「お声がけ」はビジネスの場でよく使用される言葉ですが、尊敬語か謙譲語か、相手の行為に使うのか自分の行為に使うのかなどで、後に続く言葉が変わります。
本記事では「お声がけ」の詳しい意味や使い方、「お誘い」などの言い換えについて、具体的な例文とともに紹介します。
「お声がけ」の意味とは
「お声がけ」とは、「声をかける」という意味の「声かけ」に接頭語の「お」を付けて敬語の形にしたものです。
「声をかける」とは、呼びかける、話しかけるなどの意味ですが、「お声がけ」とする場合は、主に質問、用命、打診、勧誘などを行う、といった意味で使われます。
例えば「ご不明な点がございましたら、お気軽にお声がけください」と言うことで、「お気軽にご質問ください」という意味を表せます。また「気になる商品があれば、いつでもお声がけください」と言うことで、「いつでもご用命ください」という意味を表せます。
このように「お声がけ」は、シチュエーションに応じてさまざまな意味に変化する言葉です。
なお、漢字で「お声掛け」と書くこともあります。
「お声がけ」の敬語表現
「お声がけ」を実際に使用する場合、「お声がけ」だけでは意味が通じないので、「お声がけください」「お声がけいだたけますか」などのように、後に尊敬語や謙譲語といった敬語をくっつけて使用します。
尊敬語と謙譲語の違いは以下の通りです。
- 相手の行為に対して用いて、相手を高める場合:尊敬語を使用
- 自分の行為に対して用いて、自分がへりくだる場合:謙譲語を使用
それでは「お声がけ」について、具体的な尊敬語、謙譲語の表現を見ていきましょう。
「お声がけ」の尊敬語
「お声がけ」の尊敬語として代表的なのは「お声がけくださる」です。「くださる」は「くれる」の尊敬語です。
相手が自分などに対して声をかける場合に、相手のことを高める尊敬語です。
実際に使用する場合は、「お声がけください」「お声がけくださいますか」などのように、依頼の形で使うことが多いでしょう。相手に声をかけてもらいたい場合に利用します。
より丁重さをアピールしたい場合は、「お声がけくださいませ」のように語尾に「ませ」を付けるといいでしょう。
「ませ」は依頼や挨拶の際に、尊敬語の後に付けて、丁寧な気持ちを強調することができる言葉です。「~ください」だけよりも、さらにかしこまった印象を与えられます。「ませ」は「まし」とすることもあります。
また、「お声がけくださりありがとうございます」など、お礼の際に使用することもあります。
「お声がけ」の謙譲語
「お声がけ」の謙譲語として代表的なのは「お声がけいただく」です。「いただく」は「もらう」の謙譲語です。
前述の「お声がけくださる」と同様に、「お声がけいただく」も相手が自分などに対して声をかける場合に使用しますが、声をかける側とかけられる側のどっちの観点で見ているかが違います。
前述の「お声がけくださる」は声をかける側の観点の言葉であり、声をかける側である相手を高めているので、尊敬語です。
一方「お声がけいただく」は声をかけられている側の観点の言葉であり、声をかけられている自分をへりくだっているので、謙譲語となります。
こちらも実際に使用する場合は、「お声がけいただけますか」などのように、依頼の形で使うことが多いでしょう。相手に声をかけてもらいたい場合に利用します。
「お声がけいただきありがとうございます」など、お礼の際に使用することもあります。
また、自分から相手に声をかける場合に使用する謙譲語として、「お声がけします」「お声がけいたします」などが挙げられます。
声をかける側である自分をへりくだった表現です。
例えば「もし疑問点が出てきましたら、お声がけいたします」と連絡すれば、「疑問点が出てきたら質問します」という意思を、相手に丁寧に知らせることができます。
「お声がけ」のビジネスにおける正しい使い方・例文
「お声がけ」はかしこまった表現であるため、特にビジネスの場でよく使用される言葉であり、「相手から自分に声をかけるとき」「自分から相手に声をかけるとき」の両方の場面で用いることができます。
ここではビジネスシーンにおける「お声がけ」の正しい使い方について、例文を用いて解説します。
「ご不明な点などがございましたら、どうぞお声がけください」
この例文は相手に対して「不明点などがあれば、声をかけてね」ということを丁寧に依頼する、尊敬語の表現です。取引先や顧客など、目上の人に使用するといいでしょう。
なお直属の上司や先輩などに「お声がけください」を使うと、よそよそしい印象を与えてしまう場合があります。
そのときは「どうぞ声をかけてください」などのように言い換えると、敬語ではあるものの親しみやすさが出るでしょう。
「プロジェクトへの参加についてお声がけいただき、ありがとうございます」
この例文は、上司などが重要なプロジェクトに自分を誘ってくれたという状況において、お礼や恐縮する気持ちを伝える表現です。
「声をかけてもらってありがとう」という意味の謙譲語の表現です。
「資料の確認が終わりましたら、またお声がけします/お声がけいたします」
こちらは、資料を確認した後に声をかけることを、相手に丁寧に伝えています。
「お声がけします」も「お声がけいたします」も、「声をかける」という自分の行為をへりくだる謙譲語ですが、「お声がけいたします」の方がより改まった言い方だとされています。
【要注意】「後ほど、またお声がけさせていただきます」
「させていただきます」はよく見聞きする謙譲語ですが、本来の意味に沿っていない場面で乱用されている言葉でもあるので、少し注意が必要です。
そもそも「させていただく」とは、「相手に許可を得て~することを許してもらう」「そのことによって自分が恩恵を受ける」という2つの条件を満たす場合に使用する言葉です。
例文のように「お声がけさせていただきます」と言いたい場合は、上記の条件を満たしているかを確認の上、使用しましょう。
もし条件を満たさない場合は、前述の「お声がけします」「お声がけいたします」などを使用することをおすすめします。
「お声掛け」の読み方は「お声がけ」と「お声かけ」、どっちが正しい?
