発売直後から注文が殺到している三菱自動車工業「デリカミニ」だが、注文したユーザーはどんなクルマから乗り換えているのだろうか。メーカーにデリカミニ購入時の下取り車ランキングを聞いて、ライバルとなるクルマとの比較を行ってみた。

  • 三菱自動車「デリカミニ」

    「デリカミニ」のライバルは?(左のボディカラーは2トーンの「ライトニングブルーマイカ×ブラックマイカ」。色はモノトーンを含め全12バリエーションから選択できる)

「デリカミニ」下取り車ランキングTOP5

デリカミニ購入者の下取り車で最も多かったのはホンダ「N-BOX」だ。このクルマは販売台数が多いため、当然の結果ともいえる。第2位はダイハツ工業「タント」、第3位はスズキ「ハスラー」、第4位はスズキ「ワゴンR」、第5位はスズキ「スペーシア」と続く(6月5日時点)。

この中でもハスラーとタントはデリカミニとコンセプトが近く、強力なライバルになる。そこで、この2車種をデリカミニと比較してみた。ちなみにタントは、よりアクティブな要素を持っている「タントファンクロス」と比べる。

SUVライクな軽自動車の元祖「ハスラー」

ハスラーは2014年1月に登場したSUVライクな軽自動車。直近で月間6,004台(2022年7~12月平均値)を販売している人気車種だ。外観はアウトドアによく似合う「カッコカワイイ」デザイン。デリカミニに通じるタフさを感じる。

  • スズキ「ハスラー」
  • スズキ「ハスラー」
  • スズキ「ハスラー」
  • スズキの人気モデル「ハスラー」は現行型で2代目(2019年12月発表)だ

内容的に近しいと思われるグレードで価格を比べてみると、ハスラーが177.32万円(ハイブリッドXターボ/4WD)であるのに対し、デリカミニは223.85万円(T Premium/4WD)と50万円ほど高い。2台とも全長は3,395mm、全幅は1,475mmで変わらないが、全高はハスラーが1,680mm、デリカミニが1,830mmと150mmも違う。デリカミニは全高1,700mm以上のいわゆる「スーパーハイトワゴン」だ。150mmの差は見た目もさることながら、車内空間の広さに大きな影響を与えている。

  • 三菱「デリカミニ」

    三菱「デリカミニ」の全高は1,830mmで天井が高い

ハスラーも軽自動車として決して狭いわけではないが、デリカミニの天井の高さを味わってしまうと、ハスラーに乗り込んだ瞬間に天井が低いと感じてしまう。

デリカミニはスライドドアを採用しており、開けると開放感がある。ハスラーの後席は普通のヒンジドアだ。乗り降りがしやすく少しでも広い車内空間を優先するとなれば、選択肢としてはデリカミニが有利となる。

車内の遊び心なら「ハスラー」か?

ハスラーを選びたくなる理由も存在する。個人的にハスラーのほうが優れていると思う点は、車内に遊び心が散りばめられているところだ。助手席前にあるインパネアッパーボックスはユニークな形状をしているだけでなく、耐荷重1.5kgの簡易テーブルとしても使用可能。さらに、悪路走破性を高めるために必要なスイッチは、直感的に操作ができる場所に集約されている。このあたりのデザイン、利便性も含めて、工夫がなされていて質感が高く、ハスラーのほうがデリカミニよりも勝っている。

  • スズキ「ハスラー」
  • スズキ「ハスラー」
  • 「ハスラー」のインパネ。カラーはオレンジのほかホワイト、ブルー、チタニウムグレーを用意

次に燃費を比較してみる。ハスラーが20.8km/L(ハイブリッドXターボ、4WD、WLTCモード)であるのに対してデリカミニは17.5km/L(T Premium、4WD、WLTCモード)と、わずかにハスラーのほうが燃費効率がいい。少しでも燃料消費を抑えたいのであればハスラーを選択しよう。

まとめると、車内の広さを優先するならデリカミニ、車内の質感や価格、燃費を優先するならハスラーといったところだ。

「タントファンクロス」との違いは?

デリカミニにとってハスラーよりも強力なライバルになりそうなのがダイハツのタント ファンクロスだ。

2022年秋頃にタントの新バリエーションとして登場したファンクロスは、SUVライクなスーパーハイトワゴンだ。ボディサイズはデリカミニとほぼ同等。車内空間の広さ、燃費性能も互角といえる。タントファンクロスの価格は193.05万円(ファンクロスターボ、4WD)で、デリカミニとの価格差は30万円ほどとなる。

  • ダイハツ「タントファンクロス」
  • ダイハツ「タントファンクロス」
  • ダイハツ「タントファンクロス」
  • ダイハツ「タントファンクロス」は「デリカミニ」にとって最大のライバル車と言っても過言ではない

デリカミニとハスラー同様、タントファンクロスも衝突被害軽減ブレーキや踏み間違いによる誤発進抑制、周囲を見渡しているかのような全方位モニターなどの先進安全装備を備えている。安全面において3台の差は少ない。運転席からの視界の良さや後席の快適さなども、ほぼ変わらないというのが筆者の見解だ。

そうなると、デリカミニかタントファンクロスかで迷った場合、購入を決定づけるのはボディデザインとなる。

タントファンクロスは「タント」と「タント カスタム」をベースとし、フロントのバンパーを丸みのあるデザインに変更することで、どこかかわいらしく見えるような仕立てとしている。新たにクルマの上に荷物を載せられるルーフレールを追加したり、サイドガーニッシュ(クルマ側方の装飾パーツ)を取り付けたりすることで、SUVらしさを際立たせている印象だ。そういう意味ではデリカミニのボディデザインと似ている部分が多い。半円のヘッドライトに代表されるようなデリカミニの「やんちゃでカッコいい」ところをとるか、かわいらしさのあるタントファンクロスを選ぶか。好みが分かれそうだ。

デリカミニの車内は良くも悪くも「普通」だが、タントファンクロスはどうだろう。見渡してみるとメーター類などはタントやタントカスタムと共通だが、エアコン周りのオレンジカラーの縁取りがよいアクセントになっている。

  • ダイハツ「タントファンクロス」

    「タントファンクロス」のステアリングはターボモデルを選ぶと本革仕様となる

走りを比べると、直進安定性についてはデリカミニよりもタントファンクロス(タント、タントカスタムを含む)のほうが少しふらつくような感じがあった。道路状況によって異なるため、このあたりは実際に試乗して確かめていただきたい。

好みが分かれるところだが、結論としては「かっこいい」で選ぶならデリカミニ、「かわいい」で選ぶならタントファンクロスだろう。

  • 三菱デリカミニ

    「デリカミニ」のデザインは個人的には満点。だがフロントフェイスは好みが分かれるか?

  • 三菱自動車「デリカミニ」

    「デリカミニ」はスーパーハイトワゴンらしくテールゲートが大きく開く。ラゲッジスペースのアクセスは抜群だ

デリカミニの登場によって、SUVライクな軽自動車の市場は一気に盛り上がった。試乗してみた印象としては、現時点で同ジャンルに属する軽自動車に走行性能の大きな差はない。そうなると、実際に必要となるオプション品などを選び、見積もりを取ったときの最終的な価格差で決めるか、直感的にデザインで決めるかになるだろう。価格かデザインか、筆者なら間違いなく後者を選択する。