JR東海の看板観光キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」が今年で30周年を迎える。見どころの尽きない京都で2023年夏のテーマに選ばれたのは「仏像」。美しいポスターに誘われて現地を訪れた。
口から小さな仏さまが出ている
今回のキャンペーンポスターやTVCMにも登場しているのが六波羅蜜寺「空也上人立像」。
疫病が大流行した平安時代、空也上人は新しい井戸を掘るなどして庶民を救い、ひたすらに念仏を唱えれば必ず極楽往生できると口伝えで説いた。口から出ている小さな仏さまは、「南無阿弥陀仏」と唱えた声が阿弥陀如来の姿になった瞬間を表現しているのだそう。
口から仏さまが放たれる姿は一見ユーモラスでもあるけれど……実際目の前にすると、小柄な体格に宿った大きなエネルギーを感じる。人々を助けたい思いの切実さと力強さ、慈悲深さが伝わってきて、自然と「有難い」という気持ちが生まれてくる。
会いたい人に似た仏さまがいる
三十三間堂は、長さ120mものお堂に立ち並ぶおよそ1000体の「千手観音立像」が圧巻。中央の観音坐像(中尊)を中心に左右に各500体、合計1001体(裏手の1体を合わせると1002体)が安置されている。
多数のたとえで1000といっているわけではなく、まさか本当に1000体あるとは。1000体すべて表情も体型も異なり、会いたいと願う人に似た像が見つかるといわれている。自分や知り合い、この世ではもう会えない亡くなった人に似た像を探す人もいるのだとか。
それぞれにご尊名があり、お堂の裏手にある仏像検索システムを使うとそれぞれのご尊顔をクローズアップして見られるのもおもしろい。
やさしく振り返って待っている
永観堂禅林寺に安置されているのは、振り返った様子が特徴的な"みかえり阿弥陀"として知られる「阿弥陀如来立像」。
夜を徹して念佛行に励んでいた僧侶・永観律師に「永観、おそし」と声をかけられたときの姿なのだそう。首を左にかしげ、少し口を開いている。慈悲深い眼差しで穏やかな微笑みを浮かべているのが印象的だ。
永観堂禅林寺は紅葉が有名なお寺だが、夏は新緑や青紅葉が格別の美しさ。
一目見ただけで心が惹きつけられるような不思議な力を持つ仏像たち。歴史や意味を知ろうとするとさらに奥深い世界が広がっている。仏像きっかけに訪れたお寺の境内やその周辺を散策するにもまた楽しい。次の京都旅は気になる仏像に会いに行ってみてはいかがだろうか。