「お声がけ」と似た表現として、濁点の無い「お声かけ」という言葉をよく耳にします。どちらが正しい言葉なのでしょうか。
結論から言うと、どちらも間違いとは言えません。
そもそも、ある言葉とある言葉が合わさって一つの言葉になるときに、後の言葉の先頭の文字が、清音(澄んだ音)から濁音(濁った音)に変わることを「連濁(れんだく)」と言います。「月見(つきみ)」+「酒(さけ)」で「月見酒(つきみざけ)」といった具合です。
一方で「虫(むし)」+「取り(とり)」は「虫取り(むしとり)」であり、「むしどり」とはあまり言いません。
しかしこの連濁が起きる、起きないは非常にあいまいであり、明確な基準があるわけではありません。
「お声掛け」は「声(こえ)」+「掛け(かけ)」で構成されている言葉ですが、読み方として「おこえがけ」が正しいのか、「おこえかけ」が正しいのかは、明確に定められているわけではないのです。
とはいえ、一般的には「お」が付いた「お声掛け」の場合には「おこえがけ」と濁って読み、「お」の付かない「声掛け」の場合には「こえかけ」と濁らずに読む人が多いようです。
「お声がけ」の類語・言い換え表現
ここでは「お声がけ」の類義語や言い換え表現を、例文とともに紹介します。それぞれニュアンスが異なるフレーズなので、適切に使い分けましょう。
ご質問
「質問」の敬語表現である「ご質問」は、何かを尋ねるというときの「お声がけ」の言い換えとして使用することができます。
- ご不明な点がございましたら、お気軽にご質問ください
上記の例文のように「お気軽に」などの言葉と併せて使用することで、「いつでも大丈夫です」「ささいなことでも構いません」といったニュアンスを表せます。
お問い合わせ
「お問い合わせ」は「問い合わせ」の敬語表現であり、不明点を聞いて確かめる、という意味の言葉です。
お店や施設のインフォメーション、相談窓口などでもよく使用されていますね。
- お困りのことがございましたら、相談窓口までお問い合わせくださいませ
上記の例文のように表現することで、相手に問い合わせることをお願いしたり、促したりすることができます。
「お問い合わせください」は、顧客や取引先に対して説明をする際、最後に補足として付け加える際にもよく使用します。
ご用命
「ご用命」は用事を言いつける、注文する、という意味を持つ「用命」の敬語表現です。
「用命」自体に「命令」の意味合いがあるので、基本的には自身の行為に対しては使用しません。相手から自分に対しての行為に使用します。
- 御用命いただきありがとうございます。
この例文では「もらう」という意味の謙譲語である「いただく」を使用し、相手から業務の依頼を受けた感謝の気持ちを表しています。
お申しつけ
「申しつける」「申しつけ」の元の形は「言いつける」「言いつけ」で、命令するという意味を持っています。これをさらに敬語表現にしたものが「お申しつけ」です。
- どうぞお気軽にお申しつけください
例文のように尊敬表現として使用することで、「なにか自分にしてほしいことがあれば命令してください」と相手に伝えられます。
なお「どうぞ」には、丁寧に頼む、深く願う、相手に物事を勧めるなどの意味があります。
お誘い
「お誘い」は「誘い」の敬語表現であり、誘うこと、勧誘といった意味を持ちます。
- 本日はお誘いいただきありがとうございました
この例文のように、会合や何かの役割に誘ってもらった場合にお礼を述べるシーンなどで使用できます。
- またお誘いいただけますと幸いです
この例文のように表現すれば、「次回もまた誘ってもらえるとうれしい」という気持ちを伝えることができます。
お知らせ
「お知らせ」は連絡や通知などを丁寧に伝えるときに使用する言葉で、ビジネスの場のみならずプライベートでもよく用いられる言葉です。
- 後日、詳細をお知らせします
この例文では「自分が相手に対して、後日、詳細を連絡する」ということが伝えられます。
「お知らせします」や「お知らせいたします」とすることで、謙譲語として使用できます。
場面に応じて「お声がけ」を適切に活用しよう
「お声がけ」はかしこまった表現であるため、ビジネスシーンにおいて幅広い場面で使用できます。文脈によって「質問」「用命」「打診」など、意味合いが変わります。
正しく意味を理解して、上手に使いこなしましょう。