーマパークやイベントなどコト消費にも「一部有料化」や「高額化」の動きが急速に広がっているが、無料イベントの有料化は、収益確保以外にも観覧者の位置や人数を事前に把握しやすいことから警備面でも有効といった側面が。

ただ、こうした有料化はコロナ前から肯定的な見方も少なくなく、JTBの2018年調査によると、花火大会の有料席について「購入したことがある」が15%、「購入したことはないが、検討したい」が21%と、全体の3割超に有料席のニーズがあることが明らかに。雑踏や人混みから離れて「ゆっくり見たい」という観覧客がコロナ禍を経てさらに増えているとみられ、花火大会の「有料席」導入や値上げの動きはさらに広がると予想されるという。